「川勝平太氏に再出馬要請も…」リニアが争点の静岡県知事選で“川勝批判”がほとんど聞かれないワケ
いまだ静岡県内では“待望論”も上がる川勝平太前知事だが……
衆院3補欠選挙の投開票が4月28日に行われ、自民党が候補者擁立を見送った選挙区を含め全敗を喫した。政治とカネの問題や増税など、自民党への逆風が吹き荒れている。
国政選挙が終われば、お次は5月9日告示、同26日投開票の静岡県知事選に注目が集まる。川勝平太前知事の辞職に伴い行われるもので、現時点で3人が立候補を表明している。
争点は言わずもがな’27年の開業が見送られたリニア中央新幹線の是非だ。
元副知事の大村慎一氏と元浜松市長の鈴木康友氏はいずれもリニア「推進」を強調。遅れて立候補を表明した共産党静岡県委員長・森大介氏はリニアに加え、浜岡原発にも「NO」を突き付けている。
「現時点で大村氏と鈴木氏の一騎打ちの様相。ただ、どちらもリニア容認派で県民の盛り上がりは欠けます。あれだけ連日ニュースで繰り返していた衆院3補選の投票率が低調に終わったことから、知事選も期待はできません」(地元メディア関係者)
大村氏はリニア問題に関して、対話による解決を訴えているが、具体策は示していない。
鈴木氏もまた
「環境との両立を図る」
と川勝氏の支持者を意識した発言を繰り返しているが、態度は流動的だ。
森氏はやはり共産党出身であることが最大のネックとなっている。
そんななか、静岡県内の市民団体らが、辞表を提出した川勝氏の再出馬を求める署名活動を行っている。発起人は市民団体『南アルプスとリニアを考える市民ネットワーク静岡』と大井川流域の住民らでつくる団体『大井川の命の水を守る62万人運動』のメンバーら約10人。団体側は
「川勝知事は国やJRと対峙して、県民にとっての命の水や環境を守ってくれた。その姿勢をとても評価している」
とし、先の大村氏と鈴木氏がリニア推進派であることから、川勝氏の再出馬を求めている。
「団体側と面会した川勝氏は『評価していただけてありがたい』と述べましたが、再出馬については否定的。全国ニュースでは失言ばかりが取り上げられる川勝氏ですが、県内では予想以上に支持者が多いのもまた事実です。
候補者が川勝氏を真っ向から否定しないのもそのため。川勝支持者の票をより多く取り込んだほうが勝利するでしょう」(地元テレビ局関係者)
リニアをめぐっては、工事による大井川の流量や水質の変化が懸念されている。JR側はボーリング調査を徹底的に行い、懸念の解消に努めているものの
「事細かに情報を把握している県民は少ない。いまだに川勝氏が訴えた『リニアが通れば水が終わる』というザックリとしたイメージを持っている人のほうが多い」(前出の地元メディア関係者)
静岡にリニアの停車駅を設けないこともあり、いまだ県民からは
「リニアを通すメリットが思い浮かばない」
「別になくてもやっていける」
といった声が驚くほど多いのだ。
「それを受けての川勝氏への再出馬要請だと思います。リニア開通は国家プロジェクト。他県からすれば、静岡県がダダをこねて国家事業を止めているという印象を持っていると思いますが、住んでいる人からすれば『いらないものはいらない』なのです」(同・地元メディア関係者)
辞職してもなお、影響力を持つ川勝氏。さすがに選挙戦や特定の候補者に口を出すことは控えているようだが、“失言”でならした人物だけに今後どうなるかはわからない。
リニアの命運を握る静岡県知事選から目が離せない――。