鎌田大地クリスタルパレス加入「最初は残念だったが…」バイエルン伊藤洋輝40億円移籍は「ビックリだよ!」ブラジル人記者が斬る移籍動向
日本代表6月シリーズでの鎌田大地(左)と伊藤洋輝(右)。今夏の移籍市場で注目を集める2人など、ブラジル人記者に評価を聞いてみた
サッカー王国ブラジルの日本通記者は、現在ヨーロッパで活躍する日本代表選手をどう見るか――本音で23-24シーズンの活躍ぶりとオフの移籍市場での動向を評価・採点してもらった。(全3回の第1回)
サッカー日本代表をめぐる移籍市場が、例年以上に活発化している。
伊藤洋輝はシュツットガルトのブンデスリーガ2位躍進に貢献したことを評価されて、ドイツの名門バイエルンへの加入が決定。ラツィオに1年間在籍した鎌田大地はプレミアリーグのクリスタルパレスへと加わることが発表された。
さらにはセレッソ大阪の毎熊晟矢はオランダのAZ加入が決まり、そのAZに所属する菅原由勢もオランダ国外へのステップアップが噂されている。
活発化する日本人フットボーラーの移籍。そんな彼らについてブラジル人のチアゴ・ボンテンポ記者はどう見ているか。率直な感想を聞いた。
伊藤洋輝バイエルン移籍に「ビックリ」した深い理由
――今回の移籍市場で驚きだったのは、伊藤洋輝選手がドイツの名門バイエルンに移籍したことです。
「そうそう、僕も伊藤洋輝のバイエルン移籍にはとても驚いたんだ」
――驚いた理由としては?
「日本代表のスタメンを最大限の戦力で考えた場合、伊藤は左サイドバックでもセンターバックでも1番手ではないのかな、と考えているんだ」
――ほほう。序列として誰を1番手と考えていますか?
「センターバックに関しては、冨安健洋に板倉滉、さらには谷口彰悟に町田浩樹と2番手クラスもそろっている。あとはパリ世代にまで目を広げると高井幸大、西尾隆矢なども充実しているよね。一方で左サイドバックで個人的にナンバーワンと思っているのは、中山雄太なんだ。
カタールW杯こそアキレス腱のケガによって出場を逃してしまったけど、左サイドバックとして最も安定したプレーができているのは伊藤以上に中山だとみている。23-24シーズンまで所属したハダースフィールドがイングランド2部から3部に降格し、まだ所属クラブがない状況は、少しかわいそうかなとも思う」
――その中で伊藤は国内移籍、それもステップアップとなっています。
「伊藤のバイエルン移籍が決まったのは、さっきも言った通り、信じられないほどビックリした。しかし、伊藤はシュツットガルトでシーズン通じて好調だったし、成長を遂げた。左利きのDFである伊藤は、テクニックと体格の良さを兼ね備えた少し珍しいタイプ。だから多くのクラブが求めているんだと思う。何より2350万ユーロ(約40億円)という移籍金は、バイエルンが彼のポテンシャルを本当に信じている象徴だと思う」
日本代表での大サプライズはマイクマなんだ
――この移籍によって、日本代表の左サイドバック争いもさらに活発化する可能性がある。
「そう。より高いレベルの要求がある中でプレーする伊藤選手が成長を続け、日本代表にもさらに貢献してくれることを願っているよ」
――続いて移籍組として聞いてみたいのは、毎熊晟矢の印象です。
「僕にとって、ここ最近の日本代表の大サプライズは毎熊なんだ」
――というと?
「右サイドバックの絶対的なスタメンは菅原由勢だと確信していたからだよ。だけど毎熊はアジアカップでスタメンになっただけでなく、長いプレー時間を得た試合で良いプレーを何度もした。セレッソ大阪でのシーズン前半戦でも素晴らしかったし、僕にとって毎熊はJリーグ最高の右サイドバックだよ。もともとはウイングだった攻撃性能が、サイドバックというポジションで花開いた印象だ」
Jで見逃せない選手はマイクマ以外にもいるよ
――今回のオランダ移籍についてはどう思います?
「毎熊はすでに26歳なので、ヨーロッパの主要リーグでプレーする機会を得るためには、最後にして最大のチャンスだよね。この決断が日本代表の両サイドバックにもいい化学反応を生んでくれるといいかなと思っている」
――いい化学反応とは、具体的に?
「守備の選択肢が多い左サイド――中山雄太と伊藤洋輝だね――でバランスを取りながら、攻撃の選択肢が毎熊、菅原と2つあることはポジティブな方向に行くはず。あと、ここ1年で日本代表に招集されたJリーグ組でも見逃せない選手がいる。ポジション的に見てもね」
――チアゴ記者が注目しているポジションとは?
「日本代表は現状、センターハーフの枠1つが空いていると見ている。その中で昨年は伊藤敦樹と佐野海舟がチャンスをつかんだ。さらに森保一監督は川村拓夢もたびたび招集しているよね。その川村はザルツブルクへの移籍が決まり、佐野もマインツへの移籍報道がある。伊藤敦樹も含めてさらに序列を上げるチャレンジを選んでいるんだろうね。個人的にはJリーグで絶対的な存在になって、大きく取り上げられる選手もいてほしいところだけど(笑)」
エンドウの後継者になれるチャンスじゃないかな
――3人の中で最も注目しているのは誰でしょうか。
「佐野なんだ。彼の強みは3人の中では最も守備力があること。さらにボールを前に運ぶ能力があることも示している。例えば日本で取材した5月のサンフレッチェ広島vs鹿島アントラーズ戦がそうだったんだ」
――前半に鹿島が2点を奪いながら、1点差に詰め寄られた中での後半39分のプレーですかね。
「そう。高い位置でのボール奪取からそのままペナルティエリア内に入り込み、チャヴリッチのゴールに関与した。こういったプレーをドイツでも見せてくれるはずだし、高いレベルでプレーすることで、さらに成長するだろう。日本代表でも遠藤航の後継者となる絶好のチャンスじゃないかな」
カマダについては…少し残念だったけど
――なるほど。同じ中盤センターとして聞いてみたいのは、鎌田大地についてです。
「鎌田に関しては最後は巻き返したけど、持っている才能を思えば少し残念な1年だった、というのが正直なところかな」
――その中でオフにラツィオ退団を選択。そして7月1日にプレミアリーグのクリスタルパレス加入が正式に決まりました。それについてはどう感じているでしょうか?
「ラツィオというイタリアのビッグクラブを離れてイングランドの中堅クラブに行く。その報道に最初に触れた印象はあまりポジティブではなかったんだ。クラブのネームバリュー的ではキャリアの後退に見えるし、ラツィオで成功するためにもっと自分自身に挑戦してほしかったけど、競争力という点では、間違いなく世界最強のリーグでプレーする。それは前向きに捉えていいかなと思い始めている」
――鎌田は在籍1年で移籍を決断したわけですが、その要因はどう考えますか?
「鎌田は、将来的なキャリアや日本代表での地位を失うリスクを考えて、変化の必要性を感じたのかもしれない。それは日本代表をめぐる環境の変化がある。数年前までは、セリエAやプレミアでプレーしていた選手には、立ち位置が保証されていた印象があるけど、今は競争はかつてないほど激しくなっている。現状、鎌田は日本代表の中盤で盤石の立ち位置にはないよね。それは日本代表全体が底上げされているというポジティブな面でもあるけど」
――なるほど。
「とはいえ鎌田もイタリアで、シーズン終盤はポジティブなプレーを見せてくれたよね。さらにプレーメーカー、ナンバー8(センターハーフ)両方でプレーできるという利点があり、プレミア挑戦への期待は大きいよ。クリスタルパレスのグラスナー監督はフランクフルト時代の恩師。パーソナリティを含めて鎌田の特性を存分に把握しているはずだからね」
クリスタルパレスは公式の「X」で鎌田加入をマンガで投稿した
プレミア勢…トミヤスとミトマは不運な面もあったかな
――鎌田の移籍が決定的とされるプレミアリーグでは、遠藤航に冨安健洋、三笘薫や橋岡大樹もこの1年奮闘しました。
「それぞれ本当に頑張ったよね。遠藤と冨安はリバプールやアーセナルといった名門でプレミアの優勝争いを繰り広げたし、三笘もスーパーゴールを決めていた。ただ冨安と三笘はちょっと不運な面もあったかな」
――というと?
<つづく>