自民、政倫審「70人審査要求」に苦慮 拒めば国会運営に暗雲 屈すれば執行部へ不満
会談に臨む自民党の浜田靖一国対委員長(中央左)と立憲民主党の安住淳国対委員長(同右)ら=8日午前、国会内(春名中撮影)
自民党が、派閥の政治資金パーティー収入不記載事件を受けた衆参両院の政治倫理審査会を巡り、野党の攻勢に直面している。計70人以上の所属議員が審査を要求されており、出席の強制力はないが、拒めば後半国会の運営に悪影響を及ぼす可能性が高い。一方、圧力に屈すれば党内の不満が執行部に向かいかねず、難しいかじ取りを強いられそうだ。
立憲民主党と日本維新の会、共産党は8日、衆院政倫審に出席していない自民議員44人の審査を求める申立書を田中和徳政倫審会長に提出した。野党筆頭幹事を務める立民の寺田学氏は提出後、記者団に「反省しているかどうかは、今回の申し立てへの態度に表れる」と主張した。
審査は政治的、道義的責任を問われた議員本人の申し出か、委員の議決で行われる。議決の場合、委員3分の1による政倫審会長への申し立て後に委員2分の1の賛成で審査に移る。
衆院ではこれまで野党の委員数が足りずに申し立てができなかったが、立民が4月の3補欠選挙を制したことで可能となった。火消しを急ぐ自民は申し立てに賛成する方針で、政倫審は開催される見通しだ。
ただ、平成21年7月の衆院政倫審では、偽装献金問題を受けて審査が議決された鳩山由紀夫民主党代表(当時)が出席を拒否した。政倫審関係者は「先例もあり、自民議員が出席を拒否する可能性もある。対象者を有力議員に絞るなど本人の申し出を促した方がよい」と語る。
一方、野党が一定の勢力を擁する参院側ではすでに32人の申し立てを全会一致で議決した。
これまでの出席者は世耕弘成前参院幹事長ら3人のみで、野党は残る対象者の出席も求めている。自民は週内にも対象者の意向確認を終え、来週以降に野党に伝える方針だ。
会期末まで50日を切る中、後半国会は政治資金規正法改正などが焦点となる。参院自民の国対幹部は「日程はどんどんきつくなる」と指摘し、国会運営の円滑化を念頭に全員出席を求める構えだ。
一方、党内では執行部への不満が高まっている。
自民重鎮は「政倫審は弁明ではなく追及の場になっている。新事実は出てこない」と強調。その上で「自民国対は野党と連携しているように見える。野党を止める役割なのに前のめりになっている」と恨み節を口にした。(永井大輔、今仲信博)