桂由美さん「たくさんの人が幸せになってほしい」…「軍国少女」の戦争体験、ブライダルの世界へ
「ユミカツラ東京コレクション」のショーの最後に姿を見せた桂由美さん(中央)(今年3月5日、東京都内で)=和田康司撮影
和装が主流だった婚礼衣装にウェディングドレスを浸透させたブライダルファッションデザイナー、桂由美(かつら・ゆみ、本名・結城由美=ゆうき・ゆみ)さんが4月26日に死去した。94歳だった。本人の意向で葬儀は行わず、後日追悼ショーを開催する予定。
◇ 「たくさんの人が幸せになってほしい」。桂さんがこう語ったのは4月5日。本紙「時代の証言者」を電子書籍化するにあたり、加筆するための近況の取材だった。明るいブルーのスーツにトレードマークのターバン姿。前日に福岡から戻ったばかりで、相変わらずの仕事ぶりだった。
ブライダルの世界を目指した裏には戦争体験がある。「なぜ女性には特攻隊がないのか」と、指先をナイフで傷つけ、その血で海軍大臣に手紙を書いたほどの「軍国少女」が、終戦で変わり果てた人と街に絶望し、美しいものへの渇望感、人を喜ばせたいという強い思いに突き動かされた。「自由や幸せが享受できるのは、日本が平和になったからこそ」と語っている。
来年、創作活動60周年を迎える予定だった。「いくつになっても、夢や希望を持ち続けたい」と語った桂さんの黒い手帳には、今年もたくさんの予定が書き込まれていた。(編集委員室 宮智泉)