パワー不足もなんのその!「軽さ」と「長さ」で高弾道が手に入るフォーティーン『PC-3 アイアン』【ヘッドデータ分析で判明】
ベテランゴルファーが求める”やさしさ”と”構えやすい形状”。この2つに重きを置いてリニューアルされたのが2024年バージョンとなるフォーティーン『PC-3』アイアンです。容易に高弾道が打てるやさしさ、ポケットキャビティらしからぬシャープな顔つきから伝わる構えやすさ。クラブ設計家の松尾好員氏は「高弾道を引き出す設計意図と構えやすさが備わっている」と分析。ギア通に支持され、上級シングルにファンの多いフォーティーンがアイアンに求めたものは何か? 松尾氏とともに検証してみました。
【試打クラブスペック】7I ●ロフト角/30度 ●ライ角/62.5度 ●価格(税込)/10万2960円(7I~P・4本セット)※すべてメーカー公表値
高弾道を生む秘密はクラブの長さにあった!
GD 今回は3年ぶりにモデルチェンジしたフォーティーン『PC-3』アイアンを21年モデルの前作と比較しながら分析していただきます。ヘッドデータで気になったポイントはありますか?
松尾 前作から継承されている部分がありながら、今作は重心距離とライ角の設定に変化が見られました。
GD では継承されている部分からよろしくお願いします。
松尾 わかりました。共通しているのは“とても軽く振りやすい“設計がされている部分です。クラブ重量で言えば前作は353.2グラム、今作が352.6グラムと共に非常に軽いです。そしてクラブの振りやすさの目安となるクラブ全体の慣性モーメントは前作が255万g・㎠、今作は254万g・㎠とこちらも共に非常に小さくなっています。
GD つまり『PC-3』アイアンは軽量で振りやすさにこだわっているということですか?
松尾 はい。さらに振りやすさに加えてクラブ長さが長めに設定されているところもポイントだと思います。通常の7番アイアンよりも長くすることで、ヘッドスピードが速くなり、球が上がりやすくなっています。
左が前作、右が今作。ヘッドデータを紐解くと継承されている設計があり、フォーティーンのこだわりが垣間見れた
GD なるほど。長くても軽いから振りにくさを感じることなく球が上げやすいんですね。次は今作ならではのポイントをよろしくお願いします。
松尾 重心距離が前作の39.2ミリに対して今作は40.4ミリと長くなっています。前作よりも重心位置がフェースの中心寄りに設計されています。今作はトウ側にタングステンウェイトが埋め込まれているのでその結果、重心距離が長くなったのだと思います。
GD 続いてライ角はいかがでしょうか?
松尾 前作が61.9度、今作が62.8度とアップライトになりました。さらに今作はヘッドが大きいのが特徴で、ネック軸回りの慣性モーメントが前作の5851g・㎠に対して今作は6142g・㎠と大きくなっています。ヘッドの返りが緩やかになってはいるものの、アップライトなライ角のおかげで、オートマチックに球をつかまえてくれるアイアンになっています。
GD では今回の『PC-3』アイアンはどんなゴルファーにオススメでしょうか?
松尾 ヘッドデータ以外で言うとヘッド全体が大きいものの、アドレスではシャープな顔つきをしているところも特徴のひとつです。そしてクラブがとても軽く設計されているため振りやすく、アップライトなライ角で球をつかまえてくれるヘッド性能も備わっています。ヘッドスピードが遅いシニアゴルファーの方にピッタリのアイアンだと思います。
見た目からも溢れる球の上げやすさ!
ここからは実測データをもとに凄腕シングルでもある松尾氏にクラブ分析と試打レポートをしてもらいます。試打および計測ヘッドは7番、シャフトは「FT50i」でフレックスSです。掲載数値はすべて実測値となります。
クラブ全体が軽量化されているおかげで、クラブ長さが長い設定でも気にならない
クラブ長さは37.38インチと通常の6番アイアンの様に長い設定です。しかしクラブ重さが352.6グラムと「非常に軽く」、スウィングウェイトがC7.0と「非常に小さい値」からクラブの振りやすさの目安となるクラブ慣性モーメントが254万g・㎠と「非常に小さく」なっています。計測数値のみから推察するとドライバーのヘッドスピードが35m/sくらいのゴルファーにとって、タイミング良く振りやすくなっています。
ヘッド形状は全体的にオーソドックスで、一般的なプロモデルのヘッドと比べると、ひと回り大きい顔です。しかしアドレスではボテっとしていない「精悍な顔つき」が新しい『PC-3』の特徴です。
左が前作、右が今作だ。今作のほうが全体的にシャープな顔つきに仕上がっている
実際に試打したところ、最近のアイアンの中ではフェース面が大きく、高さもあることからアドレスでは数値以上にロフトがついて見えるので、球が上がりやすそうなやさしさが出ています。
試打シャフトがカーボン素材特有の軟らかめの設定でヘッドスピードが35~37m/sくらいのゴルファーでも十分扱えそうです。
クラブが全体的にとても軽く、グリップの太さが細めの設定からパワーに自信がないゴルファーでも気持ちよく振りやすくなっています。
フェース面の素材に超高強度の新素材を採用(#5~#7)していることから打感はかなり硬く、球の弾きがよかったです。その割にはポケットキャビティ内の振動吸収材でインパクト音は低く抑えられています。
ソールのバウンス角が1.8度と小さい設定から考えると、ターフをほとんど取らない横から“サッと払う“スウィングのゴルファーに向いています。
フェースが長い設計からヘッドのネック軸回りの慣性モーメントが大きくなっており、ダウンスウィングでヘッドの返りが遅くなっていますが、62.8度と超アップライトなライ角で適度に球がつかまるように調整されています。
クラブ長さが長い設定ではあるものの、軽量設計で振り切りやすくなっている点から、他のロフト角が30度設定の通常のアイアンよりも、高い弾道が打ちやすかったです。
他のヘッドスピードが遅めのシニアゴルファーに打ってもらいましたが、総じて「とても振りやすく感じた」と言う人が多かったです。特に普段からカーボンシャフトのアイアンを使っているゴルファーがタイミング良く振れていました。
※週刊ゴルフダイジェスト2024年7月9日号「ヘッドデータは嘘つかない!」より