実証機スリム活動再開 月が「昼」になり発電可能に 撮影も
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は29日、世界5カ国目の月面着陸に成功後、太陽電池に太陽光が当たらず活動を停止していた日本の実証機、「スリム(SLIM)」が月面活動を再開したと発表した。機体周辺が月の「昼」になって太陽光の向きが変わり、発電が始まったとみられる。着陸地点周辺の岩石の撮影も行っているという。
JAXAによると、スリムと地球との通信が28日午後11時に復旧。太陽電池が電力の供給を始めてスリムのシステムが再起動し、月面での活動を再開したことが確認された。送られてきた機体のデータから、観測用の特殊なカメラも稼働可能と分かり、周辺の岩石の撮影を実施。画像は順次、地球に届いている。
スリムの太陽電池が発電しなかったのは、エンジンの破損で姿勢が乱れ倒立状態で着陸し、上を向くはずだった太陽電池が西を向いたため。月の1日は地球の約27日に当たり、スリムが20日未明に着陸した月の赤道南側の「神酒の海」は「朝」だった。そのため太陽光は東から差し、機体西側で影になる太陽電池に当たらなかった。その後、「昼」になって太陽光の向きが変わり、発電が可能になったとみられる。
ただ、「昼」の月面温度は100度を超えるため、機器の半導体の損傷が予想され、正常な月面活動が可能なのは数日程度とみられる。また、2月に入ると周辺は「夜」となり闇に包まれ、特殊カメラでの撮影が困難になる。JAXAは「機体の状態を見守りながら、可能なかぎり月面活動を続けたい」としている。