ここにきて、日本で初の「女性総理」誕生が再浮上…永田町でささやかれる「次期総裁」の意外な名前

永田町で再び浮上する6月解散・総選挙

2月13日と16日、自民党が、「派閥による政治資金パーティーに関する全議員調査結果」と、政治資金収支報告書に不記載があった安倍派や二階派の議員ら85人に対する聞き取り調査結果を公表した。

そのいずれもが、真相究明にはほど遠い、「とりあえずやりました」感が強いものだったことは、すでに多くのメディアが報じている。

裏金事件は、事実上の脱税行為で、2023年に世間を騒がせた特殊詐欺事件のようなものだ。筆者もメディアの人間として徹底究明したいと思っている。

写真：筆者が入手した「派閥による政治資金パーティーに関する全議員調査結果」の資料

しかし、自民党が、野党の要求を飲む姿勢を見せながら挙党体制で守りに入り、「集団的自衛権」を行使している現状では、政治倫理審査会を開こうが開くまいが、指示役の“ルフィ”は誰で、実行役はどう動き、詐取したカネを何に使ったのか、容易には明らかにできず、「はい、派閥を解散しましたよ」、「ほら、政治資金規正法も手直ししましたよ」で終わってしまうだろう。

「岸田文雄首相にとっては、ある意味、チャンスだよね。これまで第4派閥の領袖にすぎなかった首相が、相次ぐ派閥の解散で、衆参両院で374人を数える政治集団のトップになれたんだから。

30議席前後の負けを覚悟するなら、通常国会終わりで衆議院解散・総選挙だってあるんじゃない？ 大敗さえしなければ、何よりの禊（みそぎ）になるからね」（安倍派・衆議院議員）

実際、永田町では、「岸田首相が6月の通常国会終盤で衆議院を解散するのではないか」との声が上がり始めている。

もっとも、自民党内には、福田赳夫、中曽根康弘、小渕恵三、そして福田康夫と4人の首相を輩出してきた保守王国・群馬の前橋市長選挙（2月4日）で、自公系の現職が無所属新人の女性元県議に敗れた衝撃が残っている。

4月28日に投開票が行われる、衆議院東京15区、島根1区、長崎3区の補欠選挙の結果も見る必要があるだろう。

しかし、仮にここで自民党候補が2勝するようなことになれば、春闘での賃上げ効果が出始め、国民1人当たり4万円の定額減税も実施される6月は、岸田首相にとって絶好の好機になる。

「ポスト岸田」のダークホース

もし、岸田首相が6月解散・総選挙に踏み切れば、「ポスト岸田」の顔触れは全然違ってくる。東京都知事の小池百合子氏（71）が、くら替え出馬できるようになるからである。

東京都知事選挙の日程は、6月20日告示、7月7日投開票だ。当然、小池氏が3選を目指して出馬するかどうかが最大の焦点になる。

写真：gettyimages

小池氏は、例年、年末年始に各メディアとの単独インタビューに応じているが、筆者の同僚記者が直撃した際は、「都政に日々いそしんでいる」と上機嫌で答えただけ。ほぼ同時期に行われた他局とのインタビューも同様で、それ以降、毎週金曜日に開かれる定例会見でも、今後に関しては何も明言していない。

東京都知事選挙の告示前に衆議院の解散があれば、9月に行われる自民党総裁選挙の顔触れは激変する。小池氏が衆議院議員に返り咲けば、二階俊博元幹事長らが総裁候補に担ぎ出そうとする可能性が極めて高い。

二階氏は、2020年の都知事選挙で、自民党が自主投票とする中、率先して小池氏再選の旗振り役を務めている。また、従来から「（小池氏が）国会へ戻って来られるなら大いに歓迎」とも語る最強のサポーターである。

最近では、二階氏が代表を務める政治団体が、2020～2022年の3年間で、書籍代として3500万円もの大金を支出していたことが明らかになったが、その中で、『小池百合子の大義と共感』（大下英治著）を3000冊（396万円分）も購入していたことは、二階氏が小池氏にいかに肩入れしているかを物語るものだ。

【想定される自民党総裁選挙の構図】

〇秋まで衆議院解散・総選挙がなく、岸田首相が再選に向け出馬した場合

＝岸田首相vs石破茂元幹事長、高市早苗経済安保相

〇6月に衆議院解散・総選挙があり、岸田首相が続投した場合

＝岸田首相vs小池百合子氏、石破茂元幹事長、高市早苗経済安保相

〇6月に衆議院解散・総選挙があり、岸田首相が退陣した場合

＝小池百合子氏vs上川陽子外相、石破茂元幹事長、高市早苗経済安保相

衆議院解散・総選挙があるかないか、次の自民党総裁選挙が党員投票を含めたものになるか、両院議員総会だけで決めることになるかによるが、今のところ、上記のような構図が想定される。

ポピュリズムか、お行儀の良い政治か

小池氏の政治の特徴は、アメリカのトランプ前大統領のスタイルに似ている。トランプ氏ほど無責任ではないが、自分の目立たせ方を知っている点や有権者に不人気な政策には興味を示さない点など共通項は多い。

〇ポピュリズгѓ

＝「クールビズ」、「都民ファースト」、「築地は守る、豊洲は活かす」、コロナ禍での「密です、密です」、「ステイホーム」、「オーバーシュート（感染爆発）」、「ソーシャルディスタンス」「ステイホーム」など、端的な言葉で呼びかけ、危機感を煽るのが巧み。

〇国に先んじる

＝「緊急事態宣言」の発出と停止要請、「高校授業料無償化」の打ち出しなど、政府の動きを批判し、先取りする姿勢が目立つ反面、東京都にとって都合が悪い「GoToトラベル」の東京都発着分の除外問題などでは「国が判断すべき」と責任を負わせるのが上手。神宮外苑再開発など自身に不利な問題を質問すると機嫌が悪くなる。

「いわゆる腹芸ができる人で、発信力もあるので、もしトランプ氏が大統領になったら、うまくわたり合えるのは小池さんぐらいじゃないの？」（前述の安倍派・衆議院議員）

こんな声が聞かれるほどだ。「ポスト岸田」に名前が上がり始めた上川外相（3月1日で71歳）はどうだろうか。

上川外相と言えば、法相時代の2018年7月、オウム真理教の松本智津夫死刑囚ら元幹部13人の死刑執行を命じたことで知られる。

写真：gettyimages

ただ、それ以外は「よく知らない」という方も多い中、1月28日、自民党・麻生太郎副総裁が福岡県内で、上川外相を「カミムラ」と呼び、容姿にも触れた言葉が上川外相の名前を全国区にし、「できる外相」としての注目度を一気に高めた。

当時は、岸田首相が、麻生副総裁への相談なく、いち早く岸田派の解散を打ち出したことへの意趣返しと言われたものだが、筆者は、岸田首相にさじを投げ、茂木敏充幹事長を担ごうと画策していた麻生副総裁が、「上川ならいける。もともと岸田派だから、岸田首相に引導を渡す際、岸田首相の影響力も残ると説明しやすい」と考え、批判も想定しながら発したフレーズだったと見ている。

その上川外相だが、筆者が耳にする永田町や霞が関での評判はすこぶる良い。1月7日、ウクライナの首都キーウを訪問した際は、「大臣自らが動いて、ゼレンスキー大統領らとの面会を取りつけた」（外務省関係者）という。

上川外相は、東大で国際関係論を学び、三菱総合研究所の研究員を経て、ハーバード大学ケネディスクールで修士号を取得、その後、アメリカ上院議員の政策立案スタッフを務めた経験を持つ。

それだけでも才女だが、政治家としても、2000年の衆議院選挙で初当選して以降、少子化担当相→公文書管理担当相→3度の法相→外相とステップアップしてきた。

「とにかく、言葉遣いや立ち居振る舞いが堅実で、同僚議員の選挙応援に入るときなども、選挙区が抱える事情を熟知してから演説するような人」（岸田派・衆議院議員）

永田町や霞が関での評価をまとめれば、「真面目」、「手堅い」、「醜聞がない」、「いい意味でも悪い意味でも組織や序列を尊重する」といったところだろうか。

こうしてみると2人は対照的だ。小池氏はポピュリズムで有権者受けもするが敵も作るトランプ型、一方の上川外相はお行儀が良く、周りと協調しながら政策を前に進めようとするバイデン型の政治家と言えるかもしれない。

小池百合子に代わるダークホース

先に述べたように、今年秋までに衆議院解散・総選挙がない場合、小池首相誕生の可能性はゼロだ。そんな中、たとえば、福田康夫元首相の長男、福田達夫元総務会長（56）が若手・中堅議員から推され出馬するようだと、小池氏に代わるダークホースになる。

写真：福田達夫氏の公式webサイトより

その場合でも、岸田首相が出馬しない展開になれば、上川外相への待望論は高まる。麻生派や岸田派のほか、菅義偉前首相らのグループなどからも幅広く支持を集めるだろう。

ただ、党員票を含めたフルスペックでの総裁選挙になれば、全国的な知名度で上を行く石破氏や高市氏がどうしても有利になる。上川外相が「女性初の宰相」を実現するには、さらに知名度を上げる発信力が必須となる。

いずれにしても、衆議院選挙の有無、岸田首相の動向しだいだが、自民党内で派閥の解体（筆者は、「解体」ではなく単なる「再編」と思っているが）が続く今、読みにくい総裁選挙になるのは間違いない。

筆者からすれば、次の首相が誰であれ、「トランプ氏がアメリカ大統領に返り咲いた場合、表と裏でディール（取引）ができる首相」、「中国や北朝鮮から国土を守れる首相」、「日本の未来を左右する少子化対策をどの課題よりも最優先する首相」であってほしいと心から願っている。（※本稿では旧派閥名を元のまま記載した）