「太郎さんは、気持ち悪がっていると思います」奥様の高田万由子さんに間違えられたことも…なぜか“葉加瀬太郎そっくり”になってしまった「オーボエ奏者」の奇妙な人生
「奥様も間違えるってことは、よほど似ているのかなと思いました」
初めてオーボエに触れたのは、14歳。その後、桐朋学園大学に進学しプロとして活躍。現在は東京交響楽団に所属し、母校の桐朋学園大学の講師も務める最上峰行(もがみ・たかゆき)さんはなぜ、ある日を境に尊敬するヴァイオリニスト・葉加瀬太郎さんに似てしまったのか……?
インタビュー前編では、葉加瀬太郎さんに「似てしまった理由」や「太郎さん本人、奥様の高田万由子さんなど周囲の反応」について聞いた。(全2回の1回目/ 後編 を読む)
オーボエ奏者の最上峰行さんはなぜ「葉加瀬太郎さん」に似てしまったのか…? ©釜谷洋史/文藝春秋
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「葉加瀬太郎に似てしまった男」の数奇な人生
――最上さんは、普段どんな活動をされているんですか?
最上峰行(以下、最上) オーボエ奏者として、都内のプロオーケストラ「東京交響楽団」に所属しています。オーケストラでは主にクラシック音楽を演奏していますが、スタジオミュージシャンとしてドラマや映画、アニメやゲームなどの音楽の録音に携わったりと、わりと幅広く活動しています。
――昔から「葉加瀬太郎さん」にそっくりだったんですか?
最上 太郎さんに似るようになったのは、ここ数年の話です。きっかけは2020~2022年にわたって同行させていただいたオーケストラツアーでした。僕と太郎さんの2人で演奏する曲があって、その大抜擢が嬉しくて。ツアーに出る前のリハーサルでは、「本番までに太郎さんに似せたパーマをかけてきますね」と冗談半分で話したりもしていました。
ところが、2020年に始まるはずのツアーがコロナで延期になってしまいまして……。再開するとは言われていたのですが、未曾有の事態に「もうステージに立てないんじゃないか」という不安もあったので、願掛けのような気持ちで髪を伸ばし続け、パーマもかけ続けていたんです。
――コロナも落ち着いて、2021年にようやく共演を果たしたときはどんな気持ちでしたか?
最上 髪もいい感じに伸びて、ツアーが終わる頃にはかなりそっくりでした(笑)。太郎さんのほうが僕より少し背が高いんですけど、背格好や横から見た姿が瓜二つだと言われたりしましたね。
――それから髪を短くしたりはしなかったんですか?
最上 ツアーをやりきったら切ろうとは思っていました。でも、まわりがあまりにも「似てる~!」と面白がってくれて。喜んでもらえると、嬉しいじゃないですか。だから、もっと太郎さんに似せてみようとヴァイオリンケースを買ったり、SNSに太郎さんとのツーショット写真を載せたりもしましたね(笑)。
――太郎さんに似せるためのポイントは一体どこでしょう?
最上 意識しているのは、パーマだけですね。太郎さんは普段メガネをしていませんが、僕は照明がまぶしいので掛けています。なので、クルクルのパーマをかけると太郎さんに似る。それだけですね。
――同じ美容院に行ったりとかは?
最上 さすがにそこまではしないです!(笑)
ついには“奥様の高田万由子さん”にも間違えられる
――街なかでも太郎さんに間違えられることが多いそうですが、初めて間違えられたときのことを覚えていますか?
最上 覚えていますよ。日比谷ミッドタウンでコーヒーを飲みながら読書していたときのことです。視線を感じて顔を上げたら、目を輝かせて近づいてくる外国人の方がいたんです。僕は英語がわからないんですが、それでも「ベリーフェイマスヴァイオリニスト!!」みたいなことを言っているのに気づいたんです。
もちろん誤解を解かなければいけないので、「ノーノー!!」と答えながら、僕がSNSに上げた太郎さんとのツーショットを見せました。「こっちの人があなたの知っているフェイマスヴァイオリニストだよ!」と説明してあげたのが最初でしたね。
――最初に間違えられたのは、外国人の方だったとは。
最上 太郎さんの知名度はやはり世界的なものなんだと再認識しました。あと、それ以外だと、乃木坂46のコンサートでも太郎さんに間違えられたことがあります。
その日はもちろんオーボエ奏者として参加したんですが、僕の顔が会場のスクリーンで大写しになったのを見た観客が「すげぇ! 葉加瀬太郎が出てるよ!!」とSNSに書き込んで話題を集めたことがありました。その後、コンサートマスターの今野均さんが「違います!」と訂正の投稿して下さったり……。
――太郎さんの偉大さがわかるエピソードです(笑)。
最上 最近は間違えられるだけじゃなく、イジられるようにもなりましたね。私立恵比寿中学のライブにオーボエ奏者として参加したときは、「今回は有名な方がオーケストラに来てくださっています。葉加瀬太郎さんです!」みたいに紹介されたり。
事前に何も知らされなかったから、「うわーきたー!」と焦りつつも、「オーボエ界の葉加瀬太郎です」と挨拶をして、その場を乗り切りました(笑)。
――ご自身でも「似てるなぁ」と思われますか?
最上 正直、自分ではそこまで似ているとは思っていません。ただ、奥様の高田万由子さんから間違えられたときは自分でも驚きましたね。太郎さんに同行したオーケストラツアーのときに、僕が楽屋から出たら「太郎くん!」って声をかけられて。
「あれ? 違う! 最上くんちょっと本当にやめてよ~」と言われました(笑)。奥様も間違えるってことは、よほど似ているのかなと思いました。
「太郎さんは、正直気持ち悪がっていると思います」
――この状況を太郎さんはどう思っているんでしょうか?
最上 面白がってくださってるとは思いますが、どちらかといえば気持ち悪がっていると思います。昨年春のツアー最終日に、太郎さんの衣装を真似て、ヴァイオリンケースを携えて会いに行ったら呆れ果てた様子でした(笑)。「もう本当になにやってるんだよ」って失笑されていましたね。
でもその後、葉加瀬太郎音楽祭にシークレットゲストとして呼んで頂いて、ステージで「そっくりさん演出」をしてくださったんです。太郎さんが「ひまわり」を演奏しようとしたときに、楽譜がないことに気づき一旦ステージ袖に引っ込む。出てきたと思ったら、オーボエを持った僕が登場して「ひまわり」を演奏するというユニークな演出でした。こうして尊敬する太郎さんからもイジっていただけるのは、とてもありがたいです。
〈 「いつまでも“そっくりさん”ではいられない」“葉加瀬太郎そっくり”になってしまった49歳・オーボエ奏者が語る「音楽家としての野望」 〉へ続く
(東 ゆか)