スズキ「スイフト」が4代目に! シャープな顔と安定性と低重心さを感じるデザインが魅力
5代目だけど4代目スイフトのワケ
スズキのコンパクトハッチバック「スイフト」が7年ぶりに刷新され、4代目に進化しました。
4代目の話に入る前に、少しだけスイフトの世代分けの話をしましょう。スイフトは、2000年登場の軽自動車ベースのものと、2004年に登場した小型の世界戦略車シリーズが存在します。このため、日本では通算すると5代目となるはずですが、新型は世界戦略車となったスイフトの後継なので、スズキは4代目として扱っています(2000年の初代はカウントされません)。なお、2代目は2010年、3代目は2016年に登場しています。
事実、世界に羽ばたいたスイフトは、走りにうるさい欧州市場でも認められるほどの実力者に成長しました。その志にも敬意を払うべく、スズキ同様に2023年12月発売の最新型を4代目として紹介します。
ラインナップは整理され3モデルに
スポーツグレード「RS」は消滅
歴代オーナーの期待を裏切らない走りの良さを見せてくれる新スイフトは、エントリーのエンジン車「XG」、中間グレードでマイルドハイブリッド仕様の「ハイブリッドMX」、そして、最上位のマイルドハイブリッド仕様の「ハイブリッドMZ」の3ラインナップになりました。
人気仕様だった「RS」は不在です。ここまで走りが良いのだから、スポーティーグレード「RS」の設定を期待したくなるのですが、現時点では予定なしとのこと。その点だけは残念です。個人的には、新型のモデルラインだと、持ち味のスポーティーさの訴求が弱いと思うからです。
もちろん、将来的には新型「スイフトスポーツ」の登場も期待されます。クルマ好きは、その展開まで待つのがベターかも。ただ性能、燃費、経済性を鑑みれば、「RS」的なグレードがあればエントリースポーツとしても魅力的にも思えますが。
それでは新型スイフトの実力を図るべく、最上位グレード「ハイブリッドMZ」を試乗し、そのレポートをお届けします。
若者を意識したエッジの効いたデザイン
2023年10月に開催されたジャパンモビリティショーにコンセプトカー「スイフトコンセプト」として、ほぼ市販車の状態で展示されたことも話題となった新型は、仕様とグレード構成をシンプル化。若々しいスタイルや走りの良さといった伝統を受け継ぎつつ、時代のニーズとして高まる「安全運転支援機能」や「コネクテッド機能」などが強化されました。
デジタル的な雰囲気を醸し出すエッジの効いたライトデザイン
高コスパの小型車として人気の歴代スイフトは、若者をターゲットに開発。このため、従来型もライバルに比べて、ユーザー年齢が10歳ほど若いというから驚きです。そのユーザーを惹きつける魅力のひとつが、若々しくエネルギッシュなデザインです。ただ、従来型デザインでは、走りのイメージが強すぎるという声もあったため、動的質感と安定感をバランスさせ、力強さよりも爽やかさを意識したものに。
だいぶイメチェンを図ったようにも感じますが、フロントマスクのレイアウトや尻下がりのルーフラインなど、先代の特徴をしっかり受け継ぐことで、スイフトらしさを演出しています。
新型スイフトのリヤ。リヤスタイルの方が従来型のイメージを色濃く受け継ぎます
ワイド化を図ったようようにも感じるデザインですが、全長こそ+15mmの3860mmとなりましたが、全幅1685mmと全高1500mm(※前輪駆動仕様)、ホイールベース2450mmは先代とまったく同じです。もちろん、新型も5ナンバーサイズのままです。
運転席を中心としたコクピットに進化し、ナビ&オーディオエリアも最上部に移設
シートに包み込まれるような運転席のデザイン
より進化したのが、インテリアです。歴代モデルもドライバーの運転しやすさを重視したレイアウトでしたが、新型では欧州車のように、ドライバーを包む込むようなコクピットデザインを採用。ナビやエアコンなどが備わるセンタークラスターが、運転席側に傾けられ、操作性を向上させています。さらにダッシュボードデザインは、2色使いとドアトリムとの連続性を持たせることで、広さと一体感を演出し、安心感のある空間となっています。
これにより質感の向上にも成功。メーターパネルは、伝統のアナログ2眼式を継承し、直感的に速度やエンジン回転数を確認できるようになっています。これはスポーティーなコクピットの演出であるとともに、誰でも運転しやすい環境作りでもあります。
視認性に優れるアナログ2眼式メーターパネルを継承。中央にインフォテイメントディスプレイを備えます
室内空間の広さは先代と同等ですが、前席のサイドサポートとヘッドレストを改良し、よりホールド性を向上させています。3名乗車の後席は、フラットな座面で乗車性にも配慮し、窮屈さを感じないスペースを確保。シートの作りがしっかりしているので、これならロングドライブでも疲れにくいでしょう。
見た目よりも快適な広さを確保したキャビン。後席の使いやすさも特筆すべきところ
ラゲッジスペースは、小型車だけにコンパクトですが、従来型同等の容量ををキープ。ただし、開口部の地上高が抑えられ、荷室幅が若干広がるなど、使い勝手の向上が図られています。もちろん、後席には50:50の可倒式機能も備わります。スペースの都合上、フルフラットにならないのは残念ですが、そのぶん、後席座面もしっかりと肉厚です。
開口部が低くなったラゲッジスペース。奥行きは従来型同等です
新しくなった直列3気筒エンジンは燃費が良くて経済的
新型となり、大きく刷新されたのが、パワートレインです。全モデルのエンジンは、新開発の自然吸気 1.2L 直列3気筒 DOHCエンジンに一本化されました。その性能は、最高出力60kW(82ps)、最大トルク108Nm(11.0kgm)の実用性重視のものですが、上位グレードのエンジンには、マイルドハイブリッド機能を追加することで、性能と燃費を向上しています。
最も燃費に優れるマイルドハイブリッド仕様のMTモデルでは、25.4km/Lの低燃費を実現しています。もちろん、トランスミッションのメインはCVTですが、こちらもマイルドハイブリッド仕様(前輪駆動車)では、24.5km/Lという経済性の高さを誇ります。
エンジンは、新開発の1.2L 3気筒エンジンに。トランスミッションはCVTが基本ですが、1グレードだけMTも用意するのはさすがスイフト
安全のための先進機能も充実
課題とされた先進機能ですが、安全面ではセンシング機能をミリ波レーダーと単眼カメラを中心に構成する「デュアルセンサーブレーキサポートII」とすることで、検知エリアの拡大と機能向上を図りました。
さらに最上位グレードとなる「ハイブリッドMZ」では、電動パーキングブレーキを標準化することで、アダクティブクルーズコントロール(ACC)時の停車保持機能や、停車時のブレーキホールド機能が加わって利便性が高められています。さらにコネクテッド機能として、車載通信機による「スズキコネクト」と大画面のディスプレイオーディオが採用されています。
検知性能向上にも役立つ新たなセンシング機能。ロゴのすぐ下あるのがミリ波レーダー
ウィンドウ上部にあるのが単眼カメラ
試乗車は最上位グレードとなる「ハイブリッドMZ」なので、スズキコネクトやディスプレイオーディオ、LEDフォグランプ、本革巻きステアリング、電動パーキングブレーキなど充実の装備。メーカーオプション設定も、ボディーカラーと全方位モニター付きナビゲーションシステムくらいという内容なので、フロアカーペットとETC車載器、ドラレコを装備すれば十分という仕様になっています。
3気筒エンジンを侮るなかれ! 加速の伸びがキモチイイ
試乗前は、平凡なスペックの3気筒エンジンを侮っていましたが、加速の伸びと軽快さにびっくり。マイルドハイブリッドのモーターアシストが良い仕事しています。サウンドこそ3気筒エンジンらしさを感じますが、課題となるエンジンからの振動もしっかりと押さえられています。これならば3気筒エンジンと気が付かない人もいるのではと思うほど。
もちろん、スイフト最大の魅力である走りの良さも健在。ステアリングは軽めながら、細やかな操作もしやすく、取り回しの良さとコントロール性を両立させています。さらに、硬めの味付けながら、不快な突き上げのない足回りと相まって、軽快なフットワークによるコーナーリングワークも楽しめます。
高速道路では、持前の走りの良さと空力の良いボディーを活かし、安定した走りを見せてくれました。その状況下で活躍し、ドライバーの疲労を軽減する全車速追従機能付のACCと、ステアリングアシスト機能も備わっています。まさに日常から週末まで楽しませてくれる小さなオールラウンドプレーヤーという仕上がりです。
ただ速度域が高まると走行音が大きくなるため、もう少し静粛性を高めてほしいのも本音。しかし、静粛性を高めるには、コストと車重の増がマストとなるため、そこは妥協すべきところかもしれません。
伝統の欧州風味の足回りとハイブリッドのコンビが、楽しい走りを実現
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