「ぽっこりお腹」を凹ませる最短ルートは?「脂肪を減らせばダイエット成功!」が大間違いなワケ
体脂肪を減らせばダイエット成功!ではなく、体脂肪を減らしただけでは、ぽっこりお腹を引き締めることはできない(写真はイメージです) Photo:PIXTA
プロトレーナーの木場克己さんは「体の悩みは、体幹を鍛えれば9割解決する」と言います。しかし、体幹の鍛え方を間違えている人が多いのが実情です。木場さんの著書『プロトレーナーが本気で教える 完全体幹教本』(日本文芸社)から、体幹を鍛えるメリットを紹介します。
そもそも「体幹」って何?
上半身と下半身を支えるコアの部分
「体幹」とは胸、背中、お腹、腰まわりの4つの部位で構成されている胴体のこと。背中を反らしたり、体をねじったりなど背骨や骨盤の向き、角度に影響を与える筋肉が集中しています。体幹を鍛えるというとスポーツ選手のトレーニングを思い浮かべるかもしれませんが、体幹は日常生活のさまざまな動きにも欠かせないものです。
例えば、脚を引き上げる際、まず腰まわりの筋肉が動きます。脚と連動するように腕も振りますが、このときも腕の筋肉につながる背中の筋肉が最初に使われています。手足だけを鍛えても、体の中心である体幹が強くなければ、各筋肉へうまく力を伝達することができません。
バランスを保つうえでも体幹は重要な役割を担います。電車やバスで急に揺れたとき、体幹が強ければ転ばずに済みます。すべての動作を支えているこそが体幹なのです。
◆こんな人は危険信号!体幹力チェック、いくつ当てはまりますか?
□階段よりエスカレーターを使う
□その場にしゃがみ込めない
□立って靴下をはくときよろける
□長時間立ち続けるのがつらい
□階段を上がると息が上がる
当てはまる数が……
0個危険度10%未満→今は大丈夫そう。でも、今から体幹を鍛えておくと、さらにグッド!
1~3個危険度50%以上→あなたの体幹は衰えはじめているかも。今のうちに鍛えよう。
4~5個危険度80%以上→今すぐ体幹を鍛えるべき!できるところから挑戦を。
体幹が弱い人の特徴
・重心がかたより、まっすぐ立てない
・電車の急な揺れに対応できず、よろける
・長時間立つことがつらい
・すぐ座わりたくなる
そのほかのトラブル
ケガ…小さな段差につずきやすく、転びやすい。
事故…不意の事故など、急な出来事への反応が遅い。
インナーマッスルと
アウターマッスルのバランスが大事
●2つの筋肉をバランスよく鍛える
私たちの体を構成する筋肉は2つに分けられます。体の表面に近いところにあるアウターマッスル(表層筋)と、深いところに位置し、触れたり見たりすることが難しいインナーマッスル(深層筋)です。トレーニングの成果を実感しやすいアウターマッスルばかり鍛える人がいますが、同時にインナーマッスルを鍛えることも必要。連動しながらお互いの機能を補い合うため、どちらか一方が極端に弱いとパフォーマンスが低下してしまうのです。
体幹トレーニングで重視しているのはインナーマッスル。腹筋を例にとれば、一番表層には「外腹斜筋」があり、その下に「腹直筋」と「内腹斜筋」、さらに最深部にあるのがインナーマッスルの「腹膜筋」です。腹横筋は息を吐く際、主力となる筋肉で、腹部への負担を減らすコルセットのような役割も担っています。
体の深部にあるインナーマッスルは直接触れることができないため、トレーニングをする際は、ターゲットとなる筋肉がどこにあるかを意識しながら刺激するとよいでしょう。
体幹が強いと
体のパフォーマンスが格段に上がる
○自在に動けるキレのよい体を作る
体幹を強くすると、いいことがたくさんあります。筋力がつき、体の可動域が広がり、全身のバランスが整えられます。その結果、内臓機能が改善され、疲れにくい体ができるのです。睡眠の質も向上するため、頭はいつもクリアな状態に。考え方がポジティブになり、心にも余裕が生まれます。また、背筋がスッと伸びて、お腹まわりが引き締まるなど、見た目にも変化が表れます。デスクワークの疲れは軽く体を動かすだけで解消されます。そのうえ、体の軸がしっかりしていれば、新しいスポーツに挑戦してもスムーズに修得しやすくなります。このように、楽しみがどんどん増えていくのです。
○体幹を鍛えれば毎日がぐんと楽しくなる!
ジョギングやヨガなど、趣味でスポーツに励んでいる人は体幹を鍛えればパフォーマンスがアップし、体を動かすことがより楽しくなるはず。筋力がつき疲れにくくなるため、体力のある子供とも思い切り遊ぶことができますし、外出の機会も増えていきます。体幹を鍛えてアクティブで充実した毎日を過ごしましょう。
体幹を鍛えるメリット(1)
ケガをしにくい体になる
○体の中のブレない軸が瞬時の対応を可能に
ふとしたときに体のバランスを崩してしまう、そんな経験はありませんか。例えば、慌てて横断歩道を渡ろうとしてつまずいたり、急に飛び出してきた自転車をよけきれず転んでしまったり。これらはすべて体幹が弱っていることが原因です。体幹力が低下すると体がゆがみ、筋力のバランスも崩れていきます。筋肉の柔軟性もなくなってしまい、その結果、とっさの場面で踏ん張ることができなくなるというわけです。
体幹を鍛えれば、一本の芯のようなブレない軸が体の中心にでき上がり、筋力のバランスも整い柔軟性も増していきます。すると、日常のあらゆる動作がスムーズに行えるようになり、多少の揺れや衝撃を受けても、びくともしない体へと変化していきます。日常生活での思わぬケガを防ぐことはもちろん、スポーツでも思い切りパフォーマンスを発揮することができます。
体幹を鍛えるメリット(2)
ぽっこりお腹が引っ込む
○体脂肪を減らしてもお腹は痩せてくれない
体脂肪を減らせばダイエット成功!そう考えている人は多いのではないでしょうか。しかし、体脂肪を減らしただけでは、ぽっこりお腹を引き締めることはできません。それは、体幹が鍛えられていないからです。
なぜダイエットにも体幹が関係しているのかというと、体幹が弱ければ、腹部の筋肉に力が入らず、お腹の内部に圧力をかけることができません。そのため、下腹が出たままになるのです。この圧力を「腹圧」といいます。腹圧が弱いと骨盤が前に傾き、背骨が曲がってしまいます。お腹が出るだけでなく、姿勢まで悪くなってしまうのです。
よくあるダイエットの失敗談
A男さんの場合(40代・男性)
「スポーツジムで腹筋やランニングに励んでいますが、お腹だけはどうしても凹みません。カロリー制限に挑戦したものの、結局リバウンドしてしまいました」
B子さんの場合(30代・女性)
「ダイエットには糖質制限がいいと聞いて実行しました。多少痩せはしたものの、肌がカサカサで化粧ノリも最悪。一気に老けた感じがします」
○ダイエットには腹圧が重要
体幹まわりの筋肉が弱い、つまり、「腹圧」が弱いと、お腹の内部に圧力がかけられなくなる。そうすると、下腹が出た状態に……。骨盤も前に傾いて背骨が曲がり、姿勢も悪くなる。また、老けた印象にもつながってしまう。
体幹を鍛えるメリット(3)
基礎代謝がアップ
○基礎代謝量を増やせば脂肪が燃焼しやすくなる
私たちは日々、エネルギーを消費していますが、その約60%は基礎代謝で使われます。基礎代謝とは呼吸や体温調節など生命維持に必要なエネルギーのことで、何もしなくても消費されます。基礎代謝量は筋肉の量に比例するため、体幹を鍛えて眠っていた筋肉を目覚めさせれば、基礎代謝が上がり、脂肪を燃焼しやすくなります。つまり、食べても太りにくい体ができ上がるのです。
ダイエット目的で食事制限をしてもなかなか痩せないという人は、基礎代謝量が低下しているかもしれません。ダイエットを成功させるカギは、食事制限ではなく筋力や体幹力強化なのです。
体幹を鍛えるメリット(4)
疲れにくい体になる
○無駄な力は使わず、体の負担を減らす
なかなか疲れが抜けないという人はたくさんいるでしょう。疲れやすさの原因は生活習慣の乱れや睡眠不足など、人によってさまざまです。一方、疲れにくい人の体はよく動きます。関節の可動域が広く、筋肉同士の連携がよいうえに筋力も十分に蓄えられています。
例えば歩く際、関節の可動域が広ければ少ない歩数で移動できるので、その分、疲れは軽減できます。また、股関節を動かす腸腰筋から太ももの前にある大腿四頭筋までがしっかり連携しているため無駄な力を使うことがありません。
このような動きを支えているのがインナーマッスルです。体幹トレーニングでインナーマッスルを鍛えると同時に、ドローインやストレッチを行うことで体のバランスが整えられ、疲れにくい体ができます。その結果、スピードや瞬発力が上がり、パフォーマンスがアップするのです。
体幹を鍛えるメリット(5)
つらい肩こり・腰痛も解消
○原因は体のゆがみ!正しい姿勢で痛み改善
健康雑誌やテレビ番組でたびたび取り上げられる体の不調に、肩こりと腰痛があります。痛みをとるためにマッサージに通っても、根本的な改善にはなりません。むしろ、急激な刺激を与えれば筋肉が炎症をひき起こす恐れもあります。
肩こりや腰痛も体幹力不足が原因の可能性大。体幹が弱いと体にゆがみが生じ、姿勢が悪くなります。その結果、肩や首、腰に余分な負担をかけることになり、痛みが生じるというわけです。トレーニングで体幹を鍛えれば、筋力バランスが整えられ正しい姿勢を維持できるようになるため、痛み知らずの体になれます。
ただし、痛みが激しい場合は、まず、入浴や温湿布などで体を温めましょう。血行がよくなれば老廃物など痛みの原因物質が排出され、こわばった筋肉がほぐれていきます。そのうえで体幹トレーニングを行えば、より効果がアップします。
体幹を鍛えるメリット(6)
腸を活性化
○腸は「第二の脳」心と体を良好に保つ
便秘などの腸の不調にも体幹が関係しています。お腹や背中部分のインナーマッスルを鍛えていなければ腹圧は弱いままなので、腸の働きも低下。腸で吸収された栄養分は血流にのり、全身に届けられますが、腸の働きが悪くなれば、十部な栄養を送ることができず、腸内で発生した腐敗物質が血流にのって全身をめぐることになります。腸内環境が悪化すると病気にかかりやすくなるといわれるのは、そのためです。
さらに注目したいのが脳と腸の関係。実は腸は脳に次いで多くの神経細胞が集まっており、「第二の脳」とも呼ばれています。緊張すると腹痛や下痢を起こすのも脳と腸が密接に関わっているから。「幸せホルモン」と呼ばれ、リラックス効果をもたらす神経伝達物質「セロトニン」もその95%を腸が作り出しています。心と体の健康を保つために腸の働きは欠かせないものなのです。
○腸内環境向上のカギは体幹力にあった
1.体幹トレーニングでインナーマッスルを鍛える!
お腹や背中などの筋肉を鍛えて腹圧を強化すると、内臓の働きも活発になる。
2.腸の働きが活性化し、セロトニンが分泌される!
脳内の神経伝達物質であるセロトニンの95%は腸内で作られている。腸内の働きがよくなると、セロトニンの分泌が促進される。
3.精神が安定してストレスが軽減する!
心身ともに安定し、リラックス効果が高まる。反対に、腸内環境が悪くなると、イライラしがちになり、精神状態が不安定になる人も。
体幹を鍛えるメリット(7)
ぐっすり眠れる
○腸の働きを強化して快眠を導く!
疲れているのに眠れない、寝ても疲れが取れない、いわゆる「睡眠障害」といわれる悩みを抱える人が増えています。睡眠不足が続くと、日中に睡魔に襲われるなど生活のリズムが崩れてしまううえに、自律神経の乱れや免疫力の低下を招きます。
健康の基本を支えているともいえる睡眠ですが、ここにも腸の働きが大きく関係しています。腸にはセロトニンを作り出す働きがあると述べましたが、このセロトニンは夜になると睡眠を促すホルモン「メラトニン」へと変化します。
つまり、質のいい睡眠を得るためには腸の働きを活性化させ、セロトニンの分泌を促す必要があるのです。そのためには腹圧を強くするなど、体幹トレーニングが欠かせません。また、入浴後や就寝前に軽いストレッチで筋肉をほぐせば、血行がよくなり、心地よい眠りと目覚めがもたらされます。
木場克己著 『プロトレーナーが本気で教える 完全体幹教本』 (日本文芸社)