<浪速風>補選で「否」を突き付けられた岸田文雄首相はいつ有権者に「否然」を問うか
記者団の質問に答える岸田文雄首相=4月30日午前、首相官邸
日本神話の舞台として知られる島根県出雲市の稲佐(いなさ)の浜は、天照大御神(あまてらすおおみかみ)から遣わされた武神、建御雷神(たけみかづちのかみ)が地上世界を統治した大国主命(おおくにぬしのみこと)に国譲りへの「YES」(然=しか=り)か「NO」(否=いな)を迫った場として「否然(いなせ)」が転じた地名とされる。
▶先月28日の衆院3補欠選挙は、稲佐の浜にほど近い島根1区で、立憲民主党元職が自民党新人を破った。自民党は不戦敗の東京15区と長崎3区を含め3戦全敗となった。補選を巡り国会で「私への判断も含まれる」と答弁していた岸田文雄首相の政権運営が有権者から「否」を突き付けられた。
▶この結果は衆院解散戦略に影響し、首相は衆院解散を「全く考えていない」と強調した。ただ、派閥パーティー収入不記載事件で岸田派の解散を表明したときもそうだが、首相は追い込まれてから捨て身技に出ることもある。国民に「否然」を問うのはいつだろう。