タンス預金はなぜ問題? 紙幣刷新で「タンス預金をあぶり出す」と世の中はどう変わるのか
7月3日から発行される新紙幣。1万円札が渋沢栄一、5000円札が津田梅子、1000円札が北里柴三郎となる。
※この記事は2023年7月3日初出です
1000円、5000円、1万円紙幣が2024年度上期をめどに一新される(編注:新紙幣は7月3日から発行)。前回2004年の刷新時は、2002年8月2日発表、2004年11月1日新紙幣流通開始だった。現在の紙幣は2024年までに20年間使用されることとなり、その後変更する運びとなるが、この変更に伴ってさまざまな需要が発生している。
新紙幣の一般的な目的や動機としては、偽造防止とされている。このため、今回の刷新も最大の目的は偽造防止であることが推察される。しかし、前回の紙幣刷新は、発表から紙幣刷新までの期間が約2年だった。これに対して、今回は発表が2019年に対して紙幣刷新が2024年となり、発表から刷新までの間隔が5年もあり、通常より長い印象を受ける。この背景として市場では、恐らく改元と発表時期を合わせる意向があったものと推察されている。
また、今回の紙幣刷新の別の狙いとしては、「タンス預金」のあぶり出しが隠れていることが推察される。
そもそもなぜ「タンス預金」をするのか
一般的に、個人がタンス預金をする目的は主に5点が指摘されている。
まず1点目は、いつでも好きな時に現金が使えるということだ。自宅に現金を保管しておけば、いつでも必要に応じてお金を使うことができる。また、銀行やATMに出向く必要もなくなり、ATMの利用手数料も節約できる。そして何よりも、なにがしかの緊急事態が起きて簡単に預金の引き出しができなくなった場合に、手元にまとまった額の現金があれば、緊急の支払いができる安心感がある。
そして2点目は、銀行の破綻などから資産を守ることができることだ。現在、銀行にはペイオフ制度(※)があるが、それでは1000万円を超えるお金を預けている銀行が破綻した場合には、1000万円を超えた分の預金が保証の対象にならない可能性がある。このため、現金資産が1000万円を超える場合は、超えた分をタンス預金にしておけば、銀行破綻から資産を守ることができる。
※ペイオフ制度:万が一金融機関が破綻した場合に、預金者等の保護や資金決済の履行の確保を図ることによって、信用秩序を維持すること。当座預金や利息の付かない普通預金等(決済用預金)は、全額保護される。定期預金や利息の付く普通預金等(一般預金等)は、預金者1人当たり、1金融機関ごとに合算され、元本1000万円までと破綻日までの利息等が保護される。
3点目は、相続発生時に口座が凍結されても困らないことだ。というのも、被相続人がなくなることで相続が始まると、遺産分割協議が終わるまで個人の預金口座が凍結され、現金を引き出すことができなくなる。しかし、家族が亡くなった直後は葬儀費用等が必要になるため、手元にまとまった現金があれば困らないで済むことになる。
そして4点目が、国に個人の資産を把握されないということだ。預金口座にマイナンバー登録が義務付けられているため、国は金融機関に預金している個人の資産保有額を把握することが可能になる。しかし、タンス預金はマイナンバーに紐づけられないため、国に個人の資産を把握されずに済むことになる。
最後の5点目が、家族に知られずに貯蓄ができるということだ。銀行預金や有価証券投資は、調べればすぐに資産総額が把握できる。しかし、タンス預金は把握が難しくなるため、家族に知られず自由に使える自己資金を確保できるメリットがある。
主にこうした5点が、タンス預金が増える理由として一般的に指摘されている。