「根性論を持ち込む上司」に部下が絶対言ってはいけない「言葉」
根性論を押しつける、相手を見下す、責任をなすりつける、足を引っ張る、人によって態度を変える、自己保身しか頭にない……どの職場にも必ずいるかれらはいったい何を考えているのか。発売たちまち4刷が決まった話題書『職場を腐らせる人たち』では、ベストセラー著者が豊富な臨床例から明かす。
どうすれば現実を見てもらえるかは難問
自覚がない人を変えるのは至難の業だ。われわれが変わらなければならないと自分で思うのは、何らかの不具合や問題が生じていると自覚したときだけである。その自覚がないと、わざわざ変わろうと思うわけがない。とくに年齢を重ねるほど、変化を嫌がるようになるし、自分を変えるのも億劫になる。
しかも、マニック・ディフェンスによって軽躁状態になりやすいのは、目の前の現実を直視したくなくて現実から逃避しがちな人である。だから、自分の現在の状態をきちんと見つめて把握し、気分が高揚しすぎて多弁・多動になっていると自覚することなど到底できない。
その結果、不正行為に手を染める上司もいる。某保険会社で、日々部下を叱咤激励し、自分も営業電話をかけまくり、気合と根性の重要性を延々と説いていた50代の営業部長が運転免許証や保険証などの本人確認書類を偽造して、保険契約を捏造していたことが発覚した。顧客に経済的損害を与えたわけではないが、実体のない保険契約を結んで、部下が実績をあげているように見せかけていたのだ。
この部長は、自分の部署がなかなか契約を取れないという現実を受け入れられなかったのだろう。もしかしたら、実績をあげられないと自分のポジションを失うのではないかと喪失不安にさいなまれていたのかもしれない。
そこで、マニック・ディフェンスによって乗り越えようとしたものの、気分の高揚と活動性の亢進によって、やりすぎともいえる不正行為にまで手を染めてしまったわけである。
こうした上司には、たとえ見たくない現実であっても目を向けるようにしてもらうしかない。少しでも現状を認識してもらうために、できるだけ具体的な数字や根拠を提示し、「業界全体を見ても、こうなっている」「数字が落ちているのは長期的な傾向」などと一般的かつ客観的な意見として伝えるべきだ。「あなたのやり方は現実的ではない」「あなたは現実を見ていない」などと口が裂けても言ってはいけない。