車両不足のロシア軍、新たな代替手段はオートバイ 無防備すぎて犠牲者続出
車両不足のロシア軍、新たな代替手段はオートバイ 無防備すぎて犠牲者続出
2022年2月にウクライナに対する全面戦争を開始してから2年後までに、戦闘車両をおよそ1万5000両失ったロシアは、焦りを募らせた。
新造分と長期保管していた古い車両の改修分を合わせても、月に600両超にのぼる戦車や歩兵戦闘車、装甲兵員輸送車の損失ペースにはとても追いつかない。
戦争が3年目に入るなか、ロシア軍部隊がトラックやゴルフカートのようなオープンタイプの車両で戦場に乗り込む例が増えているのはそのためだ。最近はさらにオートバイを使うことも多くなっている。
もっとも、ロシア軍部隊が無防備な、あるいは最小限の防護しかない車両をよく乗り回しているからといって、戦場でウクライナ軍に勝てていないというわけではない。ウクライナ側もまた、弾薬が枯渇し、人員も不足するという問題を抱えている。
だが、ロシア軍の車両の「退化」は、ロシア側が当初は数日でロシアの勝利に終わると見込みながら、実際は長く続く消耗戦になったこの戦争で、ロシア側の最も深刻な課題のひとつを浮き彫りにしている。ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトの創設者「タタリガミUA」(@Tatarigami_UA)が指摘するように、「ロシアは依然として戦場で深刻な脅威だが、失った装甲車両を補充する能力は限られる」のだ。
オートバイ自体は、戦場でも1世紀以上、つまりそれが誕生してからずっと使われてきた。機動力が高く、価格も安いオートバイは、伝書使や斥候が戦場を駆け回るには便利な乗り物だ。
2024年のロシア軍で問題なのは、専用の装甲車両に加え、もともとは民生用だった大型車両も不足しているために、無防備なオートバイでウクライナ側の陣地に直接乗りつけていることだ。2カ月かそこら前、ゴルフカートのような中国製デザートクロス1000-3全地形対応車でやり始めたのに続く動きだ。ウクライナの戦場記者ユーリー・ブトゥソウは「ゴルフカートの代わりに今度はオートバイが使われ出している」と伝えている。
実際、大型車両からオートバイに乗り換えた結果、一部のロシア軍部隊は大きな犠牲を払っている。たとえば4月15日ごろ、ウクライナ東部バフムートの近郊で、ロシア軍のオートバイ部隊による突撃がウクライナ軍の第92独立強襲旅団に撃退されている。
3週間後の5月7日ごろには、同じく東部のノボミハイリウカをロシア軍部隊がオートバイなどを使って強襲したが、オートバイ8台がウクライナ軍の第79独立空中強襲旅団に撃破される結果になった。同旅団は、オートバイ部隊は「こてんぱんにやられました」と報告している。
タタリガミUAは、ロシア側の車両補充能力の制約を「如実に示す」例として、兵士数人を輸送するための粗雑な即席サイドカー付きオートバイを紹介している。明らかに定員オーバーのこのバイクは、おそらく先週、ロシア軍部隊が東部のビロホリウカに突撃をかけた際に乗り捨てたものだ。
こうした損失にもかかわらず、ロシア軍の少なくとも1つの部隊は、強襲用車両としてオートバイは役に立つと考えているらしい。第123自動車化狙撃旅団所属の「ザリャ」大隊は、オートバイは装甲車両よりも素早く動け、ウクライナ側に見つけられにくいと述べている。
ロシア軍は、亀の甲羅のような大きな追加装甲で覆われた「亀戦車」のように、オートバイでも防護の強化を図っている。ロシア兵のオートバイがウクライナ軍のFPV(一人称視点)ドローンに背後から追い上げられる様子は一度ならず映像で確認されているが、一部のロシア軍部隊はFPVドローンの脅威を軽減するために、オートバイの周りに金属製のメッシュを張るようになっている。
ともあれ、ウクライナ軍の第79旅団はオートバイによる突撃には感心していない。7日かその前日、ロシア軍のオートバイ部隊による突撃を撃退したあと、第79旅団は「われわれの攻撃ドローンの操縦士たちは(ロシア側の)創意を高く評価していません」とソーシャルメディアに投稿している。
破壊されたオートバイやロシア兵ライダーの遺体も出てくる映像に添えて、「各ライダーはゴールに届く前にスピード違反で罰を受けました」とも皮肉っている。
(forbes.com 原文)