OECD閣僚理事会、戦略物資の強固な供給網構築で一致…「多くの国々が経済的威圧へ懸念表明」
経済安全保障の強化に向けた日米欧の主な協力
【パリ=都築建】3日閉幕した経済協力開発機構(OECD)の閣僚理事会では、経済安全保障の強化に向け、強固で信頼性のある供給網構築に取り組むことで一致した。日本は2日にも欧州連合(EU)と戦略物資に関する政策協調を始めることで合意し、4月には米国とも連携を強化した。貿易を制限して圧力をかける「経済的威圧」に対する懸念が強まる中、同志国間で透明性の高いルール作りを急ぐ。
「欧米をはじめ、同志国との産業政策の協調やルール作りを継続・発展させる重要性を痛感した」。斎藤経済産業相は2日夜、日EUのハイレベル経済対話と、OECDの経済安全保障に関する会議後の記者会見で述べた。
OECDの会議では、供給網強化に向け、信頼性や透明性を原則とし、途上国を含めた各国と連携する重要性を確認した。閣僚理事会で経済安保を一つのセッションにして集中的に議論するのは初めてだったが、「多くの国々が経済的威圧への懸念を表明した」(斎藤氏)といい、閣僚声明でも、全ての国に対して威圧の使用を控えるよう求めた。
日EUのハイレベル経済対話でも蓄電池など戦略物資の調達で、特定国に依存しない共通の原則づくりで合意した。EUの執行機関、欧州委員会のドムブロフスキス上級副委員長は「日EUだけでなく、同志国と連携して取り組むべき課題」と強調した。
戦略物資の供給網強化を巡っては、日米も4月の首脳会談で協調に向けて合意したばかりだ。米国とEUも産業政策で協調するための議論を進めるなど、日米欧は中国を念頭に特定国に依存しない供給網の構築に動き出している。
日本にとっては、大統領選を控える米国と、6月に欧州議会選があるEUと相次いで政策協調で合意することで、同志国連携の方向性を「ピン留め」(政府関係者)し、政治体制が変わっても供給網の分断を防ぐ狙いがある。