36歳管理職が青ざめた…部下の前で「忙しいアピール」をした結果起きた「まさかの事態」
「人手不足」は、今の日本経済の発展にとって大きな足かせとなっています。帝国データバンクによると、2023年度の人手不足を原因とする倒産は前年度比約2.1倍の313件で、過去最多を大幅に更新しているとのこと。
人手不足が深刻化していく中で、じつは「上司の働く姿」に起因する離職が少なくない現状を前編記事〈多くの上司は知らない…部下が次々と辞めるのは「上司の姿に絶望」したからという「残酷な現実」〉でお伝えしました。本稿では、そのような防ぐためはどうすればよいかについて述べていきます。
未来に絶望すると部下は辞めていく
人材獲得競争が激化している今、採用で成果を残すことは極めて難しくなっています。そこで、離職防止に向けて本腰を入れて取り組む会社が増えています。
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前編で述べた、離職の原因として盲点になっていると感じるのが「上司の働く姿」です。
部下は上司の姿に数年後の自分を見ます。その上司が楽しそうに活き活きと働いていたら、「自分も数年後、あんな風になれるんだな」と未来に希望を持ち、この会社で長く働こうとします。
しかし、上司が深夜残業、休日出勤の連続で、つらそうに仕事をしていたら、「自分も数年経ったらあんなふうになるんだな」と未来に絶望します。未来に絶望すると、現状には満足していたとしても、部下は「この会社に長くいてはいけない」とリスクを感じ、辞めていきます。
給料も福利厚生も手厚くし、部下には丁寧に関わり、欲しいスキルが身につく仕事も経験させ、良い点は褒め、仕事にやりがいを感じてくれるようにしたとしても、上司がつらそうに働く姿を見せてしまうと、部下は未来に絶望して辞めていくのです。
部下の前で忙しいアピールをするな
とはいえ、現代の管理職はプレイングマネジャーであることがほとんどです。プレイヤーとして重要な案件、難しい案件を任され、同時に現場の管理、部下の管理といったマネジメントの責任も負わされ、多忙な状況にある方がほとんどでしょう。
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そんな状況で、「部下が見ているからイキイキと楽しそうに仕事しろ」と言われても、「そんなの無理だ!」と言い返したくなるのではないでしょうか。お気持ちはよく分かります。
それでも、部下の離職を防ぐうえで心掛けてほしいことがあります。それは、忙しいアピールや会社の愚痴を、部下の前では言わないことです。
「昨日は終電まで仕事していた」「家で夜中の2時までやっていた」「土日も出社して仕事した」。こういった忙しいアピールを部下にすればするほど、部下は未来に絶望し、離職の動機を高めていきます。
大手会計事務所で働くY氏(36歳)は、忙しいアピールをした結果、部下が離職したという経験をされています。
ある日突然、部下が辞めると言ってきて……
「深夜まで働くとか、休日出勤するとかって、一つの話のネタなんですよね。部下との会話に困った時に、そういう忙しいネタって使いやすくて。なので、よく話してました。あと、自分はこんなに頑張ってるんだぞって部下にアピールしたい気持ちも正直ありましたね。そうしたら、ある日突然、部下が辞めると言ってきて……。
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その理由を聞くと、『Yさんはかなり忙しそうにされてますけど、自分は昇進して管理職になったら、Yさんみたいには頑張れないなと思うんです。だったら早めに辞めて、別の会社でキャリアを積んだほうがいいと思ったので』って言われまして。
ショックでしたね。今思えば、彼が辞めた原因は、自分の忙しいアピールにあったのかもしれないです」
また、「会社は金儲けのことしか考えていない」「こんなやり方をしているようでは、この会社はいずれダメになる」「社長は何か問題があるとすぐ感情的になって取り乱す」といった仕事の愚痴、経営陣への不満を部下に言うほどに、部下は会社や経営陣が信頼できなくなります。これもまた部下の離職の動機を高めます。
そして、部下が離職して苦しむのは誰かというと、それを言った上司本人です。部下が辞めると、それまで部下がやっていた仕事を上司が引き継ぐことは少なくありません。そうなると、さらに上司は忙しくなります。
管理職に過剰な負荷をかけない体制づくりを
あるいは、別の部下が引き継いだ場合、業務量が増えることで、その部下の離職の動機が高まります。それでその部下が辞めると、また他の部下の負荷が重くなるといった形で、離職の連鎖が起きることも珍しくありません。
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また、部下の離職は人事評価に悪影響をもたらします。特に人手不足が深刻な会社では、部下の離職は会社としても重大な問題となるため、部下に離職された上司の評価は大きく下がります。
つまり、忙しいアピールや会社の愚痴を部下には言わないことは、上司本人の身を守ることでもあるのです。そういった意味でも、この点はご注意いただければと思います。
とはいえ、忙しいアピールをしない、会社の愚痴を部下に言わないということは、その部下が管理職になった後に直面する負の実態を隠すことでもあります。それにより一時的には離職を防げるかもれしれませんが、それは根本的な解決策とはいえません。
根本的な解決策、それは管理職に過剰な負荷をかけずに済む経営体制を構築することです。
そのため、経営陣の方は管理職に「忙しいアピールをするな」「会社の愚痴を部下に言うな」という指示をして、若手社員の離職を防ごうとするだけでなく、管理職に過剰な負荷をかけずに済む経営体制を目指していただきたいと思います。