ロシア軍、「バイク突撃」戦術のギア上げる 犠牲も増大
ロシア軍、「バイク突撃」戦術のギア上げる 犠牲も増大
2年4カ月あまりに及ぶ消耗戦で装甲車両の在庫が払底してきているロシア軍は、少し前に考え出したアイデアにますますすがっている。前線の部隊に安価なオフロードバイクを配備するという、例の筋の悪いアイデアのことだ。
オフロードバイクに乗って戦闘に入るロシア兵が増えるほど、その際に死傷する兵士も増えることになる。
OSINT(オープンソース・インテリジェンス)アナリストのアンドルー・パーペチュアが確認したものだけでも、撃破されたロシア軍のオートバイ数は今年2月に5台、3月に1台だったのが、4月に13台、5月には56台と増え、6月は第1週だけで9台を数えている。このほかに、損傷したり遺棄されたりしたオートバイ数も累計で数十台にのぼっている。損害の大半はウクライナ側のドローン(無人機)によるものだ。
「ロシアがオートバイ攻撃で出している人的損失の数には心底おそれいる」とパーペチュアはコメントしている。
オートバイによる突撃というアイデアは第一次大戦以降、各国の軍隊が試しては放棄してきたものだが、ロシア軍は多大な損失を被りながら、ここへきてそれに一段と大きく賭けようとしているようだ。ウクライナのシンクタンク、防衛戦略センター(CDS)は26日の作戦状況評価で、ウクライナ東部ドネツク州クラスノホリウカ付近で戦闘を行っているロシア軍の第5独立自動車化狙撃旅団が、オートバイ小隊を試験的に編成したと言及している。
エストニアの軍事ブロガー、WarTranslatedが紹介・翻訳しているところによれば、ロシアの戦争特派員アレクサンドル・スラドコフは、このオートバイ小隊は「大隊の戦闘オートバイ部隊に加えて」つくられたものだと強調している。「必要な貨物の輸送や負傷者の後送」がその任務だといい、ほかの旅団や連隊でも同様のオートバイ部隊が組織される見込みだとしている。
だが、これらの部隊はおそらく直接戦闘任務も担うのだろう。実際、装甲車両が枯渇してきているロシア軍の指揮官は、部隊をオートバイでウクライナ側の陣地に対する直接攻撃に向かわせるケースがますます増えている。
ロシア軍が最近、ウクライナ南部とみられる戦場で行った攻撃作戦では、まず第1波として戦車などの装甲車両の車列が突撃してきた。それがウクライナ側の大砲やドローンによる防御の壁に阻まれると、第2波として徒歩やオートバイで歩兵が送り込まれた。
結果は悲惨なものだった。ウクライナ軍のドローン操縦士、コールサイン「Kriegsforscher(クリークスフォルシャー)」は「一度に大砲6門が彼らの陣地に砲撃を加えたこともあった」と振り返っている。
この数週間に、ウクライナ軍の少なくとも4個旅団(第28、30、54各独立機械化旅団と第79独立空中強襲旅団)が、突っ込んで自爆するFPV(一人称視点)ドローンや、擲弾(てきだん)を投下するドローンでロシア軍のバイク兵を攻撃している。一部の部隊がオートバイに取り付けている即席の装甲は、残念ながらあまり役に立っていないようだ。
ロシア軍が新たに編み出したオートバイ戦術については、個々の兵士を空中から発見されて攻撃される前に素早く目的地にたどり着かせることで、ロシアの戦争努力に寄与するのではないかという見方もこの春にはあった。
実際には、バイク兵は砲撃やドローン攻撃に対して救いようがないほど脆弱であり、犠牲者は増える一方となっている。しかし、使える装甲車両があまりに少ないロシア軍にとって選択肢は限られる。
そこそこ新しいBMP歩兵戦闘車を入手できる幸運に恵まれなければ、ロシア軍の部隊は50年物のMT-LB装甲牽引車や、俗に「ゴルフカート」と呼ばれている中国製の全地形対応車(ATV)、あるいはオフロードバイクでどうにかするしかないだろう。
ほかにもうひとつ、徒歩で戦闘に赴くという選択肢があるが、これはオートバイで乗り込む以上に危険だ。
(forbes.com 原文)