陸自3人死傷、起訴された19歳元自衛官候補生は子どもの頃から「入隊したい」と憧れも
訓練再開のめどが立っていない日野基本射撃場(28日、岐阜市で)
昨年6月に岐阜市の陸上自衛隊「日野基本射撃場」で自衛官3人が銃撃されて死傷した事件で、岐阜地検は28日、元自衛官候補生の男(19)(懲戒免職)を強盗殺人罪、同未遂罪で岐阜地裁に起訴した。事件発生から8か月余り。真相解明の舞台は法廷に移ることになる。
起訴状などによると、男は昨年6月14日、同射撃場の訓練に参加中、人を銃撃する目的で弾薬を奪おうと考え、小銃を発射。八代航佑2曹(当時25歳)(特別昇任)と菊松安親陸曹長(同52歳)(同)を殺害し、男性3曹(26)に重傷を負わせた。上官らに取り押さえられ、弾薬は奪えなかった。
制止しようとした八代2曹は腹に1発、弾薬の整理などを担う係だった菊松陸曹長は頭などに2発、3曹も左脚に1発撃たれた。
◇ 男は2022年4月施行の改正少年法で定める「特定少年」に当たり、起訴後の実名報道が可能とされている。地検は起訴とともに実名を公表した。
岐阜地検の清水博之次席検事は「特定少年の健全育成や更生を考慮する一方で、事件の重大性が地域社会に与えた深刻な影響などの諸事情を考慮した」と公表に至った理由を話した。
男は今後、裁判員裁判で審理が行われる。初公判の時期は未定で、捜査関係者は「公判前整理手続きなどに時間がかかる。初公判は1年以上先だろう」と長期化するとの見通しを語った。
◇ 男は逮捕直後の県警の調べに「銃と弾薬がほしかった」と話す一方、送検直前から黙秘に転じた。ある捜査関係者は「本人の口から語った言葉で、動機が解明につながるといい」と期待を込めた。
男の父親は加害者家族の支援団体を通じ、「被害者とそのご家族には本当に申し訳ない気持ちで毎日おります。夢と希望を持って入隊した自衛隊で、なぜ息子が事件を起こしてしまったのか、ただ、その真相が知りたいという思いです」とのコメントを出した。
現場の射撃場は、今も訓練再開のめどが立っていない。近くに住む男性(54)は「身近なところで起きてショックだった。どういう心理でそういうことをしたのか明らかにしてほしい」と望んだ。
男が勤務していた陸自守山駐屯地は「既に懲戒免職になっているのでコメントする立場にない」とした。
■自衛隊に子供の頃から憧れ
男は昨年4月に入隊し、第35普通科連隊(名古屋市守山区)で自衛官になるための教育・訓練を受けていた。周囲には小学生の頃から「入隊したい」と憧れを口にしていた。
同級生らによると、男は県内出身。小中学校時代は目立たない存在だったが、高校では放送部で部長を務め、「真面目なムードメーカー」だったという。
小中高と同級生だった男性(18)は「明るくなって、違う人みたいな感じがした」と振り返る。高校3年の夏には、一緒に県内の自衛隊駐屯地を見学に行ったこともあった。「戦車や銃、隊員の制服に興味を持っていたようだった」と話す。起訴を受け、「事件を起こしてしまったことについて、反省してほしい」と求めた。