ついに麻生からも見捨てられた…「安倍晋三」になれなかった岸田首相の悲しき末路 支持率は下がっていくばかり
「悪いことはしていないのだけどな」
メディア各社による世論調査の数字が思わしくない岸田政権だが、11月26日に公表された日経新聞とテレビ東京の世論調査では、岸田内閣の支持率は前回比3ポイント減の30%と、かろうじて3割を維持した。とはいえ、「政権に好意的な数字が出る」と言われる同調査でさえ、不支持率も3ポイント増の62%だから、「嫌われ傾向にある」ことは変わりない。
それにしても、なぜここまで岸田文雄首相は国民に嫌われるのか―。岸田首相が善意を持ってやろうとしていることがことごとく、裏目に出ている印象だ。
たとえば10月20日に始まった臨時国会の所信表明で、岸田首相は税収の上振れを「国民に還元する」と宣言し、減税措置と非課税世帯への助成金支給を表明したが、「増税メガネ」の渾名が消えることはなかった。
「悪いことはしていないのだけどな」
11月21日付けの朝日新聞は、岸田首相が内閣低支持率を嘆いて漏らした呟きを報じている。
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確かに岸田首相は精一杯やっている。総裁選の時に表明した「所得倍増」を「資産倍増」に変えながらも、国民の可処分所得が増大する政策を模索。
不穏さを増しつつある東アジアで日本の安全保障を増強するため、2027年度には防衛費を対GDP2%にすることも打ち出した。ウクライナ支援をきっかけに、防衛整備移転3原則の見直しにも積極的だ。その姿はとてもハト派といわれる宏池会の領袖のものとは思えない。
「安倍晋三」になれなくて…
岸田首相が手本にするのは、昨年7月の参議院選の最中に凶弾に倒れた安倍晋三元首相だろう。安倍元首相は2012年12月に民主党から政権を奪還し、第1次政権を含めた在職期間は、歴代最長の3188日にものぼる。
そして国内的にはアベノミクスを実施し、対外的には「地球を俯瞰する外交」を展開。とりわけ安倍元首相はアメリカのドナルド・トランプ大統領(当時)と懇意で、国際政治の舞台で暴走しがちなトランプ大統領を引き留め、先進国の首脳のまとめ役を任じることも多かった。
凶弾に倒れた安倍晋三元首相[Photo by gettyimages]
その安倍政権で、岸田首相は4年7か月もの間、外務大臣を務めた。「私の次は岸田さん」との安倍元首相の言葉を信じ、その側で21世紀の日本のリーダーは何をなすべきかを学んできた。
岸田首相はハト派の宏池会の領袖ながら、時折タカ派の行動をとるのはそれゆえだろう。もちろん党内4位の派閥のトップに過ぎない岸田首相は、安倍元首相を支援してきた岩盤保守層を取り込む必要もある。
しかしそれは国民が望んでいることなのか。安倍政権時の日本は、それまでの経済的閉塞感から脱却しそうでできないままに終わっている。「失われた30年」のために内向きでいた間に、世界からすっかりと遅れを取ってしまっている。
そうしたところから脱却し、これまでの方針を全て変えていかなければならないのに、岸田首相はいまだ「経済大国・日本の総理大臣」のままでいる。またアベノミクスの検証もないままに、新たな“キシダノミクス”ともいうべき「資産倍増計画」をぶち上げたことも問題だ。後者が宏池会の創始者である池田勇人元首相の「所得倍増計画」をモデルとしているのは明らかだが、「中味のない二番煎じ感」が否めない。
もっとも「平時の政治家」なら、それでも良かった。だが現在は平時ではない。コロナ禍後の世界は大きく変わり、日本は様々な内憂外患に脅かされている。
足元から崩れていく
しかも岸田首相の足元の閣内でさえ、意思統一が図れていない。
たとえば鈴木俊一財務大臣は11月8日に開かれた衆院財政金融委員会で、「(過去2年間で)税収の増えた分は、政策経費や国債の償還などですでに使っている。減税をするなら国債の発行をしなければならない」と述べ、岸田首相が打ち出した減税案を事実上否定した。
鈴木俊一財務大臣[Photo by gettyimages]
さらに岸田首相が22日の予算委員会でガソリン税のトリガー条項凍結解除を求める国民民主党の玉木雄一郎代表に対して前向きの姿勢を見せ、萩生田光一政調会長に公明党や国民民主党と協議を進めることを指示したのにもかかわらず、鈴木財務相は24日の会見で、脱炭素に向けた国際的潮流の他に「国・地方合計で1.5兆円もの巨額の財源が必要」と難色を示した。
これは“財務省の反乱”に止まらないものだ。岸田首相の後見人たる麻生太郎自民党副総裁の意向もうかがうことができるからだ。鈴木大臣は安倍・菅政権の9年間を財務大臣として支えた麻生氏の後任で、総理大臣をも務めた麻生氏の義理の弟でもある。
その麻生氏は11月8日に非主流派の二階俊博元幹事長らと会談した。2人は今年5月から、数回にわたって食事をともにし、情報交換に務めている。
自民党の麻生太郎副総裁[Photo by gettyimages]
またその翌日の9日には、二階氏と菅義偉前首相、森山裕総務会長らが会談。このように続々と大物が連携する中で、岸田首相は孤立感を高めている。
それが減税への“暴走”や、これまで慎重だったトリガー条項の凍結解除への容認に繋がっているのではないか。それらを国民がひしひしと感じ取ってしまうからこそ、内閣支持率の低下が止まらないのではないか。
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