なぜゴディバはマックやローソンで商品を売るのか?「そりゃそうだ」と思える納得の理由
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プレゼントや手土産のイメージが強く、高級チョコレートの代名詞的存在とも言える「ゴディバ」が、コンビニやファストフードで次々とコラボ商品を出す理由とは?
※本稿は、川上徹也『高くてもバカ売れ! なんで? インフレ時代でも売れる7の鉄則』(SBクリエイティブ)の一部を抜粋・編集したものです。
定番のお菓子がプチプレミアム化で大ヒット
ここ数年、インフレ化で節約志向が高まっているはずなのに、おなじみのお菓子ブランドが出す「価格が少し高いプレミアム版」が人気を博す現象が続いています。大きな贅沢はできないけど「プチ贅沢ご褒美」を味わうこと、生活に少しでも潤いを得たいという象徴的な現象ではないでしょうか?
ロッテが展開する「ガーナ」チョコレートの高級ラインである「プレミアムガーナ」や、「チョコパイプレミアム」もその一例です。「プレミアムガーナ」は2021年10月に登場し、以降シーズンごとに新商品を発表しています。現在は「キャラメルサレ」や「ピスターシュ」などスイーツ専門店のようなラグジュアリー感のあるラインナップで、1箱300円ほどと強気の価格ながらよく売れています。「アガる口どけ」というキャッチコピーや、俳優の吉沢亮さんを起用したCMも印象的でした。
「チョコパイ」ブランドからは、初のプレミアムシリーズとして2022年11月に「白いチョコパイプレミアム〈初雪ミルク〉」が登場。2023年5月に発売された「チョコパイプレミアム〈贅沢マスカットタルト〉」は、チョコレート、ケーキ、ソース、クリームすべてにマスカットオブアレキサンドリアの果汁を使用した贅沢な味わいが話題になりました。
また、大阪のデパート阪急うめだ本店では、メーカーの定番商品のプレミアム版を扱う高級お菓子シリーズが販売されている以下のようなショップがあります。
・江崎グリコ「バトンドール(Batond'or)」:高級ポッキー
・カルビー「グランカルビー(Grand Callbee)」:高級ポテトチップス&フライドポテト
・亀田製菓「ハッピーターンズ(HAPPY Turn's)」:高級ハッピーターン
いずれも定番ブランドに比べるとかなり高い価格にもかかわらず、行列ができるほどの人気になっています。
SNSが盛んな今、「みんなが知っているお菓子」がリッチになったというのは話題になりやすく、「プチ贅沢ご褒美」を楽しみたい消費者の志向にもハマります。このような定番ブランドのプレミアム化は、バカ売れのひとつのヒントになりそうです。
あの「カップヌードル」もプチプレミアム化
2023年9月、あの「カップヌードル」に「プチ贅沢ご褒美」な新商品が登場したことで大いに話題になりました。それが「特上カップヌードル」です。
価格は259円と通常品より20円ほど高く、パッケージのデザインもゴールドを多用して高級感を出しています。中身は“謎肉”のサイズを通常品の1.5倍にし、特製のトリュフ風味オイルを加えるなど具材やスープを豪華にして“特上”な味わいに仕上げたものだといいます。
他にも「カレー」「シーフードヌードル」「チリトマトヌードル」と4種類の味の“特上”が同時に発売され、SNSでは大きな話題になりました。
食べた感想は、賛否両論で、「激うま」「最高」「リピート確実」という意見がある一方で、わずかながら「残念」「何が違うかわからない」「結局、オリジナルには勝てない」といった意見もありました。
今回は売り切れ次第終了ということでテストマーケティングの意味合いが強いようですが、売り切れ店が続出しているといいます。人気があった商品は、2024年以降、定番化される可能性も高いでしょう。
コンビニゴディバで小さなラグジュアリー体験
デパ地下や路面店で高級ブランドのチョコレートなどを買うのは、プレゼントや手土産などの場合が多い。一方、自分へのご褒美のための「プチ贅沢」は、コンビニのスイーツという方が多いのではないでしょうか?
最近のコンビニスイーツはクオリティがかなり高くなっています。菓子の高級ブランドとのコラボ商品もよく見かけるようになりました。その代表格がゴディバです。
1926年にベルギーのブリュッセルで創業したゴディバは、世界100カ国以上で販売される高級チョコレートの代名詞的なブランドです。日本には1972年に上陸し、直営の路面店やデパートなどを中心に販売を続けてきました。
しかし最近は、コンビニをはじめ、マクドナルドなどの飲食店でもゴディバのコラボ商品を販売しているのをよく見かけます。一体どのような理由からでしょう?
それは2010年にゴディバ・ジャパンの社長に就任したジェローム・シュシャンさんが打ち出した「Aspirational(憧れ)とAccessible(身近さ)は両立できる」という考え方からです。
コンビニやマクドナルドのような店舗は身近な場所にあり、手軽にアクセスできるため、多くの人々が日常的に利用します。こうした場所で提供されることで、消費者は手軽な価格でゴディバの味を楽しむことができ、「プチ贅沢ご褒美」という欲求を満たすことができます。
一方ゴディバは、高級品であるがゆえに消費者の日常から忘れられるというリスクを避けることができます。まさにWin-Winというわけです。
もっとも、コンビニで販売されている他のスイーツと比べると、ゴディバの商品の価格は高めです。2023年5月からローソンで発売された「Uchi Cafe×GODIVA カラメルショコラロール」は397円(税込)、2023年9月から発売の「Uchi Cafe×GODIVA どらもっち ドゥーブルショコラ」は376円(税込)。2023年5月から全国のコンビニで展開された「カカオ72%ダークチョコレートソルベ」は475円(税込)でした。
コンビニで300円以上のスイーツといえば結構高いという印象ですが、自分へのご褒美として「プチ贅沢」を味わうためなら、消費者はお金を払うのです。
『高くてもバカ売れ! なんで? インフレ時代でも売れる7の鉄則』 (SBクリエイティブ) 川上徹也 著
前述のシュシャンさんは「2010年代に入り、人々は気軽に色々な場所で『小さなラグジュアリー体験』を求めるようになった。私たちはお客様目線でアクセシブルなラグジュアリーを提供している」と述べています。その狙いが当たり、ゴディバの売上は2010年からの7年間で3倍になったそうです。
ゴディバの快進撃は止まらず、2023年8月にオープンしたパン屋「GODIVA Bakery ゴディパン 本店」(東京・有楽町)はオープン前夜から客が並び始め、11時の開店時には200人を超えました。
ベルギーワッフルやチョコレートドリンクなど、手土産やご自分へのご褒美にぴったりの商品を販売する駅ナカ店「GODIVA GO!(ゴディバ・ゴー)」など、新事業も続々と生まれています。
ただしこのような戦略は、これまで築いてきた高級ブランドのイメージを損なってしまうリスクもあるので注意が必要です。