「三上悠亜コラボ」批判が"ピントはずれ"の根拠 「世間に悪影響」「企業のイメージダウン」は本当か
若い女性たちから多くの支持を受けている三上さん(画像:三上悠亜公式Xより)
元セクシー女優でタレントの三上悠亜さんが、帽子専門のアパレルブランド「CA4LA」とのコラボレーションを発表したが、批判を受け、三上さん自身が反論の投稿を行った。さらに、誹謗中傷に対して開示請求を行うことをX(旧Twitter)上で報告する事態となっている。
【写真】「かわいい!」の声が殺到した三上悠亜のコラボ写真
批判の内容としてはコラボ先の企業に対するものと、三上さんに対するものがあるが、いずれも三上さんの前職と関係づけられているものが大半だ。
1. (コラボ相手の)企業イメージ、ブランドイメージが下がるという批判 2. 元セクシー女優が目立つことに対する批判
しかしながら、三上さんと「CA4LA」のコラボレーションは3回目で、今回が最初ではない。さらに、過去には元セクシー女優だけでなく、現役のセクシー女優と企業がコラボレーションしてきた事例はいくつもある。なお、これらは今回のような激しい批判にはさらされていない。
どうして、今になって三上さんが批判をされるに至ったのだろうか?
以前からある、セクシー女優のコラボやメディア露出
「セクシー女優」という言葉が一般的に使われるようになったのは、この10年くらいのことのようで、それまでは「AV女優」と呼ばれるのが一般的だった。呼称が変わっていったのは、彼女たちがメディアで露出する機会が増えてきたことが大きいようだ。
一方で、企業が(元も含む)セクシー女優を起用する事例は、決して最近のことではない。1990年代には、すでに飯島愛さんが、NTTパーソナル東海、吉野家など、大手企業のCMに出演している。ちなみに、1993年には飯島さんは東大の五月祭(学園祭)にも呼ばれている。
当時、飯島愛さんはタレントとしてのイメージが強く、かつSNSもない時代で批判を浴びにくかったという側面もあるかもしれない。
時代は下るが、2014年には紗倉まなさんが、トヨタ自動車が運営するポータルサイトGAZOO.comに「紗倉まなのクルマと私のイイ関係」のタイトルで連載を行って話題となった。
筆者はこの当時、広告会社で働いていたが、この件は社内でも話題になっていた。日本を代表するだけでなく、世界的な大企業であるトヨタ自動車が、セクシー女優を起用するというのは、当時としては驚きの出来事だったのだ。
しかし、本件は大きな批判にさらされるようなことはなかったと記憶している。
同年には、翌年発売のプレイステーション向けソフト『龍が如く0 誓いの場所』が、大手アダルトコンテンツの流通・販売を手掛けるソフト・オン・デマンド社の協力のもと、人気セクシー女優100名を対象とした人気投票を開催、そのうちの上位30名をゲーム内に登場させるという企画を実施している。
今年の3月には、ヴィレッジヴァンガードが、セクシー女優・プロレスラーの“ちゃんよた”さんとコラボグッズを発売している。“ちゃんよた”さんは現役のセクシー女優だが、大きく叩かれるような事態にはなっていない。
三上悠亜さんはなぜ叩かれたのか?
過去の事例を見ると、このたび三上悠亜さんが叩かれたことがむしろ意外に思える。先述したように、三上さんと「CA4LA」のコラボは3回目である。批判されるなら、1回目にされてもよさそうなものだ。
考えられるのは、下記のような点である。
1. 三上さんがSNSのインフルエンサーで叩かれやすい環境にあった 2. しかも、急速に有名になり、目立ちやすくなっていた 3. 批判的なコメントに反論したり、意見表明をしたりした 4. (本件に限らず)SNSでの誹謗中傷行為が激化している
なお、三上さんのXのフォロワー数は600万を超え、2024年4月末の時点で女性部門での世界4位を記録している。
批判的な意見の中には、三上さんの影響でセクシー女優が持ち上げられすぎること、セクシー女優が憧れの仕事になることなど、子どもに対する影響を懸念する声が少なからず見られる。逆に言うと、それだけ影響力を持つ存在になってしまったということだろう。
CA4LAとのコラボレーションを発表していた(画像:三上悠亜公式Xより)
企業のイメージダウンへの影響は?
しかし、一部の人がSNSで叩いているような、社会に対する悪影響が実際にあるかというと、そこは疑問だ。
元セクシー女優の及川奈央さんは、2008年にスーパー戦隊シリーズの『炎神戦隊ゴーオンジャー』、2010年にはNHK大河ドラマの『龍馬伝』に出演している。この件が問題になったという記憶はない。
企業にせよ、マスメディアにせよ、セクシー女優に限らず、キャストを起用する際にはリスクも考えたうえで決定する。
タレントが不祥事を起こして降板することはよくあることだが、セクシー女優を起用したこと自体が問題視されて降板となったという話は、筆者自身は聞いたことがない。
一部のSNSユーザーが言っているような、企業のイメージダウンへの影響は、実際のところほとんどないように思う。実利があるからこそ、「CA4LA」は三上さんと3回目のコラボを行ったのだろう。
今回、批判している人は、過去のことは知らないだろうから、「CA4LA」の顧客ではなさそうだ。「イメージが悪くなった」「買いたくなくなった」と言われても、そもそも彼らは顧客でないのだから、影響も限定的だ。
一方で、誹謗中傷が広がっていく影響は無視できないかもしれない。しかし、だからと言って、企業側がコラボを取りやめるかというと、そうはならないだろう。取り下げることで批判も浴びるだろうし、誹謗中傷に屈するほうが企業イメージを下げることになるからだ。
過去のセクシー女優が日陰の存在だった時代であれば、彼女たちがメディアで多少目立ったところで、「逆境の中、がんばっている」と人びとから捉えられたのかもしれない。
現在のように、セクシー女優が市民権を得て、インフルエンサーとなり、トレンドをリードしたり、堂々と自分の意見を主張したりするようになった時代では、反動として、「目立たないようにしていろ」「おとなしくしているべきだ」という意識が生まれているのかもしれない。
“障がい者インフルエンサー”が叩かれるようになったのと同じ構造である。言ってみると、これは上下関係意識、差別意識の表れだ。しかし、多くの人は「差別ではない」「偏見はないけど」といった言葉を添えて批判を行う。
三上さんは誹謗中傷の書き込みに対して、開示請求を行うと発表した(画像:三上悠亜公式Xより)
匿名の批判を真に受けることはない
先述のように、企業やメディアは普通にセクシー女優をキャスティングするようになっているし、起用される人たちの多くは、複数の肩書を持っており、セクシー女優は肩書のひとつにすぎない。
紗倉まなさんは、その後、野間文芸新人賞の候補に選ばれている。2022年には元セクシー女優の鈴木涼美さんが芥川賞候補にもなっている。もはや、セクシー女優は一部のSNSユーザーが言うようなアングラな存在ではなくなっている。
コラボする企業側も、匿名の人たちの声を真に受ける必要はない。また、匿名の人たちの誹謗中傷に対して説明をしたり、反論をしたりしても、砂漠に水を撒くようなもので、ほとんど効果はないと言える。
そういう人の声は完全に無視してもよいと思う一方で、三上さん自身がXに投稿されている通り、度が超えた誹謗中傷も多数見られている。
「有名税」というには、心理的、労力的な負担が大きすぎる代償であるように思う。
攻撃を受けた本人が対応しなければならないというのが現状だが、本来は、SNSの場を提供しているプラットフォーム企業が誹謗中傷対策をもっと強化すべきである。