米議員の広島・長崎原爆引用、上川外相「受け入れられぬ」松原仁氏「怒りを込めて抗議を」
上川陽子外相=10日午前(春名中撮影)
上川陽子外相は10日の衆院外務委員会で、米共和党議員が米国が原爆を投下した広島と長崎を引き合いに出してバイデン政権の対イスラエル政策を批判したことについて、「受け入れることはできない」と述べ、共和党議員の事務所と米政府に申し入れを行ったことを明らかにした。内容や相手側の回答については明かさなかった。無所属の松原仁元拉致問題担当相に答えた。
松原仁元拉致問題担当相(松井英幸撮影)
相次ぐ原爆投下引用
米共和党のグラム上院議員は8日、米上院歳出委員会の国防小委員会で、原爆投下が戦争終結につながったとの考えを示し、「イスラエルは負けるわけにはいかない。これは広島と長崎の究極版だ」と述べ、イスラエルに対して必要な武器を届けるべきだと主張した。オースティン米国防長官、制服組トップのブラウン統合参謀本部議長に対し、それぞれ見解を尋ねた。
3月にも米下院のウォルバーグ議員(共和党)が演説で、イスラエルのパレスチナ侵攻を巡って「長崎や広島のようであるべきだ。早く終わらせられる」と原爆投下を促すかのような主張を展開していた。
上川氏は、共和党議員の一連の主張について、「中東情勢の文脈で広島、長崎の原爆投下を引用した議論を提起したことは受け入れられない。核兵器が将来二度と使用されることがないよう、米国とも協力しながら取り組みを積み重ねている」と語った。
軽々に触れられる話ではない
松原氏はグラム氏の発言について「上院公聴会で出て議事録に残ったことが大問題だ」と述べ、「米国は日本にとって最大の同盟国だが、日本人にとってどうしても超えられない一線は断固として主張すべきだ。原爆を日本に落としたことに対して軽々に触れてほしくない。イスラエルの中近東戦争の文脈で軽々に持ち出されては承服できない」と訴えた。
上川氏に対しては「『受け入れることはできない』だけではなく、怒りを持たないといけない。日本民族の怒りを込めて抗議すべきだ。上院の議事録の削除を求めないといけないくらい、われわれの琴線に関わる議論だ。そのような発言を平然と(米上院で)させたのは日本政府の努力不足だ」と指摘した。
上川氏によれば、岸田文雄首相が4月8~14日に訪米した際、ウォルバーグ氏が3月の発言について釈明していたことを踏まえ、首相は個別に取り上げて米側に抗議するなどはしなかったという。(奥原慎平)