盗撮の加害者、10代が増加…日常的にスマホで撮影し「罪悪感薄れる」
(写真:読売新聞)
兵庫県内で10歳代による盗撮が増えている。スマートフォンやSNSの浸透で動画・写真撮影が習慣化していることが背景とみられ、県警が摘発した件数はこの7年間で3倍近くに増加した。専門家は「若者にとってスマホの使用も、カメラを向けることも日常の行為。盗撮をしてしまうハードルはどんどん低くなっている」と警鐘を鳴らす。(上田裕子、新谷諒真)
県内の公立高で昨秋、男子生徒が女子生徒を盗撮する事案が発覚した。県教委の担当者は読売新聞の取材に対し、校内でそうした事案があったことは認めたが、「プライバシーの配慮から事案は公表しない」とし、不特定多数への被害やSNSを介した拡散の有無といった詳細については「明かせない」とした。
県警によると、10歳代による盗撮の摘発件数は、2016年に11件だったが、18年には22件と倍増、21年以降は30件前後で“高止まり”している。直近3年間(21~23年、計88件)の内訳を見ると、高校生が43人と半数を占めたが、中学生が23人、小学生も2人いるなど低年齢層にも広がっていた。
盗撮癖のある若者ら200人以上の更生を支援してきた臨床心理士で、神戸市北区選出の県議でもある中村大輔さん(40)は「学校や街中でもスマホを持ち歩くのが一般的になり、罪悪感が薄れている」と分析する。性的部位だけでなく、後ろ姿や日常の何げない姿が被写体となることも多いといい、「孤独やストレスを抱えている人は、撮影することで『女性とつながれた』と感じる。ストレスに悩まされる度、心の隙間を埋めるように繰り返してしまう」と指摘する。
子どもを「加害者」にしないため、保護者ができることは何か。
中村さんはスマホを買い与える際、「『他人の姿を勝手に撮影することは犯罪になる』とはっきりと伝えることが重要だ」と強調する。盗撮は、被害者との身体接触も会話などのコミュニケーションもないため、未成年ら社会性を身につける途上の世代がのめり込みやすいといい、「家族と何でも話し合える信頼関係を普段から築いておき、孤独にさせないことが一番の抑止策になる」とする。
■常習化や再犯防止に課題
10歳代で始めた「のぞき」をやめられず、成人になっても繰り返した被告(37)の裁判が昨年11月から今年1月にかけて地裁で行われ、再犯防止の難しさを感じさせた。
道路の側溝に隠れて女性のスカート内を撮影したなどとして性的姿態撮影処罰法違反などに問われ、懲役1年6月、保護観察付き執行猶予4年を言い渡された。公判では、盗撮を含むのぞき行為を「中学生の頃から1000回ほどやった」と明かした。
きっかけは友人たちとの「冒険ごっこ遊び」。溝の中に潜った際、偶然通りかかった女性のスカートの中が見えた体験を忘れられず、何度も側溝に潜るようになったのだという。同様の罪で罰金刑を言い渡され、再犯防止を目指して自助グループにも通ったが、「効果を感じられなかった」とした。
判決では「刑事責任は重いが、更生の意欲を示している」などとして執行猶予が付いた。「二度としないため、できることは何でもやりたい」と語る一方、「今も溝に入りたい」と強い執着心や未練を隠せない様子だった。