チャーハン、餃子、ラーメン・パスタ…プロと編集部員が選んだ本当に美味しい「冷凍食品」はこれだ!
前編記事『その数1万品目以上!寿司からパン、冷やし中華まで…「冷凍食品」はなぜこんなに美味しくなったのか』より続く。
保存時の乾燥に注意
だが、冷凍食品は生鮮食品より栄養面で劣るのではないか―そう思っている人は多いだろう。
これについては、冷凍するとはどういうことかを見ておく必要がある。山本氏が語る。
「家庭用の冷凍庫で食品を冷やすと、氷結晶が大きくなりやすい温度帯(最大氷結晶生成帯)を数時間かけて通過します。これを『緩慢凍結』と呼びますが、氷の結晶は大きくなり細胞組織を壊してしまう。すると、解凍した時にドリップという食品内の水分が流れ出る現象が起き、食感・食味が損なわれます」
他方、冷凍食品の生産現場で使われる急速凍結機は、その温度帯を30分以内に通過する(急速凍結)。それにより細胞組織がほぼ壊れず、美味しさや栄養素をほぼそのまま保てるというわけだ。
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「急速凍結してマイナス18℃以下で保存される冷凍食品は、時間が止まった状態。スーパーに長時間並ぶ生鮮食品よりも新鮮と言えます。冷凍は生鮮に劣ると思う日本人が多いようですが、鮮度を保つ手段が冷凍であると、欧米諸国では当たり前に認識されています」(山本氏)
ここからより具体的に見ていこう。
五大栄養素のうち、炭水化物やミネラルは冷凍による変化はほぼなく、栄養価が保たれることが研究でわかっている。
たんぱく質や脂質も栄養価は保たれるが、冷凍保存中の乾燥による変性や空気に触れることで酸化が起きるという。
「家庭の冷凍庫での乾燥を防ぐには、ジップ付き袋による密閉がおすすめ。また冷凍食品を庫内に隙間なく詰めておくなどが有効です」(山本氏)
生活防衛手段にもなる
では、ビタミンなどについてはどうだろうか。文部科学省が公表する『日本食品標準成分表(八訂)増補2023年』をもとに100g当たりの栄養素を見てみる。
茹でたスイートコーンと冷凍した後に茹でたスイートコーンを比べると、ビタミンCは6mgから2mgに減っている。
また茹でたほうれん草でも、冷凍後はビタミンCは4分の1に、葉酸は半減し、カリウムは5分の1ほどに減少する。
その一方で、鉄や亜鉛の量はほぼ変わらず、β-カロテンはむしろ1.3倍に増える。にんじんも同じく、ビタミンCは4分の1に減るが、β-カロテンは1.4倍に増えている。なぜ冷凍するとβ-カロテンが増えるのかについては、今後の研究が待たれる。
冷凍食品の長所といえば、長期間にわたり保存しておけることだ。
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「冷凍野菜は通年でほぼ同じ品質のものを食べられます。天候不順などにより価格が2~3倍にもなる昨今では、生野菜を買うよりも冷凍野菜のほうが安い逆転現象も起きていて、生活防衛手段としても、冷凍食品は役立ちます」(前出の成田氏)
だが、その間に失われる栄養素もある。ある研究データでは、1年冷凍保存したキャベツでは約1割、にんじんでは約2割のビタミンCが失われているという。カロテンやビタミンB1も保存期間に伴い漸減する。冷凍だからといって放置するのではなく、早めに消費したほうがいい。
電子レンジで温める場合はどうだろうか。ビタミンやカリウムなど水に溶けやすい栄養素は減る。ただ、ビタミンCについては加熱時間が短いほうが失われにくいので、茹でるよりも電子レンジ調理のほうが残りやすいという。栄養素の減少を過度に気にする必要はないと言えよう。
冷凍食品は腐ることがないので、保存料はほとんど入っておらず、健康面で総菜・弁当より劣るわけでもない。
むしろ、注意すべきは塩分や糖質過多のほうだ。1食すべてをひとつの冷凍食品に頼るよりも、生鮮食品とうまく組み合わせて使うと、バランスのよい食事になるだろう。
編集部員が実食して驚愕
「塩分の摂り過ぎを気にする方は、炒飯の塩分は多いと感じています。塩味の少ない炒飯は美味しくない。その点で、味の素冷凍食品の白チャーハンは優れています。塩化ナトリウムを塩化カリウムに置き換える一般的な減塩方法では苦みが強くなりますが、味の素ならではのアミノ酸の旨みで苦みを覆う技術により、減塩でも味わい深い逸品に仕上がっているんです」
そう語る前出の山本氏によれば、冷凍食品の定番である炒飯ひとつ取っても、並々ならぬ企業努力が感じられるという。
「'01年にニチレイフーズが開発した本格炒め炒飯は、炒飯の売り上げトップを22年間保っています。発売後もプロのつくる炒飯を研究し続け、中華鍋にできる約250℃の熱風空間にお米が舞うことで、よりパラパラに仕上がることを突き止めた。そこで'15年、工場に30億円を追加投資し、熱風空間を再現して味を進化させたんです」(山本氏)
今回本誌はそんな企業努力を味わうべく、山本氏に加えて、年間約1000品の冷凍食品を試食している、冷凍生活アドバイザーの西川剛史氏、これまで2万食以上の冷凍食品を食べ続けている、冷凍食品マイスターのタケムラダイ氏に、“絶品冷凍食品”を紹介してもらった。
前章で触れたような高級冷凍食品は美味しい一方で、入手できない商品も多い。そこで、大手スーパーやネット通販で簡単に買える商品(炒飯、餃子、麺類)を複数選んでもらい、編集部員も実食、10点満点で評価した。
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●炒飯
炒飯部門1位に輝いたのは冒頭の白チャーハンだ。陶器皿から一口頬張った40代男性部員は、「くどくない旨みが感じられ、塩味がちょうどよい」と、顔をほころばせて満点をつけた。本格炒め炒飯も、「小細工なしの正統派。奇をてらわない王道の味なので普段から食べたい」(50代男性部員)と評価が高かった。
タケムラ氏は山本氏同様、ニチレイを称賛する。
「炒飯をつくる技術は、ニチレイが秀逸です。今春発売されたばかりのWキムチ炒飯も抜群の味わい。炒めたキムチと追いキムチの両方を使用することで食感を変え、風味豊かに仕上げています」
実際に食したところ、「米が少々水っぽいのが惜しい」という声も複数聞かれたが、「ほどよい辛みが食欲をそそる」と5位にランクインした。
誰でも美味しくつくれる
●餃子
多くの冷凍餃子には水や油が予め仕込まれており、フライパンに蓋をして約5分焼くだけで、誰でも美味しく仕上げられる。普段料理をしない40代男性部員が不慣れな手つきで焼いた餃子も美味しそうに仕上がった。
「味の素と、大阪王将の味を冷凍にするイートアンドフーズが餃子の二強と言われていましたが、そこにマルハニチロも参入してきて、老舗中華の名店が監修した赤坂璃宮の餃子をつくった。素材にこだわりが見られます」(タケムラ氏)
「肉の旨みが強い」「味がやや薄い」と賛否両論あった赤坂璃宮の餃子を上回ったのが、生姜好きのためのギョーザである。「生姜のインパクトが凄い」のほか、女性部員から「にんにく不使用が嬉しい」という声も挙がった。
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●麺類
「あまりにレベルが高すぎる!」と驚愕の声が連発したのは麺類だった。
タケムラ氏が10点満点をつけたのは、鍋で煮るだけのえびそば一幻 あじわいえびみそである。
「札幌の有名店『えびそば一幻』にも足を伸ばしましたが、お店で食べるのと大差ない出来栄えです。開発者はお店の方が納得するまで何度も通ったと語っていました」
一方、西川氏は長崎にある名店の味を再現したお水がいらない 四海樓監修 ちゃんぽんを、「海鮮の旨みがしっかりと濃厚で、炒め野菜の甘みが加わり、レベルが高い」と称賛する。
「シャキシャキしたごぼうの風味が秀逸」という3位にランクインした福岡名物の肉ごぼう天うどんと同様、ご当地麺も自宅で食べられるのだ。
ランキング表も参考に、さて今夜はどの冷凍食品を……と悩んでみようではないか。
「週刊現代」2024年6月22日号より