中国、欧州「EV戦争」で報復 標的はフランス 輸入ブランデーを不当競争で調査
中国商務省は5日、欧州連合(EU)産ブランデーが不当な安価で輸入されている疑いがあるとして反ダンピング(不当廉売)調査を開始すると発表した。EUが昨年秋、中国製の安価な電気自動車(EV)に対して補助金調査に着手したことへの報復措置とみられ、ブランデーの主産国フランスが標的となった。
中国商務省によると、調査は中国酒業協会の申し立てを受けて行われ、原則として1年間で終了する。民間調査会社によると、中国の輸入ブランデーは99%をフランス産が占める。
EUでフランスは、「EV保護主義」の先鋒となってきた。EUによる補助金調査では、自動車大国ドイツが慎重な姿勢を示す中、フランスが強く後押しした。マクロン大統領は「フランスを欧州一の環境車生産国にする」として国内産業育成を進めており、安価な中国製EVに警戒感を示す。先月、EV購入に最大7000ユーロ(約110万円)を支給する国内制度を改定した際には、中国製輸入車を対象から外した。
EUは、中国政府による不当な補助金支給が裏付けられれば、中国製EVへの相殺関税の導入を辞さない構え。先月には、中国のバイオディーゼル燃料についても反ダンピング調査の開始を発表した。
仏メディアによると、ブランデー主産地である仏西部コニャックの製造者組合からは「EUと中国の産業戦争の巻き添えになった」との悲鳴が出た。中国はオーストラリアとの関係が悪化した2020年、ダンピング制裁として豪州産ワインに最大218%の高関税を課している。
環境産業をめぐるEUと中国の貿易摩擦では、13年にもフランスが標的となった。EUが中国製の太陽光パネルに反ダンピング関税をかけようとしたのに対し、中国は欧州産ワインへの報復関税導入を示唆した。フランスのワイン業界に不安が広がり、EUは最終的に中国との価格交渉で妥協を受け入れた。