苦境の中国、融資の減少に表れる経済問題の深刻さ
苦境の中国、融資の減少に表れる経済問題の深刻さ
中国の経済運営の失敗を示す残念な事実がまた1つ明らかになった。融資が減少し続けている。これは中国が抱える経済・金融問題が深刻であることをはっきり示している。国民が望むような、そして外交面での壮大な野望を果たすのに必要とする成長を取り戻すには、中国政府はこれまで以上に経済・財政のテコ入れに動かなければならない。
中央銀行の中国人民銀行(PBOC)はこのほど、1-3月期の銀行とノンバンクを合わせた融資、PBOCがいうところの「社会融資総量」は12兆9300億元(約273兆円)だったと発表した。前年同期比で約11%減、額にして1兆6100億元少ない。ほぼすべて国営である銀行は9兆4600億元の融資を行ったが、こちらも前年同期から大幅減だ。すべての数字がエコノミストの予想を下回った。
政府は融資の減少を懸念するはずだ。資金の調達は経済成長を推進するのに必要な動きだ。PBOCが金融市場に十分な資金を供給している中での減少であるため、特に悩ましい。PBOCによると、3月までの1年間で広義のM2は8.3%増とそれなりに急成長した。2月までの1年間の8.7%増には及ばなかったが、それでも増えていることに変わりはない。だが、企業や世帯への融資は減少の一途だ。融資の停滞は供給ではなく需要の不足を反映しているのは明らかで、この事実は経済問題の最も根本的な部分だ。
こうした事態は主に不動産危機が発端となっている。2021年に不動産大手の恒大集団(エバーグランデ)の経営危機が表面化して以来、事態は一層深刻になっている。恒大集団をはじめとする大手不動産企業の経営危機は建設を落ち込ませただけではない。人々が不安を募らせたため、住宅販売も低迷した。こうした状況で際立って悲惨なのはアパート購入のローンを抱えている人たちだ。これらのアパートは不動産企業の経営難で完成しないかもしれない。
金融問題はさらに広範にわたる。恒大集団をはじめとする多くの不動産企業の経営危機は金融全体の機能を損なっている。不動産企業の不振は怪しげな負債を残している。さらに、まだ完成していないアパートの代金を前払いした人々の多くが、購入のために組んだ住宅ローンの支払いを拒否し、銀行などは怪しげな債務をさらに抱えている。
先行き不透明な状況で金融機関は潜在的な融資先の財政が健全かどうかを少なからず警戒している。こうした不信感は金融機関間の取引や通常の業務での慎重な姿勢にもつながっている。米国でも似たようなことが起こった。2008〜2009年の金融危機のときだ。つまり、当時の米国と同様、現在の中国では経済成長を支える金融市場の力が弱い。
PBOCの金利引き下げも解決策となっていない。過去1年ほどの間にPBOCは5回の利下げを行った。だがいずれも小幅だった。例えば、主要指標の1つであるローンプライムレートは、わずか0.4ポイントしか引き下げられていない。同時期に中国は年2%前後の緩やかなインフレからデフレに転じていることを考えると、PBOCの利下げでは利下げ政策を開始した時よりも金融市場の金利は実質上昇したことになる。これは借り入れにつながらず、実際、借り入れを阻む要因となっている。政府の金融政策が経済活動の活発化につながらないのも無理はない。
PBOCが状況に応じて大胆な措置を取るとしても、政府は不動産危機に直接対応する必要がある。2021年に問題が発生した時点ですぐさま対応すべきだった。昨年まで行動を起こさなかったため、その間に金融市場は前述した通り弱体化した。問題発生後、例えば販売済みの未完成アパートの建設を政府がバックアップすると発表するなど、何らかの対応をただちにとっていれば、不動産企業の破綻が金融に及ぼす悪影響を完全にとまではいかなくてもある程度抑制することはできただろう。
だが、政府は何の対応もしなかった。昨年末になって、当局が未完成のアパートやその他の微妙な開発物件への支援を打ち出したが、充てた予算はあまりにも少なかった。その額は恒大集団の最初の損失の5%をかろうじて上回るほどで、恒大集団に続いて経営難に陥った不動産会社の負債額にもはるか及ばない。これだけを見ても、中国はまだしばらく苦境から抜け出せなさそうだ。
(forbes.com 原文)