EV連合・日産とホンダと「我が道を行く」トヨタの将来を占う～そういえば立派なビルを建てた企業は傾く！？

EV連合側に未来はあるか？

ロイター 3月15日「日産とホンダが提携検討、EV部品・ソフト共通化でコスト削減へ」と報道された。

だが、「あの日産とホンダが提携するのか、これからすごいぞ！」と感じた読者はどれほどいるだろうか？

少なくとも私には、「カルロス・ゴーンに滅茶苦茶にされた日産」と「『全面EV化』方針で大失敗したホンダ」の傷をなめ合う「弱者連合」にしか思えない。

日産自動車本社 日産自動車HPより

ホンダ本社・ウエルカムプラザ ホンダHPより

それに対して、ZAKZAK 3月18日拙稿「明らかになってきたEV・脱炭素の『欺瞞』とわが道を貫いたトヨタの『先見性』　日本の生命線は『化石燃料の確保』」で取り上げたトヨタ自動車は破竹の勢いだ。

昨年9月28日公開「豊田章男はなぜホンダ車にエールを送ったか、トヨタ一人勝ちでは世界から叩かれる？」と、トヨタが世界の自動車メーカーの中であまりにも傑出した存在であるがゆえに、世界各国（の政府・企業）から激しいバッシングを受ける問題を取り上げた。

ホンダファンである私は、ぜひホンダに頑張ってほしいのだが、前記記事で豊田章男氏から「エールを送られた？」ホンダのその後の状況は芳しくない。

2020年9月14日公開「ホンダは『腐ったタイ』GMと業務提携してうまくやっていけるのか」と、「負け組」のGMと提携することに懸念を示した。そしてジェトロ 昨年10月26日「ホンダ、GMとの量販価格帯EVの共同開発中止を発表」という結果になっている。「両社の包括的な協業体制は継続される」と説明されたが、大きな「挫折」であったことは間違いがない。

そして、それからおおよそ半年後、遂に2022年9月15日公開「ホンダが抱える『全面EV化』の巨大なリスク――『第2の日産』になってしまうのか」で触れた、日産との提携を検討することになった。

大変残念ながら、近年のホンダは迷走していると言わざるを得ない。昨年12月8日公開「自動車王国日本は、バイクもすごい！　そしてヘルメットも……もはやホンダは4輪車事業をトヨタに売却すべし」との提案がさらに現実味を帯びてきた。

今から4年ほど前に、2020年6月16日公開「やはり独り勝ち、世界の自動車メーカーはトヨタにひれ伏すのか？」という記事を執筆したが、それが今まさに現実になりつつある。だが、悲しいことにそれと同時に、日本国内でも「自動車会社各社の優劣」が明確になりつつある。

その明暗を分けたものは一体何であろうか？

EV化はすでにオワコン

昨年9月11日公開「ドイツを見よ！ EV化の惨めな結末～フォルクスワーゲン減産、結局、脱炭素は『三流国』への道？」などで述べた「脱炭素」や「EV化」の欺瞞は、前記「明らかになってきたEV・脱炭素の「欺瞞」とわが道を貫いたトヨタの『先見性』　日本の生命線は『化石燃料の確保』」のように、だれの目にも明らかになってきている。

2021年8月24日公開「長いものに巻かれるホンダ、総合自動車メーカーをあきらめるのか」副題「早期退職2000人の裏側」という「犠牲」を強いてまで推進した「全面EV化」は明らかな誤りであった。

今からでも遅くないから、本田宗一郎が愛した「エンジン」、さらには次世代カーとして有望な「ハイブリッド」に本格回帰すべきだ。

伊東社長退任から「おかしくなった」？

ホンダは、本田宗一郎と藤沢武夫の二人三脚によって大発展した。その二人の「優秀な遺伝子」は、伊東孝紳社長が退任するまでは脈々と受け継がれてきたと感じる。

ホンダが「おかしくなった」のは、それ以降であろう。

2023年3月7日公開「楽天、ユニクロ、ホンダ……英語社内公用語化を進めた企業の末路」4ページ目「ホンダは『転んだ』」で述べた「英語社内公用語化」が一つの象徴といえる。

伊東社長の時代にはZAKZAK 2010年7月21日「ホンダ、英語公用語化『馬鹿な話』日本人が集まるここ日本で…」と一刀両断にされていた。

ところが2015年頃から突然「英語社内公用語化」が推進されるようになったのである。

「『エンジンを見捨てて』全面EV化を推進する」などという「とんでも判断」をする会社にホンダが変質してしまったのはこの頃からではないだろうか？

ゴーンに荒らされた日産

日産については、2018年11月25日公開「反強欲・反グローバル資本主義という潮流で読み解くゴーン事件」副題「首切り屋はどこまで大きくなったか」で述べたように、「首切り（コストカット）」しか能が無い、今やレバノンに潜伏しているとされる、国際指名手配犯であるカルロス・ゴーンの「惨劇」があったことは否定できない。この惨劇は、「カルロス・ゴーンの『世界マイナス遺産』」として、現在も日産を苦しめている。

2021年4月28日公開「東芝、マクドナルド、日産…日本企業をぶっ壊す『プロ経営者』たちのヤバい実態」に至るまで「プロ経営者」ゴーンの問題点について多数の記事で述べた。しかし、そもそもゴーンを日産のトップにしたのは、それまでの日産の「だらしない経営」である。また経済産業省も、「日本の有力企業」が外資の軍門に下るのを指をくわえて見ていたのである。

だから、日産の凋落はカルロス・ゴーン一人の責任に帰することはできない。歴代日産の経営者・幹部、さらには無為無策であった経済産業省の責任も問われるべきである。

また、日産もリーフを始めとしてEV化に熱心だが、これも現在の大きな低迷の原因であるといえる。

立派なビルやショールームは自己満足！？

ホンダと日産の共通項はたくさんあるだろうが、その中の一つが、昨年9月27日 Car　Watch「ホンダ、青山本社ビル建て替えを決定 2030年度の完成を目標に新ビル建設は？」で触れられている「ホンダ青山ビル」と、銀座5丁目の日産ギャラリー（日産クロッシング）である。

もちろん、一般消費者向けの商売を行っている企業が「ブランドイメージ」を高める戦略を推進するのは重要である。否定はしないし、むしろどんどん行うべきだと思う。

だが、両社の青山と銀座の「設備」が、「本当の意味での『ブランド』」の確立や、「業績向上」に役立っているとは思えない。

よく「立派なビルを建てた会社の経営は傾く」と言われる。立派なビルに社員が浮かれて、堅実なビジネスがないがしろにされるだけではなく、「稼がない立派なビル」の資金（財政）負担が小さくないからである。

例えば、2019年12月15日公開「“サザエさんを失った”東芝はどこまで大迷走するのか」、2021年6月30日公開「東芝だけか？　バフェットが見抜いていた、先が見えない企業に共通する『兆候』」で取り上げた東芝は、いまだに「迷走中」といえる。そして、銀座経済新聞 2007年9月20日「東芝、数寄屋橋交差点の『銀座東芝ビル』を1,610億円で売却」は、現在では東急プラザ銀座に変身している。

「勝ち組」はどうしている？

一時期はビッグスリーのトップとして世界に君臨しながら、現在では「腐ったタイ」とも言えるGMのNYのビルはBloomberg 2008年5月29日「米ボストン・プロパティーズ：GMビル購入額は約2900億円－届出書」で述べられているように、セントラルパークの南東角に位置し、50階建ての白い大理石 の立派なものである。

また、デトロイトのシンボルである「GM　ルネサンス・センター」もGMの「偉大さ」を強調する特徴的建物であり、多くの読者がその写真を目にしたことがあるだろう。

それに対して、今やそのGMを抜き「世界一の自動車メーカー」となった、トヨタ自動車は「東京本社」があるものの、「本社」は愛知県豊田市トヨタ町1番地に所在し、「世界一」を主張する類のものでもない。

だが、トヨタが販売するレクサスは高級車として他社を寄せ付けない高いブランド力を保持しており、レクサスの販売店は充分な高級感を漂わせている。

また、AMW 2019年5月18日「国産メーカー12社のうち6社がトヨタと提携！生き残りを賭ける日本の自動車産業」である。その中で、スズキの本社は静岡県浜松市中央区高塚町にあり、同じく浜松にルーツを持つホンダとは異なった戦略を採用している。また、マツダも東京に本社を持つが、（広島）本社は広島県安芸郡府中町に所在する。

さらに、スバルの本社は東京・恵比寿に存在するが、中島飛行機の時代から群馬県太田市に拠点を構えそのイメージが強い。

要するに、自動車業界の勝ち組は、「都心の一等地の立派なビル」にはこだわっていないといえよう。大事なのは「自動車を製造する現場」と「自動車を売る販売店」なのである。

また、自動車を始めとするメーカーが「地方に拠点を構える」ことは、「地方創生」の助っ人にもなる。「返礼品バラマキ」以上の意義が感じられないふるさと納税に比べて、数千倍の価値があると思う。

パナソニックのツインビル

2019年8月6日公開「従業員の不信を引きずったパナソニックに復活はあるのか？」で述べたパナソニックも1986年、大阪ビジネスパーク（OBP）に地上38階、地下1階の双子ビル「ツイン21」を完成させ、松下電器と松下興産の共催で、竣工披露式が行われた。

「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助死去は1989年であるから、その直前に完成したツインタワーが「松下幸之助後」を象徴すると言えるかもしれない。

パナソニックについては2022年9月21日公開「中韓に『劣勢』な家電メーカーの中で、パナソニックの『大躍進』が始まった…！」との期待があるのだが、今のところその期待には応えてくれていないようだ。

大型M&Aの度重なる稚拙な失敗はともかく、全体的な戦略に大きな間違いは無いと思われるのに、その結果が目に見えてこないのは、「中村改革」と称される「松下幸之助遺産」の徹底的破壊の爪跡があまりにも大きいからなのだろうか？

一度失われた「経営陣と従業員の信頼関係」を取り戻すのが、とても難しいということのように思える。

武田信玄の「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり」という言葉は極めて有名だが、日産やホンダを見ていると「人材こそが企業の財産」ということをすっかり忘れているように思える。だから没落するのではないだろうか。

同じことが、リストラを繰り返しながら「立派な本社」を維持している多くの企業にも言える。

我々は「勝ち組」にもっと多くを学ぶべきだと思う。