ドラゴンボール外交 日仏首相が鳥山明さんに重ねて弔意 フランスに漫画文化伝えた貢献者
フランスを訪れている岸田文雄首相は1日夜(日本時間2日未明)、アタル首相と会談し、3月に死去した漫画家、鳥山明さんの代表作「ドラゴンボール」のこけしを贈呈した。フランスは日本に次ぐ世界2位の漫画市場とされ、ドラゴンボール人気は根強い。鳥山さんの死去を巡って同国の政治家が相次いで弔意を示した経緯もあり、改めて鳥山さんの作品が日仏の橋渡し役の一翼を担っていた現状が浮かんだ。
フランス人が親しむドラゴンボール
アタル氏はパリの首相府で首相を出迎えると、自身が仏日友好議員連盟の一員で日本に親近感を有していると説明。奈良に訪れた思い出などに触れた。鳥山さんの死去に弔意を示し、「多くのフランス人がドラゴンボールなどの漫画に慣れ親しんでいる」と語った。
1月に34歳の若さで同国首相に就任したアタル氏と首相は初めての会談となる。両者が交流を温める上でもドラゴンボールが活用された形といえる。
2日午後(同2日夜)に会談するマクロン大統領に対しては、ドラゴンボールの食器を渡す予定と報じられている。
ドラゴンボールはフランスでトップ
鳥山さんの死去を巡っては、当時フランスメディアも大きく取り上げた。
アタル氏もX(旧ツイッター)で、世界中に散らばる7つの玉(ドラゴンボール)を集めると現れて願いをかなえてくれる神龍(シェンロン)のキャラクターを取り上げ「シェンロンの力でも彼を連れ戻すことはできないだろう。彼は間違いなくフランスに漫画と日本文化をもたらした巨匠だった」と投稿していた。
マクロン氏は「鳥山明と何百万もの彼の愛好家へ。」と日本語でXに書き込み、「サイヤ人」と呼ばれる宇宙最強の戦闘民族が変身した最終形態の「超サイヤ人3」になった主人公の孫悟空が、悪役の最終形態の魔人ブウと対峙するイラストに鳥山さんのサインを添えた色紙を投稿した。ブルーノ・ルメール財務相もXで鳥山さんの死去に言及した。
ドラゴンボールは1980年代後半にフランスでアニメ放送が開始された。ニュージーランド企業の2018年のリポートでは「フランス人は他のアニメよりドラゴンボールを好み、同シリーズが国内でトップの座を占めている」と指摘した。日本の漫画文化がフランス市場で愛される原動力になったといえる。鳥山さんは2019年5月にフランスの芸術文化勲章シュバリエも受賞している。(奥原慎平)