新NISA3カ月調査「積立で人気の投資信託」ベスト30「米国株だらけ、インド株も」【通常非公開データ入手】
新NISAスタート3カ月で買われた投資信託(以下、投信)を「つみたてで人気の順」にランキングすると? ネット証券5社の生データ(通常非公開)を入手し、独自に集計した。
新NISA「つみたてで人気」の1位は「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」。2位が、同「全世界株式(オール・カントリー)」。なお単純につみたて投資も一括投資も合計した「買われた金額順」だと、全世界株式が1位で米国株式は2位だった。
それ以降は少し顔ぶれが変わる。つみたて人気ランキングでは「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」や「〈購入・換金手数料なし〉ニッセイ外国株式インデックスファンド」など、先進国株式の投信がランクアップ。
先進国株式に中国などの新興国と日本株は原則、含まれていない。また、半導体株などテーマ性のある投信は姿を消した。
■インド株投信も人気
「つみたてで人気のランキングは、ある程度、リテラシーのある人が一括投資をするタイプの投信が一部省かれた状態になっていますね」
と語るのは、SBI証券の執行役員常務・上原秀信さんだ。
「新NISAのキーワードが見えてきます。一つは(基準価額の)成長、もう一つは分配です」
インド株は成長期待のほうだろう。つみたてでも人気で、16位に「iFreeNEXTインド株インデックス」、20位に「iTrustインド株式」、28位に「SBI・iシェアーズ・インド株式インデックス・ファンド」がランクインしている。
編集部注:6月4日、総選挙の開票作業が始まり市場予想と異なる様相を示したため、インド株が急落。インド株のインデックス投資信託でベンチマークとされることが「Nifty50株価指数」は取引時間中に一時8.5%安となりました
「eMAXIS Slimが圧倒的に人気ですが、『楽天・S&P500インデックス・ファンド』や『楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンド』もトップ10に食い込んでいます。同じ中身のインデックス型投信ならeMAXIS Slimじゃなくてもいいよね、という考え方がある」(上原さん)
と、ライバルの楽天グループに関してコメントした。
対するSBIでは定期的に分配金を受け取りたいニーズに応えた「年4分配」シリーズが大ヒット中だ。
年4分配の全10本中、「日本高配当株式」「欧州高配当株式」「日本国債」「J-REIT」の4本は信託報酬0.099%(年率、税込み/以下同)と低コストである。
新NISAでは毎月分配型の投信が買えない。そこで年4分配シリーズを活用する人がいるわけだ。それぞれ分配月が異なるため、組み合わせると分配金を毎月受け取れる。分配金をもらいつつ運用を続けたい高齢者などに合う。
SBI証券と楽天証券それぞれの「つみたて設定件数ベスト10」も紹介する(下の画像参照)。この2社は、新NISAが盛り上がりはじめてから「自社でしか買えない投信」を増やしている。囲い込みの一環だろう。
インデックス型が上位を占める中、目を引くのは14位の「ひふみプラス」で純資産総額は約6000億円。2012年設定の老舗、日本株メインのアクティブ型だ。
「オールドファンが多い投信です。全世界株式だと日本株は5%程度しか入っていませんので、それにプラスする形でこうした日本株投信を買うのもいい」
■一物二価に注意
上原さんはビギナー向けに注意点をアドバイスしてくれた。
「たとえば『キャピタル世界株式ファンド(DC年金つみたて専用)』は信託報酬1.085%、『キャピタル世界株式ファンド』は同1.701%。この2本、中身は同じですがNISAの制度変更により図らずも『一物二価』になっています。
有名どころではSlimではない『eMAXIS』にも中身が同じで信託報酬だけ違うものがあります。間違えないように注意しましょう」
それにしても、競争激化で下がるところまで下がった信託報酬。本音ではどう思っているのか。
「低コストを求めるユーザーに応えたいという気持ちはある。でも、ある程度の信託報酬を取る代わりに成績はインデックス型投信を長期で上回る投信が増えてほしい。投資家もうれしい、金融機関も少し潤うというのがあるべき姿の一つ。なかなか難しいことですが」
取材・文/向井翔太、中島晶子(AERA編集部)
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SBI証券 執行役員常務 投資信託部長の上原秀信〈うえはら・ひでのぶ〉さん。日本興業銀行(当時)のほか、ニッセイアセットマネジメントでは投資信託部門のトップを走り、2022年より現職
編集/綾小路麗香、伊藤忍
※『AERA Money 2024春夏号』から抜粋