多くの活動担われる秋篠宮ご一家 問われるご公務のあり方と発信力 令和皇室の現在地㊦
能登半島地震のボランティアとして活動した金沢大の学生らと懇談される秋篠宮妃紀子さま=4月26日午前、金沢市
「これからもよろしくお願いします」
4月26日、金沢大(金沢市)のキャンパス内にあるカフェ。秋篠宮妃紀子さまは、能登半島地震の被災地から避難した中高生の学習支援を行った学生ボランティア4人と懇談し、ねぎらわれた。
紀子さまが総裁を務める「母子愛育会」や「結核予防会」の関係者から被災地支援の状況を聞いたことをきっかけに、実現した石川県ご訪問。一日で同大や病院、避難所など4カ所を「分刻みのスケジュール」(訪問先の関係者)で巡り、お住まいに戻られたのは夜遅くになってからだった。
同地震を巡っては、秋篠宮さまも「恩賜(おんし)財団済生会」総裁などとして同県に赴かれた。それぞれが担われる分野の知見を生かし、時に別々に-。国内外問わず、ご夫妻のご活動のスタイルだ。
「夫婦で一緒に行っているものを夫と妻と別々に違うものに出れば、結局一つしかできないところ二つになる」。秋篠宮さまは令和3年の記者会見でも、皇族数が減少する中での活動についてこう提示されていた。
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皇室で代々受け継がれてきたさまざまなご活動が今、秋篠宮ご一家に集中している。
秋篠宮さまは代替わりで皇位継承順位1位の皇嗣(こうし)となり、皇太子同妃時代の天皇、皇后両陛下が担われていた「七大行啓」と呼ばれる地方公務のうち、「全国障害者スポーツ大会」や「全国育樹祭」など4つをご夫妻で、「献血運動推進全国大会」を紀子さま単独で引き継がれた。現在、秋篠宮さまは常設のものだけで13団体、紀子さまも3団体の総裁・名誉総裁を務められている。
ご夫妻の長女、小室眞子さんも成年後、日本工芸会などの総裁を務め、体力的な負担の大きい遠隔地や海外訪問にも多く臨んできたが、令和3年に結婚し皇籍を離脱。妹の佳子さまが総裁職などを引き継がれた。
1カ月の間に秋篠宮さま、紀子さま、佳子さまが単独でそれぞれ地方訪問に臨まれることもあるなど、多忙な日々が続くご一家。宮内庁関係者は、「新たな行事へのご臨席の要請も多く来ている」と打ち明ける。
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高齢化する皇室で、ご公務の担い手は減少傾向にある。現在の皇室を構成する17方のうち女性は12方、65歳以上は7方。ご夫妻の長男、悠仁さまは9月に成年を迎えられるが、未婚女性は佳子さまや両陛下の長女、敬宮(としのみや)愛子さまを含め5方で、現行制度では結婚すれば皇室を離れられる。
天皇陛下は今年2月の誕生日の記者会見で、活動を担う皇族が減っていることについて、「皇室の将来とも関係する問題」とご言及。秋篠宮さまも昨年11月、公的な活動について「何らかの見直しを行うということは必要になってくるのではないか」と述べられている。
近現代史が専門の龍谷大の瀬畑源准教授は「皇族数が減る中で、公務の見直しは平成から続く課題だが進んでいない。皇室の方々を支える宮内庁が改革に取り組むべきだ」とした上で、「皇室の方々が現在取り組まれている活動も、国民に十分に知られていない」と指摘する。
上皇さまは平成28年8月に譲位の意向をにじませたビデオメッセージで、これからも皇室が国民とともにあることを念じ、「国民の理解」を切に願われた。宮内庁は、皇室へのバッシングを契機に、情報発信の強化に乗り出している。
瀬畑氏は「移ろいやすい世論にいかに向き合い、信頼される存在であり続けるかは、皇室が直面する大きな課題。情報源が多様化したこの時代に、積極的な発信なくして皇室への理解を広げることはできないだろう」と話している。
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この企画は緒方優子、吉沢智美が担当しました。