全席喫煙可「新興カフェ」の朝食が想像以上だった ベローチェや珈琲館の会社が運営、その実態は?
タバコの吸える新興カフェチェーン、スモーキストコーヒー。そのモーニングは意外にも(?)なかなかお得だったのです(筆者撮影)
喫茶店やレストランが、朝の時間帯にドリンクやトーストなどのメニューを割安価格で提供するモーニングサービス。名古屋の喫茶店が始めた文化とされていますが、最近では大手外食チェーンも数多く提供しています。 そんなチェーン店の外食モーニングをこよなく愛するライター・ブロガー、大木奈ハル子さんがお届けする本連載。第82回となる今回、訪れたのは「スモーキストコーヒー」です。
喫茶店を筆頭に、ファストフードやファミリーレストランなどの飲食チェーンが密かにしのぎを削っているのがモーニングメニューです。
【画像】「全席喫煙可!」「しかも臭くない!」…。ベローチェや珈琲館の兄弟チェーン!全席喫煙可な「スモーキストコーヒー」はモーニングもなかなか凄かった!(14枚)
集客の弱い時間帯である午前中の売り上げを強化すべく、朝の数時間だけ提供される限定メニューの数々は、コスパ抜群かつ店の特色が強く表れ、どれも魅力にあふれています。
今回はコーヒーチェーン「スモーキストコーヒー(THE SMOKIST COFFEE)」のモーニングメニューをご紹介します。実はこのお店、飲食しながら喫煙できるお店なんです。
【画像】「全席喫煙可!」「しかも臭くない!」…。ベローチェや珈琲館の兄弟チェーン!全席喫煙可な「スモーキストコーヒー」はモーニングもなかなか凄かった!(14枚)
スモーキストコーヒーは愛煙家のオアシス
東京では都心に行けば行くほどタバコを吸える場所は激減し、「一服する場所を探すのも一苦労」という愛煙家も多いのでは?
10年ほど前までは、座ってタバコを吸えた喫茶店も、居酒屋もパチンコ屋も、いつの間にやらどこもかしこも禁煙になってしまいました。
喫煙所を探しまわり、行列の順番待ちをして、灰皿を囲んで立ったままで慌ただしく一服……なんて、疲れを癒やすどころか、疲れに行っているようなもの。
そんな愛煙家に朗報です。座ってコーヒーを飲みながらタバコを吸える「スモーキストコーヒー」というカフェチェーンができました。2020年11月に新橋・神田・東新宿に3店舗をオープン、その後新宿御苑前、仙台市青葉区の合計5店舗を展開しています。
スモーキストコーヒーの店頭には、全席喫煙可という看板が(筆者撮影)
スモーキストコーヒーのロゴが入った灰皿をカウンターで受け取ります(筆者撮影)
店舗によっては、禁煙席もあるようですが、筆者が利用した店舗は全席喫煙席でした。入り口に店名よりも大きく「全席喫煙可」の看板が掲げられ、オーダーカウンターで受け取ったトレイには、オーダーした商品と一緒にロゴ入りの灰皿が乗っていました。
資本力とコンセプトがものをいう、快適な空間で紫炎をくゆらせる
運営会社は「カフェ・ベローチェ」や「珈琲館」、「カフェ・ド・クリエ」などを手がける業界大手のC-United株式会社。カフェチェーンのなかには喫煙ブースを儲けている店舗もありますし、個人営業の喫茶店でも、喫煙できるというお店もなかにはあるでしょう。
ただ、タバコを吸える場所が減り、お店も減り、喫煙ブースに人が殺到することにより、パープルヘイズがモクモク、煙が目に染みて涙目、臭いもこもって快適とは言いがたい空間になっていることも多々あるのが現状です。「自分はタバコを吸うのに、他人のタバコの煙に不満があるのかよ」と言われそうですが、ゆっくり落ち着いて吸えるに越したことはありません。
ネイビーを基調に、オレンジを差し色にした大人っぽくてかっこいいロゴです(筆者撮影)
そんな人にこそ「スモーキストコーヒー」はおすすめです。喫煙を前提として店作りがされているため、排煙設備が整っており、なんと4分で室内全体の空気が入れ替わるようになっています。
店内にはさすがにタバコ独特の臭いはしみついているものの、煙たさは皆無。帰宅後にチェックしましたが、洋服にタバコの臭いがしみつくこともありませんでした。
令和の排煙設備の進化と、C-United株式会社の資本力により、快適に喫煙できる空間がそこにはありました。他人の煙でゴホゴホせき込むなんてことはなく、座ってコーヒーを飲みながらゆっくりと紫炎をくゆらせることができます。
私は非喫煙者なので、取材以外で1人でこの店を利用することはありませんが、喫煙する友人とじっくり話をしたい時は「スモーキストコーヒー」を利用すれば、「ちょっと一服してくるわ」なんて中座することもなくなるので、話の腰が折られることもないから、アリかもなぁと思いました。
スモーキストコーヒーのモーニングセット480円
スモーキストコーヒーのモーニングセット(筆者撮影)
「スモーキストコーヒー」のモーニングセットは2種類。いずれも税込480円でドリンク付きです。
・カルツォーネ 〜ピザ&チーズ〜
・カルツォーネ 〜ハムチーズ〜
選べるドリンクは4種類。すべてレギュラーサイズでの提供となりますが、プラス50円でLサイズへの変更も可能です。
・ブレンドコーヒー
・アイスコーヒー
・ティー
・アイスティー
お値段以上の値打ち
それぞれの単品価格は、ドリンクが税込350円、カルツォーネが税込300円なので、26%割引で170円分お得です。
都心部で350円でタバコを吸いながらコーヒーが飲めるというだけでもお値打ちなのに、ドリンク代に130円でパンがついてくると考えたら、お値段以上の値打ちがあるなという印象を持ちました。
オーダーカウンターでは、タバコの販売もしていました(筆者撮影)
全体としてはメニュー数は少なめで、レギュラー商品としてはドリンクメニューが10種類、軽食としてパスタが7種類のみなのですが、実際のところ意外と選択肢が多い。プラス税込110円でアイスドリンクにフロート(ソフトクリーム)がつけられるのは、暑い夏には嬉しいトッピングです。
期間限定メニューのメロンソーダとレモンスカッシュがあったり、チルドショーケースには、コーヒーゼリーとプリンが並んでいたり、個包装されたシュークリームや、缶チューハイなども並んでいました。
ショーケースには、カフェ・ベローチェの人気スイーツ、コーヒーゼリーとプリンも並んでいました(筆者撮影)
カルツォーネは、ワックスペーパーに挟んだ状態で提供されました。手を汚さずに食べられます(筆者撮影)
カルツォーネとは、ピザ生地に具材とチーズを乗せて三日月型に包んだお総菜パンのこと。カルツォーネとドリンクがセットになったシンプルなモーニングは、ボリュームもそこそこ、お値段も500円以下とお手頃で、かゆいところに手が届く、ちょうどええ塩梅の朝メニューです。
スモーキストコーヒーのモーニングセット、カルツォーネ〜ハムチーズ〜480円(筆者撮影)
そして、何よりさすがのC-United株式会社。セルフサービス型のカフェチェーン「カフェ・ベローチェ」や「カフェ・ド・クリエ」のノウハウにより、オーダーから提供までの段取りが良くてストレスがありません。
カウンターに並んで注文すると、サッとトレイが出され、そこに灰皿と、アイスティーとパパッとリベイクされたカルツォーネを並べて1分ほどで提供されました。
スモーキストコーヒーのモーニングセット、カルツォーネ〜ピザ&チーズ〜480円(筆者撮影)
リベイクでもおいしく食べられる商品
カルツォーネは芯までホッカホカのアッチアチで、手で割ると湯気がふわっとあがります。具材のチーズもとろりととろけて、口の中に放り込むと、舌の上に幸せが広がります。
セントラルキッチンで調理されたパンを再加熱しただけと言ってしまえばそれまでなのですが、リベイクでもおいしく食べられる商品の開発や、温め時間のこだわりなども感じとれる、完成度の高いおいしさです。
ハムチーズのカルツォーネは、パン生地はしっとり、みずみずしいモツッアレラ系のチーズ入り(筆者撮影)
同じカルツォーネですが、ピザ&チーズは香ばしく、ハムチーズはしっとりとした味わいです。
2種類のカルツォーネに使用しているチーズの種類がそれぞれに違っていたり、焼き加減に差があったり、ピザ&チーズはパン生地の表面にシュレッドチーズを乗せて焼き色をつけてあったりと、小さなこだわりをはしばしに感じさせます。
ピザ&チーズのカルツォーネには、ソーセージやマッシュルームが入っていました(筆者撮影)
アイスティーもスッキリとした味わいで、きちんとおいしい。湿度の高い梅雨の時期でも、冷たい喉越しと華やかな香りで、気分を爽やかにリセットできました。
ベローチェが「スモーキストコーヒー」に変身
実は今回利用した店舗は、以前は「カフェ・ベローチェ」でした。店内の内装もほぼそのままで、お店の看板を付け替えて、外装の赤を茶色にペンキで塗っただけという感じです。
つまりは、コロナ禍で売り上げの落ちた「カフェ・ベローチェ」の不採算店舗を、喫煙者向けとして看板を付け替えたのが「スモーキストコーヒー」というワケ。
でも、非喫煙者には「分煙の店でも、入らない」という人も少なくない印象ですし、いっそのこと喫煙者向けにしてしまうのは、都心では十分アリな戦略でしょうね。
カウンター席にはコンセントを完備し、充電もできます(筆者撮影)
70席ほどの縦長の店内は主にカウンター席と、2人掛けのテーブルで構成されており、明らかに1人で利用する客層を想定しているんだなという感じなのですが、この目論見大当たりだったようです。平日の朝10時半に入店した際の利用客は10人ほどで、全員が単独利用でした。
入り口側に座った客は一服してコーヒーを飲んだらサクッと出ていく、奥まった席に座った客はゆっくりとノートパソコンを開き作業に勤しむ。灰皿に吸いかけのタバコを乗せて、ボーッとしている人もいます。
ほとんどがサラリーマンとおぼしき男性客なのですが、チラホラと女性も交じっています。
カフェ・ベローチェ時代は赤かった壁を、ネイビーにお色直ししてスモーキストコーヒーとして再始動しました(筆者撮影)
喫煙者向けカフェチェーンにニーズを感じた
入店から時間を追うごとに客席は徐々に埋まり、11時半を過ぎたあたりから急激に客足が伸びました。お昼を前にして店内に続々と人が入ってきます。
オアシスにたどり着いた砂漠をさまよう旅人のように、喫煙者たちが「スモーキストコーヒー」に吸い寄せられているのを目の当たりにし、喫煙者向けというニッチなカフェチェーンに、確実なニーズを感じた朝でした。
編集部注:本記事に登場するメニューの価格は、すべて取材時点のものです。昨今の円安、原材料高騰などの影響を受けて価格が改定されている可能性があります。また、店舗によってモーニングの値段・内容は異なる場合があります。