高校駅伝の新ルール「留学生は最短の3キロ区間限定」に困惑の声…高体連「不公平感を解消」
昨年12月の全国高校駅伝男子で最長区間の1区を走る選手たち
全国高校駅伝を主催する全国高等学校体育連盟(高体連)が、留学生を起用できる区間を限定する新ルールを導入したことを受け、学校側が対応を模索している。身体能力の高い留学生が勝負を決定づける傾向が続いていることが背景にある。高校スポーツで国籍を基準に起用方法を制限するケースは異例で、慎重な議論が必要との声も上がっている。(後藤静華)
高体連陸上競技専門部は昨年12月、同駅伝での留学生の起用を3キロの最短区間(男子2、5区、女子3、4区)に限る新ルールを発表した。専門部はその理由を「日本人選手のスピード向上が期待できる」と説明する。
高体連が2018年以降、全国の陸上関係者に2度実施したアンケートでは「留学生で勝負が決まってしまい不公平感がある」などの意見が少なくなかったという。「こうした声も決め手の一つ」と専門部は言う。
■◆「強化見直し必要」
昨年の同駅伝女子で、ケニア人留学生の主将の活躍もあって優勝した鹿児島・神村学園高は今春、新たに留学生の新入部員を迎えた。地方ほど深刻な少子化による部員不足が、留学生を受け入れてきた理由の一つという。有川哲蔵監督(57)は「強化プランの見直しが必要。留学生には(最短区間起用を見据え)中距離走をメインに取り組んでもらうかもしれない」と語る。
留学生を擁する強豪として知られる仙台育英高(宮城)の千葉裕司監督(36)は「ルールには柔軟に対応するが、規制は社会やスポーツ界の国際化の流れにそぐわない」と話す。陸上が盛んなケニア出身の男女が在籍する一方、台湾出身で一般入部した男子留学生の2年生もおり、「アジアから駅伝に憧れて来日した留学生も一律に規制されてしまう。純粋に競技に向き合う選手が報われる形が見つかるといい」と願う。
■◆ファンの間で賛否
高体連は、同駅伝に出場する留学生を巡って苦心の対応を続けてきた。1990年代前半からケニアやエチオピア出身の留学生の活躍が目立つようになったためだ。2008年に「起用は1人」「最長の1区(男子10キロ、女子6キロ)以外」とのルールを策定。だが効果は薄く、08~23年の16大会のうち男子11、女子7大会で留学生を擁するチームが優勝し、ファンの間でも賛否があった。
ケニア出身で山梨学院大時代に箱根駅伝で活躍し、日本国籍を取得して桜美林大監督を務める真也加ステファンさん(51)は「マラソンなど長距離種目での活躍を目標に来日する留学生が多く、今後は数が減るかもしれない。留学生は言葉や文化の壁に直面しながら練習に取り組んでおり、全ての選手にとってフェアな仕組みを検討してほしい」と訴える。
◆全国高校駅伝=全国高校総体の駅伝部門として毎年12月に京都市内で開催。全国の代表校が男子7区間42.195キロ、女子5区間21.0975キロのコースでタスキをつなぎ、日本一を争う。
■起用制限は駅伝のみ
高体連によると、全国高校総体では活躍の機会を平等に近づけることなどを目的に、全競技を通じて留学生の出場人数を「エントリー数のおおむね20%以内」とする原則を設けている。
しかし、起用方法まで規制するルールがあるのは駅伝だけだ。選手1人の走りが勝敗を大きく左右する競技特性が背景にあるとみられる。高体連によると、他競技ではこうした規制などは議論されていない。高体連に加盟していない日本高校野球連盟は留学生のルール自体を設けておらず、サッカーでは国際サッカー連盟(FIFA)が18歳未満の国際移籍を原則禁止しており、日本の高校でも家族の移住を伴うなどの例外を除き、留学生の登録はできない。
近年はバスケットボールなど様々なチームスポーツで活躍する留学生が増えている。その一方で、「留学生による過度な強化は勝利至上主義につながる」との声も根強い。