韓国が「反日ブーメラン」で、日韓関係が「崩壊」する”最悪シナリオ”の中身
多すぎる文在寅政権の「負の遺産」
4月10日に行われた韓国の総選挙では、全300議席中、与党はたったの108議席だった。175議席の過半数をしめた野党に対して、なにも言い訳のできない惨敗という結果だった。
総合ニュースによれば、4月16日尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は与党『国民の力』が惨敗したことについて、「国民の意思をしっかり察し、受け入れることができず申し訳ない」と述べたという。
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さらに、テレビ中継された閣議の発言を見ていると、「就任後の2年間、国民だけを見て国益のための道を歩んできたが、国民の期待に及ばなかった」としたうえ、「最善を尽くしたにもかかわらず、国民が体感できるほどの変化をつくるまでには及ばなかった」との認識を示していた。
これまでの尹大統領は検察時代の自分の「正義」ばかり追い続けていた結果だろう。私も尹政権をこの2年見てきながらいつも思うことは、文在寅政権の「負の遺産が多すぎる」ということだろう。
尹大統領就任後に打ち出した第一段階の「日韓関係正常化」は国民の支持を得たものの、次の一手で大学医学部の入学定員を拡大すると発表したことから多くの不満が尹政権に降りかかったように思える。
実は国民の不満の糸をたどると、必ず文在寅政権下での政策にぶち当たるのだが、いまでは尹政権の不手際の一つとしてみなされているのだ。
目先にぶらさがった人参…
韓国与党の敗北は、大統領の発言にもあったように「国民の意思」の読み間違えが原因だろう。
大勝利を収めた韓国野党の李在明代表は真っ先に選挙で約束した民生回復支援金を含む、民生回復緊急措置に手掛ける発表を行なっている。「民生回復支援金を含む民生回復緊急措置」とは、国民一人当たり1人当たり25万ウォン(約2万8000円)の支援金をはじめ、小規模事業者向けの融資および金利負担緩和のための低金利融資の拡大、小規模事業者および伝統市場への支援金、小規模事業者向けエネルギー支援金などだ。
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だが、選挙が終わったところで面白い記事を見つけた。中央日報によれば、韓国の財政が不足していることから、1-3月期だけで約32兆5000億ウォン(約3兆6000億円)を政府が持っている韓国銀行の「マイナス通帳」から借りたことがわかったというのだ。
日本では「マイナス通帳」というと耳慣れないが、銀行審査で限度額内の出し入れが自由に認められているキャッシング・ローンの様なものだ。選挙で「民生回復支援金を含む民生回復緊急措置」というニンジンに対して国民は支持したわけだが、本当は国にとって誰が誠実で誰が悪なのか……。やはり韓国では目先にぶら下がったニンジンには勝てない様だ。
悪夢のような、最悪のシナリオ
選挙の大敗で今後、大統領は苦しい立場にさらされるが、どこまで意地を張れるかによって今後の日韓関係も大きく左右されると思われる。これまでの2年は政治とは離れた「正義感」が優先されて、日米韓の関係が安定し出していた。
しかし、それも元の木阿弥になるかもしれない。
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記憶に新しいのが、文在寅政権下での元徴用工裁判とホワイト国解除によるGSOMIA破棄だったが、いずれも韓国にとって一つも国益には繋がらなかった。尹政権は長年巣食う左派従北思想者たちを「反国家勢力」と定めて徹底的な一掃を始めたが、言ってしまえば2年での成果はこれしかない。
尹政権、与党は国内では何も決められない「ねじれ」を生んでしまった。そうなると尹政権は国内での政策は通せず、外交で国民にアピールするしかなくなる。国内では当然、野党が頃合いをみながら元徴用工、第三者弁済の財団潰しを叫ぶだろう。
また財団潰しの訴えと日韓の歴史観を織り交ぜながら、それに少しでも国民が同調すれば、「反日」へと簡単に誘導していくだろう。今後、野党のこういった流れの中で、尹政権が最後まで日米韓の関係維持をまっとうできるかが気になるところだ。支持率がさらに下がっていく中で、よもや大統領が反日ブーメランに舵を切れば、良好になってきた日韓関係は再び崩壊し、もう元には戻れなくなるだろう。
そんな悪夢のような、最悪なシナリオも現実味を帯びてきたわけだ。
いったい、なぜ…?
私はいま日本で療養しているが、先日、東京の自動車イベントの取材で訪日した韓国人記者と会った。彼は期日前投票を行い、訪日し、選挙結果を日本で知ったが、韓国人の彼も「韓国人がこんなに未来を見れず目先の金に票を入れるとは…」と絶句していた。
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そして「韓国人は何事を判断する時にも軸、土台となる経験値が欠けている」と嘆いていた。ただ彼も「韓国人の中にも日本をリスペクトしている者も多いことは理解してほしい。私たちも国に帰り、また訴えて行くが、日本は韓国を今後も甘やかさず突き放すくらいでお願いしたい」と私に話して帰国して行った。
普通であれば「もう少し韓国を見守ってみよう」と言いたいところだが、疑惑まみれの候補者たち(政党)の政治家を認めた韓国の常識、マインドに対して、私も何も語れなくなった。ただただ呆れるばかりで、私にとっても一つの踏ん切りがつく選挙となったのだ。
さらに連載記事『韓国で「反日大復活」という“悪夢のシナリオ”が、まさかの「現実味」を帯びてきた“ヤバすぎる理由”』では、いま韓国で起きている“もう一つの異変”についてレポートしよう。