山中慎介さん、井上尚弥とネリを語る…「敵討ち望む感情ない」「本能のまま嵐の連打」
公開練習で、井上尚について「過大評価されている」と語ったネリ=後藤嘉信撮影
■[ドーム決戦 井上尚弥]<中>
ボクシングの世界4団体スーパーバンタム級統一王者の井上尚弥(31)(大橋)が6日、東京ドームで世界ボクシング評議会(WBC)同級1位で元世界2階級王者のルイス・ネリ(29)(メキシコ)を相手に防衛戦を行う。東京ドームでボクシングの興行が行われるのは1990年2月のマイク・タイソン(米)の世界ヘビー級戦以来、34年ぶり。「ドーム決戦」を前に、井上尚の意気込みやネリの分析、関係者の思いを紹介する。
ネリと2度対戦しているのが、WBCバンタム級元王者で、「神の左」と呼ばれた強烈な左ストレートでファンを沸かせた山中慎介(41)だ。
ネリは2017年8月、山中の13度目の防衛戦の1位挑戦者として戦い、4回TKO勝ちした。しかし、禁止薬物の陽性反応が出ていたことが発覚。WBCは再戦を指示し、18年3月に再び、対戦。今度は前日計量で大幅な体重超過をし、王座を剥奪(はくだつ)された。試合はネリが2回TKO勝ちしたが、日本ボクシングコミッション(JBC)は事態を重く見て日本国内での活動停止処分とした。
ネリ戦を最後に現役を引退した山中は、「パンチ力については想定内。一発で倒すというタイプではなかった。ただ連打の回転に速さがあり、フェイントをかけるでもなく、本能のままに左右のパンチを振り回す感じだった」と振り返る。好機とみるや、サウスポースタイルから嵐のような連打で襲いかかり、仕留める。その様子は、まさに異名通り「パンテラ(スペイン語で『ヒョウ』)」だ。
それでも第1戦では山中の右のジャブや左がヒットする場面も目立った。防御については「攻撃は最大の防御のようなスタイル。かといってアゴを引いて攻めるタイプでもない」と、スキがあるとみている。
ネリは山中との対戦後も強さを維持している。20年にWBCスーパーバンタム級王座を獲得し、2階級制覇。21年に初黒星を喫したが、昨年2月にはWBC挑戦者決定戦で強打のアザト・ホバニシャン(アルメニア)を破り、井上尚の対戦候補として浮上。JBCも今年2月、ネリの資格回復を認めた。
井上尚と激突したら、どうなるのか。山中は「井上尚であれば、ネリが打ち出すタイミングや打ち終わりに的確にパンチを当てる力を持っている。ネリも連打の回転に速さはあるが、一瞬のスピードは井上尚がはるかに上。その一発一発も本当に強烈なので、(勝利の)予想としては井上尚」と言い切る。
山中は、敵討ちを望むような感情はないという。それよりも、「東京ドームのメインにふさわしい内容になってほしい」と語る。2人が最高のコンディションでリングに上がり、力の限りを尽くす。そんなシーンを待っている。(敬称略)