米名物記者が断言「イマナガは崩れずに成功する。ヤマモトは…」日本人メジャー選手を本音で採点…打ちまくる大谷翔平に“ある懸念”も指摘
今永昇太、山本由伸、大谷翔平のメジャー前半戦…本音採点は?
シーズン折り返しの時期に入ったメジャー。そこで大谷翔平、山本由伸、今永昇太の今季前半戦を総括すべく、ニューヨーク・タイムズ紙などに寄稿するベテラン名物記者スコット・ミラー氏に採点してもらった。【全2回の1回目】
まずはドジャースの大谷翔平。米スポーツ史上最高額の10年総額7億ドルという巨額契約でドジャースに移籍し、これまで以上に注目される中、開幕からトップレベルの働きを続けている。長年の通訳であり右腕だった水原一平氏から多額の預金を盗まれるという裏切りを受けた事件や、ロサンゼルスの新居がメディアで大きく報じられた騒動など、周囲が平穏とはいえない中での活躍だった。
「オオタニは三冠王を狙える」
チームがシーズンちょうど半分の81試合を終了した時点での成績は打率.320、24本塁打、60打点、16盗塁で打率と本塁打でリーグ1位。長打率.634、OPS1.033もリーグトップだった。
「注目度の高いドジャースという新天地で、しかも史上最高額の契約というとてつもないプレッシャーの中でシーズンをスタート。しかもミズハラの騒動で新しい通訳と組むことになり、適応しなければならないことが予想以上に多くなった。だがそれらすべての困難は、オオタニにとっては大きな問題ではなかったのだろう。期待に応える働きを続け、ナ・リーグ西地区トップを走るチームに貢献し、三冠王を狙える位置にもいる」
1つだけ気になる“大谷の苦戦”
ミラー氏がそんな大谷の前半戦につけた評価は90点。これだけの目覚ましい活躍をしているが、100点満点とはならなかった。その理由は何か。
「得点圏打率が6月25日時点で.234と物足りない数字で、得点圏の長打率も.325にとどまっているのが気になった。彼は本来、非常に勝負強い打者だ。2021年から昨季までの3年間の成績を見ると、得点圏打率が.305で全体の22位にランクされ、得点圏の長打率は.689でメジャートップだったので、今季と比べるとギャップが大きい。なぜ今季は得点圏で打てていないのかは非常に興味深い」
ドジャースで大谷とチームメートになった山本由伸はどうか。
山本由伸の採点「2カ月は戻ってこられないだろう」
オリックスからポスティングシステムでメジャーの投手史上最高額となる12年総額3億2500万ドルで契約し鳴り物入りでデビュー。開幕当初は苦戦し、安定した結果を出すまで時間がかかったが、6月に入ってからは期待通りの働き。6月1日のロッキーズ戦では6回7安打1失点、7奪三振で6勝目を挙げ、6月7日の敵地でのヤンキース戦では7回2安打無失点、7奪三振と快投した。
ミラー氏は、そんな山本の前半戦に85点をつけた。6月15日のロイヤルズ戦で上腕三頭筋の張りのため2回28球で突如降板し、右肩腱板の損傷で戦線離脱したのがマイナスとなった。
「14試合に登板し6勝2敗、防御率2.92は素晴らしい成績。奪三振も74イニングで84、しかも四球はわずか17と優れており、メジャーの先発投手でもトップクラスに入る。まさにこれから、というときの離脱は非常に残念だ」
前半戦で最も目を奪われたのは、やはりヤンキースタジアムでの快投だったという。
「本当に圧巻で、ヤマモトのベストピッチングだった。しかしあの登板でフォーシームの平均球速がいつもより1.5マイル(約2.4キロ)ほど上がっていたが、次の登板では平均以下の球速しか出ていないので、異変が起きていたのは明らかだった。2カ月は戻ってこられないだろうが、球団は10月のポストシーズンまでに戻ってくれればと思っているだろうね」
今永昇太の採点「それでも最高評価の理由」
DeNAからポスティングシステムでカブスに移籍しデビューから快進撃を続けてきた今永昇太はどうか。
4月1日のデビュー戦から5月1日まで6試合で無傷の5勝、防御率0.78。圧倒的な数字で新人王の有力候補に挙げられたのはもちろん、リーグの最優秀投手に贈られるサイ・ヤング賞の候補に名を挙げる米メディアまで現れた。
だが5月下旬ころから調子に波が出てきた。5月29日の敵地でのブルワーズ戦で2被弾を含む8安打7失点で5回途中で降板しメジャー初黒星を喫すると、次の6月4日ホワイトソックス戦も7安打5失点(自責点1)で5回持たずに降板した。さらに6月21日メッツ戦では3被弾を含む11安打10失点で3回KO降板というメジャー自己ワーストの登板となった。チームがシーズンちょうど半分の81試合を終了した時点で14試合に登板し7勝2敗、防御率2.96としている。
だがミラー氏の採点は95点と高評価。
「デビューから13試合目までの登板は本当に素晴らしかった。彼が登板したこの13試合でチームは11勝しているのだから、その貢献度は大きい。カブスのチームメートで内野手のニコ・ホーナーは『イマナガはチームのMVPだよ』と言っていた。打たれたメッツ戦は今季14試合目の登板だが、試合後に彼は修正すると言っていたので、打たれた理由はわかっていると思う。好調なスタートから調子が下降したとはいえ、投手力が絶対的に必要なチームにとっては、この前半戦でこれ以上ないほどの働きをした。プレッシャーにも強い投手だと感じるので、今後も大きく崩れることなくメジャーで成功し続けると思う」
新人王「イマナガは候補に入る」
山本も今永も、シーズンの早い段階から米メディアで新人王候補に名前が挙げられた。その可能性についてはどうか。
「もし2人が新人王レースに名を連ねるとしたら、ヤマモトはケガで離脱しているのでイマナガが一歩リードしている。ケガがなければ、間違いなくヤマモトも有力候補の1人になっていた。ただ新人王の規定は面白くてメジャーで1年目なら誰でも資格があるのだが、日本や韓国のプロ野球経験者は除外するべきだという話も必ず出てくる。それぞれの国の最高峰のリーグはマイナーとは違うという意見だ。一方で日本から移籍してきた選手で新人王に輝いた選手はヒデオ・ノモ、カヅヒロ・ササキ、イチロー、オオタニとこれまで何人もいる。まだ予想するには早すぎるが、イマナガは候補に入ってくると思う」
ただしナ・リーグの新人王は優れた候補が多く、激戦が予想される。
「イマナガの同僚一塁手マイケル・ブッシュやヤマモトの同僚投手ギャビン・ストーンもそうだし、パドレスの外野手ジャクソン・メリル、ブルワーズの三塁手ジョーイ・オルティス、マーリンズの二塁手オット・ロペス、カージナルスの遊撃手マシン・ウィン、パイレーツのポール・スキーンズとジャレド・ジョーンズ両投手とこれだけいる。しかしイマナガがケガなくシーズン最後まで走り切れば、選出される可能性は大いにあると思う」
では、大谷のMVPについてはどうだろうか。また野球選手のメンタルに詳しいミラー氏がズバリ指摘する「大谷が打席で考えていること」とは。
〈つづく〉