「しっかりノートをとり、メモを習慣化」はほぼ無意味…仕事のデキる人がやる「世間の常識」を覆す仕事術

「しっかりノートをとり、メモを習慣化」はほぼ無意味…仕事のデキる人がやる「世間の常識」を覆す仕事術

※写真はイメージです

真に効率良く仕事をするには何を意識すればいいか。物流エコノミストの鈴木邦成さんは「滞りをなくせるかどうかは、仕事をスムーズに処理していくうえでの大きな滞りの原因となる『世間の常識』が本当に合理的かどうかを考えてみることだ。たとえば、メモの取り方でいえば、『人の話を聞くときや読書をするときなどに細かくノートをとるのがいい』といった話をよく聞くが、社会人の場合、ノートやメモをとっても見直すことはほとんどない。滞りをなくすという視点からもノートをとる意味はあまりない」という――。

※本稿は、鈴木邦成『はかどる技術』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

下剤を飲むような徹夜での作業では滞りは改善されない

滞りを解消するのは便秘の解消と似ています。

「便秘なんて下剤に頼ればすぐ解消できる」という考え方ならば、いつまでたっても便秘体質は解消されないはずです。便秘の解消には抜本的な体質改善が必要になってきますが、それと同じことがいえるのです。

たとえば、予定の進行が滞ることを心配して、まとめて一挙に遅れを取り戻そうとする人がいます。

「時間が足りないならば徹夜で作業をする」といった人です。

確かに徹夜で作業をすれば、予定の遅れを解消することは可能でしょう。しかし、毎日徹夜で作業するわけにはいきません。

徹夜をするというのは特殊な状況です。実際、徹夜で作業をしても能率が上がらなかったり、身につかなかったりすることも多いと思います。

ムリに効率化する前に、根本的な体質改善が必要

では、仕事が忙しくて「なかなか人に会う余裕がない」という人が「休みの日に集中的に人に会うことにした」という場合はどうでしょう。

仕事で名刺交換だけはしたものの、その後のメールなどの連絡が忙しさにかまけて機を失したときの対応策として、お正月やお盆休みなどに、片っ端から知人・友人に連絡したりします。

けれども、これでは滞りは解消されるどころか、ますます増幅するばかりです。徹夜作業などの負荷の大きな取り組みを定期的に繰り返すことになるからです。便秘を解消するために下剤を常に飲み続けるようなものです。

確かに「便秘で困っている」というときに下剤を飲めば、とりあえずの便秘は解消できるでしょう。しかし、下剤というのはあくまで応急処置です。

便秘だからといって、いつまでも下剤に頼っているわけにはいかないはずです。食生活を改めるなどして、便秘になりにくいように体質改善を行う必要があります。

「便秘だから下剤で解消する」ということを繰り返すわけにはいかないのです。

ちなみに物流の現場の改善なども同じです。ムリに効率化しても、改善の考え方が根づいていないと、再びもとの改善前の状況に戻ってしまうことが圧倒的に多いのです。

滞りのない生活は、血流がよい健康体と同じ

時間管理における滞りの解消も同じです。滞りを解消するのには、それなりのコツや考え方があります。「作業が詰まりすぎているから徹夜する」とか「資料づくりを集中的に行いたいから残業時間を増やす」といったことは、抜本的な解決策には至りません。

便秘と血流には医学的に関係があることが知られていますが、比喩(ひゆ)的な意味でも時間管理における便秘体質を解消するには、「血流」をよくすることが効果的といえます。

すなわち仕事量などのムダ、ムラ、ムリをなくし、「必要なときに、必要なことを、必要な量だけ行う」ということを徹底していくのです。

先ほどの例でいえば、徹夜作業にならないように計画を組んでおくのです。

「そんなことは難しい」と思う人もいるかもしれませんが、そのための下準備、ちょっとした工夫をしておけば、そんなに難しいことではないのです。

たとえば、朝活を無定見(むていけん)にだらだらと行うのではなく、「1週間30分ずつ朝活をしておけば、徹夜作業は避けられる」というように逆算しながら時間管理をしていくのです。

睡眠時間を削っただけの「朝活」は単なる前倒しに過ぎない

もっとも私が知る限り、「滞りがない」という人はきわめて少ないと思います。ほとんどの人が多かれ少なかれ滞りを持ち合わせています。血流がよくなければいけないとは知りつつも、血流の悪い人が多いのと似ているのかもしれません。

ただし、「血流をよくしなければいけない」というのが広く知れ渡っているのとは異なり、滞りが時間管理の大敵であるということは、ほとんど知られていません。

しかも、世間で常識(行動経済学でいう社会的バイアス)と考えられていることが滞りの元凶となることが結構多いのです。

一例を挙げると朝活です。「早起きは三文の徳」というように「早起きすることのメリットは大きい」という考え方があります。

しかし本当にそうでしょうか。確かに朝早く起きてタスクをこなしていけば、一見効率的に時間を活用できるような気がします。

けれども、それは睡眠時間を削って、1日のタスクの処理量を前倒ししているに過ぎないのです。「一生涯、睡眠をとらない」という人が稀(まれ)に存在するという話は聞いたことがあります。

けれども社会人ならば、平日の平均睡眠時間は約7時間といわれています。睡眠時間にはほとんど個人差もないはずです。きちんと睡眠をとることは健康な生活を送っていくうえには必須です。

したがって、朝早く起きたならば夜早く眠るということになります。人間いつかは必ず起きて、いつかは必ず眠るわけだから、早起きしたからといって、物理的に得をするということはあり得ないのです。

ライフスタイルに合わせた時間の使い方が合理的で効果的

逆に、社会人の仕事が朝9時から始まり、夜6時に終わるならば、そのライフスタイルに合わせた時間の使い方が合理的ということになります。人類は夜行性動物ではないので、早起きするよりも日中の時間を有効活用するほうが合理的だし、効率的なのです。

このように世間の常識には大きなバイアスがかかっていることが少なくありません。

「急ぎではない用事だけど早めにやっておいたほうがいい」「できることはできるだけ早くやっておく」というように前もって早めになんでも処理する人もいますが、そうした人が肝心なときに「時間がないのでできなくなった」という話をよく耳にします。

たとえば、仕事の資料づくりなどで、「あらかじめ仕上げておいたけれども、直前で方針が変わったため、資料をつくり直すことになった」といった経験をあなたもしたことはありませんか。

「何でも前もってやっておくのがよい」といった世間の常識が通用しないケースです。

もっといえば、コロナ禍以降の令和時代、加速するデジタル化のなかで、世の中の常識もバイアスも刻々とアップデートされてきています。これまでの常識が「歪んだバイアスに過ぎない」ということが明らかになってきているともいえます。

とくに滞りをなくすという視点から考えてみると、世の中の常識は古臭いバイアスの塊とさえいえます。

そのためにも、常識を打ち破っていくことで、ムダ、ムラ、ムリのない効率的な時間術を身につけることが重要になってくるのです。

後で見直さないノートを事細かく取っても意味がない

滞りをなくせるかどうかは、ちょっとした心の持ち方でもあります。

そのためには「世間の常識」が本当に合理的かどうかを考えてみることです。世間の常識とは行動経済学でいうところのバイアスに過ぎず、それは仕事をスムーズに処理していくうえでの大きな滞りの原因となるのです。

滞りは時間管理だけではなく、仕事の進め方や行動スタイルにも大きな影響を及ぼします。

たとえば、メモの取り方ですが、みなさんはどのようにしていますか。

世間の常識でいえば、「人の話を聞くときや読書をするときなどに細かくノートをとるのがいい」といった話をよく聞くのではないでしょうか。

しかし、本当にノートやメモを細かくとるのがよいのでしょうか。

大学の授業などではテスト対策や実験レポートの作成などもあるでしょうから、細かくノートをとるのは重要でしょう。けれども、試験後も後生大事にノートを保管して時々見直す人はめったにいないと思います。

ましてや社会人の場合、ノートやメモをとっても、見直すことはほとんどないと思います。

そう、滞りをなくすという視点からもノートをとる意味はあまりないのです(熱心さをアピールするというパフォーマンスとしては「あり」かもしれませんが)。

実際、私は義務的に記録に残す場合を除いては、ノートはとらないことにしています。またメモは基本的にはなしで済ませますが、どうしても必要な場合は用件が終わればすぐに捨てます。

もっとも、ずっと以前からメモをとらなかったかというとそうではありません。ある時期、私も事細かくメモをとっていたことがありました。

しかし、メモをとってもそのメモを見返すことはほとんどありません。せいぜい電話番号を書き留めたり、伝言メモをとったりするくらいでしょうか。

何でもかんでもメモをするほど、本当に大切なことを忘れてしまう

資格試験の対策ノートも今は参考書などが充実しているケースがほとんどなので直接書き込んだり、デジタル資料に目を通したりすれば手書きのノートは不要です。

書き留める情報にしても、その情報の賞味期間はせいぜい1カ月程度です。

自分の記憶力を落とさないという視点からも、よほどのことがない限り、メモをとる必要性はないのです。些末(さまつ)なことや、何でもかんでもメモして忘れないようにすればするほど、記憶のキャパシティをオーバーし、本当に大切なことを忘れてしまいます。

時間管理についても、私はスケジュールを手帳に書き留めたりすることはほとんどありません。もちろん、仕事で「うっかり」が絶対に許されない予定などはカレンダーに書き込んだり、スマホで管理したりしていますが、それ以上のことはしません。

かつてはメモが絶対に必要とされていた時代もありました。しかしデジタル化が進むなか、どうしても記録が必要ならばノートはとらなくても録音や録画で片付くことも少なくありません。

「世間の常識」というバイアスからの脱却

「しっかりとノートを書いたり、メモしたりすることを習慣化したほうがよいのではないか」というバイアスからの脱却が必要とされているのです。「必要なことはメモしなさい」という人は記憶力に自信がないのかもしれません。

しかし、実際はメモがなくても思い出せたり、調べればすぐわかる場合がほとんどなのです。たとえば今の時代、電話番号や住所をメモる人はいないでしょう。着信履歴や検索ですぐに調べられるのですから。

本書では合理的な根拠を示しつつ、行動経済学ではバイアスと見なされる「世間の常識」を、滞りを解消するという視点から覆すことで、ムダ、ムラ、ムリのない仕事術を紹介していきます。

本書を読み終わるときには、あなたは滞りのない快適な仕事術を身につけていることになります。

もちろん本書をメモやノートをとりながら読むといったこともやめてください(笑)。

---------- 鈴木 邦成(すずき・くにのり) 物流エコノミスト、日本大学教授 一般社団法人日本ロジスティクスシステム学会理事、電気通信大学非常勤講師(経済学)。専門は物流およびロジスティクス工学。物流改善などの著書、論文多数。普段から学生やビジネスパーソンから専門分野に関する相談を受ける一方で、就職、転職、資格試験の勉強方法、職場での時間管理や人づきあいなど、幅広い悩みについても意見を求められるという。そうしたやりとりのなかで、物流・ロジスティクス工学の知見を、「仕事や人生の滞りをなくす」という視点から悩みに当てはめることで、思いがけない解決策を導けることに気づく。主な著書に『トコトンやさしい物流の本』『入門 物流(倉庫)作業の標準化』『トコトンやさしいSCMの本』(いずれも日刊工業新聞社)、『シン・物流革命』(中村康久氏との共著、幻冬舎)、『物流DXネットワーク』(中村康久氏との共著、NTT出版)などがある。 ----------

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