生成AIの規律と活用へ国際枠組み、岸田首相が創設表明…OECD閣僚理事会の開会式で演説
OECD閣僚理事会の開会式で基調演説をする岸田首相(2日午前、パリで)=守谷遼平撮影
【パリ=阿部雄太】岸田首相は2日午前(日本時間2日夜)、経済協力開発機構(OECD)閣僚理事会の開会式で基調演説し、生成AI(人工知能)の規律と活用の両立に向けた国際枠組みの創設を表明した。OECD加盟国を中心に49か国・地域が参加する。中国による経済的威圧などを念頭に、自由で公正な経済秩序の維持・拡大の重要性も訴えた。
閣僚理事会は2~3日にパリで開かれ、持続可能な世界経済の成長や、AIに関する国際指針「AI原則」の改定案などを議論する。今年は、OECD加盟60周年を迎えた日本が10年ぶりに議長国を務める。
首相は演説で、AIを巡り「人類共通の機会とリスクについて共通の志を持つ国で連携し、安全、安心で信頼できるAIを実現しよう」と呼びかけた。国際枠組みの名称は「広島AIプロセス・フレンズグループ」で、日本が昨年の先進7か国(G7)議長国としてまとめた生成AIに関する包括的な国際合意「広島AIプロセス」への賛同国で構成する。G7で取りまとめたAI開発者を対象とした国際指針や国際行動規範に基づき、各国が国内の制度などを整備する。
経済政策に関しては、貿易を制限して相手国に圧力をかける「経済的威圧」などの問題を提起し、「経済的強靱(きょうじん)性と経済安全保障を確保するための協力の強化が必要」だとして、同志国・機関との連携を推進する考えを示した。
OECDが非加盟国への関与を強化する重要性も挙げ、「価値観の一方的な押しつけではなく、成長・発展に向けた『伴走者』となるべく『共創』の考えに基づき相手に寄り添う」ことを強調。日本が「OECDとアジアの架け橋となり、OECDが世界経済を主導するための貢献を果たす」と宣言した。
首相は基調演説後、東南アジア諸国連合(ASEAN)を招いた会合で、今後3年間で800万ユーロ(約13億円)を支出し、東南アジア各国への専門家の派遣や研修などを実施するプログラムの新設を打ち出した。