米軍「飢餓作戦」で海上封鎖、海中の機雷で船8隻が沈没…姫島周辺での「埋もれていた歴史に光」
姫島の戦史について語る野崎さん
大分県内の戦史を研究する民間グループ「豊州戦史研究会」(別府市)は、戦時中の姫島村について調査、研究した「姫島戦史紀行」を発行した。周辺海域で行われた米軍の海上封鎖作戦についての研究などが1冊に収められており、野崎哲司代表(49)は「村史にもほとんど載っていない、埋もれていた歴史に光を当てられた」と手応えを語った。(石橋龍馬)
調査は昨年7月~今年2月、野崎さんら会員5人が行った。国立国会図書館や県公文書館などで資料を集め、昨年10月には島に渡って現地調査も実施した。
戦時中、周防灘や姫島周辺海域では物資の補給を断つ目的で米軍が海中に機雷を敷く「飢餓作戦」が行われた。野崎さんは米軍の資料から、作戦に関する記述を発見し、論文にまとめた。
論文では、少なくとも1945年3月末~6月に3回にわたり、計約340個の機雷が設置されたことや、民間を含む8隻の船が沈没したことなどを明らかにしている。
また、姫島灯台に残る機銃掃射とみられる痕跡や、米軍の報告書からまとめた姫島空襲、旧日本軍の人間魚雷「回天」の輸送中の座礁事例などについても言及している。
冊子はB5判で全76ページ。貴重な地質を保全し、観光や教育に生かす「日本ジオパーク」の一つとなっている姫島の調査・研究事業の一つとして、昨年度、村や県でつくるおおいた姫島ジオパーク推進協議会の助成を受けた。
100部を発行し、県立図書館をはじめ、県内約20か所の図書館や大学などに寄贈した。一部の図書館では貸し出しもしている。
野崎さんは「ジオパークとして注目される姫島に、さまざまな戦史が残っていることに驚いた」とし、「今回の調査で新しく得られたこともあった。今後も姫島の戦史について深く掘り下げていきたい」と語った。
研究の成果は、研究会が7月28日に別府市の市公会堂で開く発表会でも披露される。