「死闘」第47旅団のブラッドレー、1.5km先のロ軍T-80戦車を撃破 米から補充届く
「死闘」第47旅団のブラッドレー、1.5km先のロ軍T-80戦車を撃破 米から補充届く
野党共和党の半年以上にわたる妨害の末、米議会は4月23日、610億ドル(約9兆5000億円)近くをウクライナへの追加支援に充てる予算案をようやく可決した。翌日にはジョー・バイデン大統領が法案に署名し、米国防総省は数時間後に重要な弾薬や車両など10億ドル(約1560億円)相当のウクライナ向け軍事援助を発表した。
この軍事援助に、数量は未公表だがM2ブラッドレー歩兵戦闘車が含まれていたのは理由のないことではなかった。ウクライナ軍でM2を運用する唯一の部隊である第47独立機械化旅団は、ウクライナ東部アウジーウカの廃墟の西方で、はるかに規模の大きいロシア軍を相手に必死の防衛戦を戦っていた。
新たな弾薬と交換用のM2が届き、装備を十分に補充した第47旅団は、ロシア軍の攻勢を鈍らせている。どのようにロシア側の進撃を食い止めているかは、このほどウクライナ軍のドローン(無人機)がカメラに収めた劇的な交戦に示されている。
8日夜、M2の砲手はアウジーウカの北西にあるノボポクロウシケ村から畑を越えて1.5kmかそこら離れた場所に、ロシア軍のT-80戦車を見つけた。M2は有線誘導のTOW(トウ)対戦車ミサイルを1発放ち、重量43t・乗員3人のT-80を撃ち抜いた。「戦車の破壊屋、ブラッドレー」。ウクライナ国防省はそう戦果を誇っている。
ロシアがウクライナで拡大して2年3カ月目に入る戦争で、今回の撃破は最も遠距離から戦車が撃破された例のひとつになった。もっとも、1980年代から米陸軍の主力歩兵戦闘車として活躍してきたM2の支持者たちにとっては、驚くほどのことではないだろう。「ブラッドは戦車ではないが、戦車キラーにはなれる」。1991年の湾岸戦争の「砂漠の嵐作戦」で、M2の偵察戦闘車タイプであるM3の部隊を指揮したマーク・ハートリング米陸軍退役中将はそう説明している。
重量33t、乗員10人(うち歩兵7人)のM2は、この戦争で使われている歩兵戦闘車では最高のものと言ってよいかもしれない。ウクライナ軍の精鋭部隊である第47旅団では、各30両の車両を運用する3個大隊に配備されていて、歩兵を戦闘に投入し、続いてみずからも戦闘に参加するのが主な任務となっている。攻撃時には、精度の高い25mm機関砲でロシア軍の兵士や車両に対して射撃を行う。
M2は一般的な戦車より10〜20tは軽い。戦車に比べて装甲がはるかに薄いのが主な理由だ。したがって、ロシア軍の戦車との接近戦では長くはもたないかもしれない。一方、遠距離戦では精密な照準器やTOWを装備するM2が有利になるだろう。とりわけ夜間は、優れたサーマルビジョン(熱赤外線可視化)機器のおかげで、敵の戦車を相手に見つけられる前に発見できるかもしれない。
国防総省もかねて、M2の戦車撃破能力はウクライナ軍に高く評価されるのではないかとみていた。「ブラッドレーは具体的に言えば、非常に強力な対装甲能力を備えています。この能力は、ロシアがウクライナに配備しているあらゆる装甲能力に対して有効でしょう」。ローラ・クーパー国防副次官補は昨年、米国がウクライナの戦争努力向けにM2約200両の供与を表明した直後の記者会見で、こう語っていた。
実際、第47旅団のM2は、歩兵を支援する任務の合間に「戦車狩り」の任務にもあたってきた。昨年夏、南部であった激しい小競り合いでは、1両でロシア軍のT-72戦車2両を立て続けに撃破したこともあった。
第47旅団は1年間、休まずに戦闘を続けている。その結果、M2大隊もかなり損耗している。オランダのOSINT(オープンソース・インテリジェンス)分析サイト、オリックス(Oryx)の集計によれば、ブラッドレーはこれまでに37両が撃破され、ほかに数十両が損傷している。第47旅団が先月、アウジーウカの西方で攻勢を続けるロシア軍と戦ったときには、M2が不足していた。
米国から新たなM2が届くにつれて、そうした状況は変わりつつある。第47旅団が前線の安定化に努めるなか、M2が遠距離からロシア軍の戦車を仕留める光景は今後も見られそうだ。「さらに任務に励もう!」と第47旅団は決意を示している。
(forbes.com 原文)