戸籍上の性別変更、手術要件撤廃なら必要な法改正は900本 自民女性守る議連が危機感
自民党の女性を守る議連の共同代表を務める片山さつき元地方創生担当相
自民党の有志議員でつくる「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」(略称・女性を守る議連)は27日、党本部で総会を開き、性同一性障害特例法が戸籍上の性別を変更する上で規定する「手術要件」が撤廃された場合に備えて議論した。参院法制局はその際、法改正の検討が必要となる法律は900本近くにのぼることを説明した。
議連は3月にも論点整理をまとめ、党の「性的マイノリティに関する特命委員会」(高階恵美子委員長)に提出する。
平成15年に成立した性同一性障害特例法は、性別を変更するために複数の医師から性同一性障害の診断を受けた上で①18歳以上②結婚していない③未成年の子がいない④生殖腺がないか生殖機能を永続的に欠く状態⑤変更後の性別の性器に似た外観を備えている─の要件を定める。④と⑤が「手術要件」といわれる。昨年10月に最高裁は④の規定を違憲と判断し、⑤の憲法適合性の審理は2審に差し戻した。政府・与党は特例法の改正が求められている。
参院法制局が議連に示した900本の代表例には、被収容者を性別で分離するとした刑事収容施設法や入管難民法などが挙げられた。手術要件が撤廃された場合、法律以外にも共同浴場の利用は原則男女別に分けるとした厚生労働省の「旅館業における衛生等管理要領」などの改正検討も必要となる。
会合では、性別違和を訴える患者の診断を行っている日本性科学会の針間克己理事長が、性同一性障害の診断がより難しくなるとの見方を示した上で、「性同一性障害で(性別を)転換できる人の定義が再度必要になる」と訴えた。
会合後、議連の共同代表を務める片山さつき元地方創生担当相は記者団に「きょうの議論を受けて役所もびっくりしていた。(特例法成立に向けて議論された約)20年前の役人は手術要件があるから、こんな(=手術要件が撤廃される)ことはないだろうと誰1人詰めて考えていなかったのではないか。(立法府として)責任をわれわれはとらないといけない」と危機感を募らせた。(奥原慎平)