「定年まで働くつもりでしたが…」スポーツくじBIGで6億円、高額当選者が明かした「あえて仕事を辞めたわけ」――2023年読まれた記事
2023年(1月~12月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。ライフ部門の第1位は、こちら!(初公開日 2023年10月7日)。
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普通のサラリーマンが「億万長者」に――ファイターズファンさん(50代男性、仮名)はスポーツくじ「BIG」で1等6億円が当たった。
高額当選者の「その後」はいかなるものか。早期リタイアを決めた経緯から現在の暮らしぶりまで、話を聞いた。(全2回の2回目/ 最初から読む )
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サラリーマン時代の年収は?
――昨年末に6億円当選されるまでの暮らしぶりは、どのような感じでしたか。
ファイターズファンさん(以下、ファイターズ) 普通のサラリーマンで、いちおう管理職といいますか、課長職についていました。
――差し支えなければ、年収はどのくらいでしたか?
ファイターズ 750万円くらいでしたね。実は、私は大学時代に留年に留年を重ねて、卒業までにかなり時間がかかったんですよ。バブル期に大学に入学して、卒業する頃には就職氷河期。もう浦島太郎のような状態で……なかなか勤め先が決まらずに苦労して、ようやく小さな会社にパートとして採用してもらえました。
――ストレートで卒業した同級生はバブル入社ですよね。
ファイターズ みんな内定をもらった後、囲い込みで逆接待されていましたね。かたや私はパートから始まって、一生懸命働いて何年もかかって正社員になり、徐々に仕事を任せてもらえるようになって。勤め先の会社も東証二部上場、一部上場という感じで大きくなっていきました。
そういう経緯もあって、私を採用してくれた会社に恩返しをしたい気持ちも強かったですし、生活のためにはお金を稼ぐ必要があるので定年まで働くつもりでした。その後も再雇用制度を使って65歳までお世話になろうとも思っていました。
早期リタイアした理由
――しかし、退職を決意されたのですよね。どういう心境の変化があったのでしょうか。
ファイターズ 家族と過ごす時間をもっと大切にしたいと思ったのが一番の理由です。特にここ数年は本当に仕事に忙殺されていて、休日でも会社からの呼び出しが頻繁にありました。
忙しい日々の中でささやかな楽しみと言えば、妻とランチに出かけることでしたが、タイミングが悪いことに、いつも注文した料理が出てきたタイミングで会社から電話が入るんですよね。
何だかんだと電話で対応して、やっと席に戻れた頃には、妻は先に食べ終えていて、私の分の冷え切ったランチだけが残っている、みたいなことがしょっちゅうでした(苦笑)。
――6億円当選時の年齢もひとつの要因でしょうか。ファイターズファンさんの御年ですと、あと数年で定年退職を迎えることになります。
ファイターズ そうですね。仮に定年まであと6年として、一生懸命働いても稼げるのは4000万~5000万円で、実際の手取りは3000万円程度になるのかな。
でもBIGに当選して、その20倍近いお金を手にすることができた。老後のお金の不安がなくなって、定年まで働くために使うはずだった時間を別のことに充ててもいいのかなと思えたんですよね。
6億円の管理術
――インタビューの前編では「6億円のうち、4億円ほど株式投資に充てた」と伺いました。
ファイターズ 株に4億と債券に1億円ほど使いましたが、その配当利回りが4~5%ありますから、年間で2000万ぐらい入ってくる計算です。当然浮き沈みのリスクがあるわけですが、とりあえず働かなくても生きていけるポートフォリオを作れたので、今は安心しています。
――なるほど……夢のような生活ですね。
ファイターズ 資産5億円以上の人を“超富裕層”と呼ぶらしいですが、そういう方々って、お金をきちんと管理していれば、黙っていても資産がどんどん増えていくものなんだなと思いました。とはいえ、まだ自分がそこに属しているとは、とても信じられないです(笑)。
あと、投資を始めて「そうなんだ!」と思ったのが、株の配当や売却益といった金融商品で儲けが出る場合には、約20%しか税金がかからない。だから配当金が2000万とすると、手取りが1600万円になるんですよね。まだまだ知らないことばかりなので、賢く運用するために勉強する日々です。
――仕事に未練はないですか。
ファイターズ 仕事が好きでしょうがない人とか若くて働き盛りの人だと、リタイア後に鬱っぽくなるとか孤独に苛まれるとかって聞きますが、今のところ私は楽しく生活させてもらっています(笑)。
6億円当選後の暮らしのリアル
――早期退職をした今、どんな生活を?
ファイターズ 退職して間がないこともあって、リズムもまだ安定してなくて。朝起きたら午前中は株の状況を見たり、ニュースを読んだりして過ごしています。
あとは最近、運動不足解消のためにジムに入会したんですよ。といっても月額3000円くらいで、普段着のまま運動できる気軽なやつです。なので、午後は妻と一緒にジムに行ってちょっとトレーニングするとか。
で、夕方、一緒にスーパーに買い物に行って夕飯を作って片付けて、みたいな感じです。
――ハイブランドの洋服を買うようになったとか、外食の回数が増えたとか、日常生活に変化はありませんか。
ファイターズ それはないですかねえ。そもそも、東京って外食が高いですよね。私は転勤族で地方暮らしが長かったので、東京は本当に物価が高くて驚いています。大阪には7年ほどいましたが、2人で思う存分食べたり飲んだりしても1万円以下という居酒屋が当たり前にありましたから。
――お名前が「ファイターズファン」だけに、野球観戦の回数が増えたとかは?
ファイターズ あ、それはそうですね。この前も1週間ほど北海道に行って、エスコンフィールドで試合を観てきました。
それから、妻と一緒にはじめて船旅もしました。以前話題になったあの「ダイヤモンド・プリンセス号」で、一番安い部屋は1泊1万ぐらいで泊まれるんですよ。「こんなに安いの?」と思って、そこは少し贅沢してちょっとアップグレードしました(笑)。
「いきなり大金を持つと怖い思いをするけど…」
――マンションを買ったり早期退職したりしたことで、周りから「なにかあったの?」と聞かれないですか。
ファイターズ 詳細は伏せていますが、「まとまったお金が入ったので会社は辞めたよ」みたいなことは言ってます。なかには金額についてさらに突っ込んで聞いてくる人もいるので、「定年まで働いて退職金をもらった額よりまとまったお金が入ったから、家族と過ごす時間をつくることにした」と答えています。
6億円の使い道について相談した前職の上司も、いまだに内緒にしてくれているようです。一度だけ「おまえのこと誰かに言いたくてしょうがなくてさ、息子にだけは言っていい?」とは聞かれましたけど(笑)。
――今回、身バレの可能性もある中で取材を受けようと思ったのはなぜでしょう。
ファイターズ 私自身、高額当選者の体験談を前に読んだことがあって、すごく参考になったんです。その方は、仕事は辞めずに続けていましたが、自分にとって勉強になることがたくさんありました。
だから自分も、今後スポーツくじや宝くじが当たった人に向けて、いきなり大金を持つと怖い思いをするけど、その恐怖は勉強することで解消できることや、将来に対する不安のほとんどはお金で解消できるよと伝えることで、誰かの役に立てたらいいなと思ったんです。
スポーツくじ当選金の「残高」
――ちなみに現在の総資産額、6億円の残高はどれくらいですか。
ファイターズ 総資産額で言うと、株価が買った時よりもぐんと上がったので、増えているという状況です。ものすごく増やしたいというわけではないので、家族2人で楽しく暮らして、死ぬまでに使い切るのもそれはそれでいいのかな、という感じです。
――まだスポーツくじ「BIG」は買い続けていますか。
ファイターズ 当選後、3ヶ月経ったくらいで卒業しました。BIG購入のきっかけになった占星術的にも、私の金運はもう終了らしいので、じゃあこれでおしまいにしよう、となりました(笑)。
――今回の高額当選で、「運」を使い切ってしまったような感覚ってありますか。
ファイターズ これだけの大金をボンっともらえるなんて、自分はツイてる人間としか思えないんですけど、母からは、「おまえはあれだけ頑張っていたのに、ずっと安い給料でやってきたんだから、これぐらい当たってもバチは当たらない」と言われて。
事情を話したごく少数の知人にも「大変なことがあっても真面目に生きているといいことあるんだね」とか、「当たったのがおまえで良かったよ」と言われるので、「あれ? 俺ってよっぽどツイてない人間だったの?」とも思いました(笑)。だからわからないですね。自分に運があるのかどうかというのは。
2023年の読まれた記事「ライフ部門」結果一覧
1位:「定年まで働くつもりでしたが…」スポーツくじBIGで6億円、高額当選者が明かした「あえて仕事を辞めたわけ」
https://bunshun.jp/articles/-/70546
2位:「結婚は真剣に考えていた」深田恭子(41)と破局した実業家が初めて明かした‟深キョンへの燻る思い”
https://bunshun.jp/articles/-/70545
3位:「親父は朝鮮戦争で死んだ」はずが…草刈正雄(71)がNHK『ファミリーヒストリー』で元米兵の父と“初対面”を決意するまで〈娘たちから「パパ、やれば」〉
https://bunshun.jp/articles/-/70544
4位:有り金が底をつき、オフィスの水まで有料に…窮地のイーロン・マスクがテスラ社員に送った“一本のメール”「人類の未来のために…」
https://bunshun.jp/articles/-/70543
5位:《制服をハサミで切り裂かれ、教科書は水没》父親の日常的暴力と性虐待の末に30歳で弟は自殺した 姉が実名告発
https://bunshun.jp/articles/-/70542
(小泉 なつみ)