続「光る君へ」外伝 衝撃だった「紫式部と藤原道長のラブストーリー」源氏物語の作者本人が…歌のやり取りを見ても「相思の関係」はあり得る
NHK大河ドラマ「光る君へ」で、紫式部を演じる吉高由里子(左)と、藤原道長役の柄本佑=京都・平安神宮
今年のNHK大河ドラマは、舞台が平安時代で、タイトルが「光る君へ」だと聞いたとき、「ほほう、今年は源氏物語の世界か」と早合点した。「あの物語の世界」が毎週、絢爛(けんらん)豪華に展開されるのだろうなと、勝手に想像してしまっていた。
加えて、脚本は、世間の誰もが認めるラブストーリーの名手、大石静さんである。
となれば、あの「源氏物語」の、あの「いくつもある男女関係」の中から、大石さんは誰と誰の組み合わせの、どういう話の展開をするだろうかと、それはそれは心弾む思いで、あれこれ思いをめぐらせていた。
だが、始まってみると、この「光る君へ」はラブストーリーではあるけれど、何と源氏物語の作者本人が、そのラブストーリーの当事者だった。しかも、そのお相手が、誰あろう、あの「藤原道長」だったという衝撃のストーリー展開に、まず、私は度肝を抜かれたのだった。
でも、冷静になってよく考えれば、これはなるほど、あり得ない話ではなかったのだ。事実、2人はともに好意を抱き、恋絡みの歌を送ったり、返したりしていた。
夕刊フジで今年1月に連載した「『光る君へ』外伝」で、私は2人の関係について、「道長は何と、紫式部にアプローチしていたという」「彼女の方からその誘いを断った」と、『紫式部日記』に記述があると書いた。
ただ、道長が源氏物語の大ファンであり、「早く、続きを見せよ」と、執筆中の紫式部の部屋に断りもなしに入ってくることがあったことは事実だ。つまり、道長は紫式部のいる部屋への出入りが自由だったのだ。
といっても、それは道長の権力乱用で、2人の身分の差は歴然だから、紫式部は「来ないで」「来るときはノックして」とは言えない。本当はイヤだけど、はっきり言えない彼女の辛さ…なんて私は思っていた。
ところが、歌のやり取りを見ても「相思の関係」はあり得る。まして当時、大貴重品だった(原稿用)紙の供給源としての道長の存在は大きかった。その意味でも、紫式部にとって道長は大切だった。
ところで、大河ドラマで、道長は彼女のことを「紫」とも「式部」とも言わない。「まひろ」と呼ぶ。「まひろ」って何だ? 詳しくは次回。
■松平定知(まつだいら・さだとも) 1944年、東京都生まれ。早稲田大学を卒業後、69年にNHK入局。看板キャスターとして、朝と夜の「7時のテレビニュース」「その時歴史が動いた」などを担当。理事待遇アナウンサー。2007年に退職。現在、京都芸術大学教授などを務める。著書に『幕末維新を「本当に」動かした10人』(小学館101新書)、『一城一話55の物語』(講談社ビーシー)など多数。現在、アマゾンのオーディオブック「Audible(オーディブル)」で、北方謙三著「水滸伝シリーズ」(集英社刊)などの朗読作品を配信中。