苦しんでいるFC東京・松木玖生、あまりに仕事が多すぎて…できることなら、もう一つ後ろのポジションで見てみたい
FC東京―福岡 前半、シュートを放つFC東京・松木(左)=味の素スタジアムで
【大塚浩雄のC級蹴球講座】
◇30日 J1第21節 FC東京0―1福岡(味スタ)
FC東京の若き大黒柱、松木玖生が苦しんでいる。この日の相手、福岡は堅い守りを武器にFC東京に1―0で競り勝った。ここ6試合で5勝1分けと絶好調。3バックを軸に相手の攻撃に合わせて4バック、5バックと形を変えながらリーグ4位の18失点(22得点は16位)で6位まで浮上してきた。
そんな“くせもの”相手に、FC東京は予想どおり攻めあぐんだ。守りの福岡がシュート9本なのに、FC東京はわずかに7本。最後まで攻撃がかみ合わず、完封された。この8試合でわずかに6得点。2得点以上挙げた試合はひとつもない。
松木はこの日の福岡戦を「いろいろ分析した上で、3バックがすごく強力な選手たちで、自分たちが関わりながらウイングのところで起点を作ろうと思っていたけど、うまくそこを作ることができなかった。うまくゴール前に人数をかけることができなかった」と振り返った。さらに「うまくいかないことも、それもサッカーのひとつ。うまくいかなかったところをさらに修正して次の試合に臨めればいい」と、ずっと難しい顔をしていた。
決して松木1人が悪いわけではない。しかし、この日の松木はミスが多かった。コントロールミスやパスミスでボールロストし、反撃を食らう。松木がミスしなければ決定機につながったであろうシーンが、5回や6回はあった。ミスが多くなれば、攻撃のリズムが崩れる。ボールの動きがギクシャクとしてしまい、最後まで福岡の組織的な守りを崩すことができなかった。
松木の持ち味は強靱(きょうじん)なフィジカルをベースにしたハードワークとボール奪取力だ。相手がボールを持っているときやルーズボールに対して無類の強さを誇る。だが、いまはそれに加えて展開力と突破力を求められている。3トップの後方にポジションを取り、ワイドに動きながら4バックと2ボランチで奪い取ったボールを引き出す。そして3トップへ効果的なボールを供給し、相手の守備を崩す。チャンスとみれば自らドリブルして突破を試みる。
ただ、現段階では強固な守りをぶっちぎるほどのスピードはない。後方からのパスを受け、前線に決定的なパスを繰り出す能力も発展途上だ。J1・3年目の21歳。それなのに、あまりに多くのものを求められている。
攻撃的な役割を課せられながら今季は2ゴール。5月11日の柏戦(味スタ)以来、ゴールがない。1年目、2年目は下がり目のポジションで守備重視の役割を求められていたが、いまは攻撃でも重要な役割を果たさなければならない。ゲームキャプテンは任されるわ、攻撃をつかさどる攻守のかなめ役も任されるわ…。仕事の中身は百戦錬磨のベテランな並みだ。
潜在能力が高く、それだけクラモフスキー監督の期待値も高いということなのだろうが、できることなら、もう一つ後ろのポジションで、ボールを奪って自在に攻撃参加する松木をみてみたい。あまりに仕事が多すぎて、楽しそうにサッカーをしているように見えないところが悲しい。
◆大塚浩雄 東京中日スポーツ編集委員。ドーハの悲劇、94年W杯米国大会、98年W杯フランス大会を現地取材。その後はデスクワークをこなしながら日本代表を追い続け、ついには原稿のネタ作りのため?指導者C級ライセンス取得。40数年前、高校サッカー選手権ベスト16(1回戦突破)