天皇皇后両陛下の訪英は異例づくし チャールズ国王とキャサリン妃はがん療養中、英国総選挙も控える状況
6月下旬、国賓として英国に訪問した天皇、皇后両陛下。今回の訪英は、さまざまな事情を経て実現したものだった。AERA 2024年7月8日号より。
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6月22日午前、天皇、皇后両陛下は政府専用機のタラップを足取り軽く上がって、羽田空港を発った。快晴の空にマッチしていた雅子さま(60)のスーツは、ウェッジウッド・ブルーと呼ばれる気品のある淡い青。天皇陛下(64)のネクタイも同じ色で、お二人の息はぴったりだ。
即位後、両陛下が国際親善のため外国を公式に訪問するのは昨年6月のインドネシアに続き2度目。そろって英国を訪問するのは2022年9月、エリザベス女王の国葬に参列して以来のことだ。
親日派で知られたエリザベス女王は、日本の皇室を昭和天皇、上皇さま、天皇陛下と3代にわたって見守り続けていた。陛下が19年に即位した時には英国に招きたい意向があったと伝えられているが、新型コロナが蔓延。実現しないまま亡くなった。今回の訪英は、チャールズ国王(75)へと代替わりした英王室と日本の皇室が引き続き親しい交流を持つことを世界に示す機会となった。
だが、英王室が両陛下を国賓として招待することを発表した時、驚いた人も少なくなかった。なぜなら、チャールズ国王とキャサリン皇太子妃(42)のシニアロイヤル2人ががんの療養中だからだ。
■国王の強い希望ある
今年2月、がんを公表したチャールズ国王は、2カ月余りで公務に復帰。初夏の恒例行事であるガーデンパーティーやフランスでのノルマンディー上陸80周年記念式典、公式国王誕生日(トゥルーピング・ザ・カラー)、ロイヤルアスコット競馬と立て続けに公務に参加している。イベントに顔を出すことで、国民に安心感を与えてはきたが、2回のガーデンパーティーのうち1回はウィリアム皇太子(42)に任せ、公式誕生日の式典でも、昨年は馬に乗ったが、今年はカミラ王妃(76)と馬車に乗るなど、まだまだ本調子ではなさそうだ。
キャサリン妃は、3月にがんを公表後は表に出ることはなかったが、公式誕生日には馬車に乗って登場。沿道の人々から拍手と歓声に迎えられている。だが、病状については「危機は去っていない」と率直に打ち明け、その後また公務は控えている状況だ。
さらに5月22日には、英国のスナク首相が突然、7月4日に総選挙を行うと発表。英王室は選挙に影響を与える可能性のある活動は控えるのが伝統で、すでにいくつかの公務が中止、あるいは延期された。選挙期間中は国賓を招くことを避ける傾向もあり、17年にはスペインのフェリペ国王の訪問がキャンセルになっている。
そんな中、日本から天皇、皇后両陛下を招くことについて、デイリー・エクスプレス(オンライン)は「チャールズ国王の強い希望がある。専門家は『日本はイギリスにとって経済的・防衛的に重要な国である』とし、日英は互いに助け合う間柄にあるからだ」と報じている。
とはいえ、チャールズ国王の負担軽減と選挙への配慮をしなければならないからだろう。両陛下の滞在8日間のうち、6月25日から27日までの3日間は国賓待遇として、その前後の日程は私人としての活動・訪問と位置付けられた。(ジャーナリスト・多賀幹子)
※AERA 2024年7月8日号より抜粋