保守王国が陥落、錦織さん「自民を許すか許さないかの選挙になった」…2度の首相応援も及ばず
衆院島根1区補選の応援演説に訪れ、聴衆に手を振る岸田首相(27日午後、松江市で)=東直哉撮影
衆院東京15区、島根1区、長崎3区の3補欠選挙が28日、投開票された。唯一の与野党対決となった島根1区(松江市など)では、立民前衆院議員の亀井亜紀子さん(58)が、自民新人の錦織功政さん(55)を破り、自民が強固な地盤を持つ「保守王国」を切り崩した。
当選確実の一報を受け、支援者らの大きな拍手に迎えられた亀井さんは、記者団から勝因を問われると、「自民党の裏金問題に対する怒りがベースにあった。すごく重い1票、1票だった」と語った。
竹下登・元首相らを輩出した島根県では、小選挙区制となった1996年の衆院選以降、全国で唯一、自民が県内全小選挙区の議席を独占し続けてきた。島根1区では昨年11月に死去した細田博之・前衆院議長が9回連続で当選していた。
亀井さんは2017年、21年に立候補したが敗北し、21年は比例復活も果たせなかったが、今回選では状況が一変した。自民派閥の政治資金規正法違反事件に対する批判や不満は強く、有権者から「変えてください」「お願いします」と相次いで声をかけられた。
対する錦織さんは、必然的に強い逆風にさらされることになった。痛手だったのは、政治資金規正法違反事件の中心だった安倍派で、会長を務めていた細田氏自身が批判の対象になったことだ。新人で知名度も高くない中、思うように有権者や団体の支持固めができず、錦織さんは後継候補なのに細田氏の名前には触れず、「政治改革の先頭に立つ」と強調した。
岸田首相も選挙期間中に2度も応援に駆けつけたが、自民への逆風をはね返せず、敗北が決まった錦織さんは「持てる力を振り絞ったが及ばなかった」と謝罪した。自民県連幹部は「今回は自民を許すか許さないかの選挙になり、『政治とカネ』のおわびばかりになってしまった」と肩を落とした。