物価高が直撃、フードバンクで食料不足…寄付減少の一方で利用者増加「支援の幅が制限される」
棚の上段部分が空いている倉庫。昨年の同時期はほとんどが食料品で埋まっていたという(1日、山梨県南アルプス市で)
生活困窮者などに食料品を支給する認定NPO法人「フードバンク山梨」(山梨県南アルプス市)で、食料品の寄付が不足している。物価高騰の影響で家庭からの寄付が減少している一方で、利用者は増加していることが原因で、同法人は夏休みに支給するための寄付の呼びかけを前倒しして実施している。
同法人は2008年設立。家庭で余ったり、食品工場で規格を満たさないために廃棄されたりする食料品を集め、生活困窮者や福祉施設などに配っている。15年からは、子どものいる貧困世帯への支援に力を入れ、夏休みと冬休みの期間中に集中的な支給を行ってきた。
今年も夏休みを前に準備を進めているが、今年3月の寄付量は2257キロで、昨年同期より2割以上少ない。4月分の寄付量も前年同期を下回る見込みという。
企業からの寄付量に大きな変化はないが、家庭からの寄付が大幅に落ち込んでおり、レトルト食品や缶詰などが不足しているという。米山けい子理事長(70)は「物価高騰が影響し、多くの家庭で寄付をする余力がないのかもしれない。支給できる量や品種が減って、支援の幅が制限されてしまう」と危機感を募らせる。
利用者が右肩上がりに増えていることも、食料品の不足に拍車をかけている。
夏・冬の長期休み期間中の利用者は、コロナ禍前の2019年は延べ1279世帯だったが、昨年は延べ2743世帯と2倍以上に増加した。法人の認知度が高まったこともあるが、物価高騰で生活に苦しむ世帯は増えているという。
昨夏に利用者約200人に行ったアンケートでは、ひとり親世帯が8割以上を占めた。ほとんどが母子家庭で、回答者の平均年収は164万円にとどまる。
県が2019年度に行った最新の調査では、県内の母子家庭数は8613世帯で、うち半数以上にあたる59・5%の母親が非正規雇用や無職となっている。
同法人では、夏休み前の毎年6月に家庭で余った食料品を持ち寄る「フードドライブ」の呼びかけを実施しているが、今年は開始時期を5月に前倒しし、期間も2か月に延ばした。
米山理事長は「子どもたちがおなかをすかせたり、栄養不足になったりしないよう、ご協力をお願いいたします」と支援を呼びかけている。
同法人への寄付は持ち込みか、郵送などで受け付けている。賞味期限が明記され、9月以降の未開封のものが対象となる。寄付は、営業時間(平日午前8時半~午後5時半)のほか、土日、祝日は施設の外に設置したロッカーで受け付ける。届け先は「南アルプス市徳永1603の1」、問い合わせは同法人(055・298・4844)へ。