トヨタ圧倒的収益力、HVが業績けん引で日本企業初の営業利益5兆円超え…EV化先行の米中追撃できるか
トヨタのロゴ
トヨタ自動車が2024年3月期連結決算(国際会計基準)で、日本企業で初めて5兆円の営業利益を突破した。得意とするハイブリッド車(HV)を中心とした利益率の高い車の販売が大きく伸びた。トヨタの収益力は中長期的に伸び続けて同業他社を圧倒しており、稼いだ利益をさらなる成長につなげられるかが課題となる。(杉本要、水野翔太)
■20年で5倍
佐藤恒治社長は8日の決算記者会見で、「商品を軸とした経営と、積み上げてきた事業基盤が実を結んだ結果だ」と好業績の理由を分析した。
業績をけん引したのが好調なHVだ。世界販売は前期に比べて87万台伸びた。トヨタによると、1997年に発売した初代プリウスに比べ、ハイブリッドシステムの原価が6分の1に縮小しているという。また、HVはガソリン車よりも高めの価格のため、売れば売るほど利益が伸びる構図となっている。
北米では電気自動車(EV)の需要が一巡し、HVが再評価されている。EV大手米テスラの1~3月の売上高は、約4年ぶりに前年同期を割り込んだ。逆風にさらされるEV専業のテスラと異なり、HVを含めた多様な選択肢を提供するトヨタの「マルチパスウェイ(全方位)戦略」が奏功した。
販売台数の拡大や北米や欧州で行った値上げ効果なども大きく、営業利益を2兆円押し上げた。
トヨタの営業利益は2002年3月期に初めて1兆円を突破した。20年余りで約5倍に増加した。販売台数でトヨタに次ぐ世界2位の独フォルクスワーゲングループの225億ユーロ(約3兆7600億円、23年12月期)、ホンダの1兆2500億円(24年3月期予想)、日産自動車の5300億円(同)を大きく上回る。
トヨタは、08年のリーマン・ショックなどを経て、北米偏重型の販売戦略を見直し、地域の実情に即した生産・販売体制作りを進めてきた。宮崎洋一副社長は記者会見で「収益構造強化の取り組みの成果が大きく表れた」と述べた。
■険しい道のり
トヨタは今年度、稼いだ利益を取引先への還元策や成長分野への投資に振り向ける。課題は、EV化などで先行する米テスラや中国BYDを追撃できるかどうかだ。
「中長期的にはEV化は加速する」(競合の大手自動車幹部)との見方が大勢で、トヨタは26年までに世界でのEV販売を150万台、30年までに350万台に拡大する計画を掲げている。ただ、23年度は11万台超にとどまっており、計画の実現には販売台数の急増が求められる。
BYDなど地元EVメーカーなどとの価格競争が激化している中国でも、「当面はしのぐ年が続く」(宮崎副社長)と見通しは厳しい。佐藤氏は「過剰な価格競争に巻き込まれないような取り組みを行う」と強調しており、今後、状況を変えるような具体策が出てくるかが注目される。