母乳の抗体が子供の脳の発達に影響 群馬大など細胞レベルで解明 神経細胞の密度に違い
母親の抗体と関連するミクログリアなど脳内細胞のイラスト(群馬大提供)
母乳などを通じて渡される母親の抗体が子供の脳の発達に影響を与えることを群馬大大学院医学系研究科の定方哲史准教授らがマウスを使って解明し、富山大との共同調査でも抗体の有無でマウスの行動に違いが生じることを明らかにした。母親の抗体が子供の免疫力を高めることは分かっているが、脳への影響を細胞レベルで解明したのは初めて。研究結果は2日、脳と免疫を扱う国際科学誌にオンライン掲載された。
それによると、母親の抗体が幼児期のマウスの脳内で異物除去や栄養因子分泌に関わる免疫担当のミクログリア細胞と結合し、Ⅰ型インターフェロンという特定タンパク質を分泌することが分かった。抗体を渡されないマウスと比較したところ、脳の特定ニューロン(神経細胞)などの密度に違いが見られた。
マウス同士の社会性行動調査でも抗体を受けたマウスは行動量が4割多く、逆に接触時間は抗体を受けていないマウスの3分の2ほどだった。抗体は多すぎると暴走する場合もあり、定方准教授は「今回の結果をヒトに置き換えた場合、母親の抗体が子供の脳の発達に良い影響を及ぼすのか、悪い影響となるのかの解釈はまだ難しく、簡単に結論できない」と慎重だ。
ただ脳内因子を初めて判明したことで、今後は多くの母子を対象に母乳の抗体濃度と子供の脳の発達との関係を明らかにしていく。良い影響の場合、適切な濃度の抗体サプリメント入り人工ミルクの開発・製造にもつながるとしている。