日本の研究者ら突き止めた「インド洋ダイポールモード現象」、25年経て予報用語に…「解説に欠かせない」
気象庁のウェブサイトで予報用語を確認する池田所長(東京都港区で)
気象庁は今春、天気予報などで使われる予報用語を改訂し、異常気象をもたらす「インド洋ダイポールモード現象」など四つが新たに仲間入りした。年に1度をめどに見直される予報用語は、地球の変化を映し出している。(大原圭二)
■「解説に不可欠」
「『インド洋ダイポールモード現象』の影響があったと分析している」。気象庁の記者会見室で3月上旬、異常気象分析検討会会長の中村尚・東京大教授は、今冬の異常な暖かさの理由をそう説明した。
ダイポールモードは英語で「二つの極」という意味で、インド洋熱帯域の東側と西側で海面水温の差が大きくなる現象だ。日本の研究者らが1999年に突き止め、近年、暖冬など日本の気候に関係があることが明らかになってきた。
「異常気象の要因を解説するのに欠かせない」として3月末、予報用語に加えられた。
■1300語
予報用語は、各地の気象台が発表する天気予報などの言葉遣いを統一し、国民に言葉の意味を正確に伝えることを目的に定められた。かつては冊子にまとめられており、初版が発行されたのは1966年。冊子は2005年までで、今は約1300語を気象庁のウェブサイトで公開している。
見直しの際には、気象庁の天気相談所が中心になって新語や廃止する用語などの改訂案を作り、気象庁内や各地の気象台から意見を募って作業を進める。
「明確さ」「平易さ」に加え、ラジオやテレビでも伝えられることから「聞き取りやすさ」も重視される。初版は、「にわか雨」「さつき晴れ」「暴風」など500語程度を掲載。07年の大改訂では、今では当たり前のように使われている「熱中症」や「猛暑日」など約40語が加わった。
今回、ほかに追加されたのは、4月24日から運用が始まる熱中症特別警戒アラートに関連する「熱中症特別警戒情報」「熱中症警戒情報」と「乾いた雪」。「乾いた雪」は、含水率が小さくて風で舞い上がりやすい雪を指し、地ふぶきで見通しが悪くなりやすい。北海道の札幌管区気象台から「気象の解説に使いたい」と要望があった。
■民間の予報でも
民間の予報業者も、天気予報では予報用語を使う。
テレビなどで予報を伝えてきた日本気象協会のベテラン気象予報士・谷口聡一さん(58)は「天気予報の原稿は、予報用語の定義に従っている。新人の気象予報士たちにも頭にたたき込ませている」と語る。
天気相談所の池田徹所長は「予報用語は国民にも身近な存在で、わかりやすさを大切にしている。正しく理解し、日々の生活や防災行動の判断に役立ててほしい」と期待する。