地震で倒れた御神木を返礼品に 能登町の酒垂神社がクラウドファンディングで支援呼びかけ
能登半島地震によって倒れた酒垂神社の御神木(同神社提供)
1日で発生から4カ月となった能登半島地震で、鳥居が損壊するなど甚大な被害を受けた石川県能登町の酒垂(さかたる)神社が、再建と復興に向けてクラウドファンディング(CF)での支援を呼びかけている。同神社はCFの返礼品として、地震による土砂崩れで倒れてしまった樹齢約200年の御神木を活用した絵馬やお守りなどを用意。寄せられた寄付金は倒れた木々の撤去や、鳥居の再建などに充てられる予定で、神社の関係者は「町を少しでも元気づけたい」としている。
鳥居や灯籠なども崩壊
酒垂神社は平安時代初期に創建。能登地方で北東方向からの風を指す「アイの風」の吹くままに、神様が酒だるに乗ってやって来たと言い伝えられており、神社の名前の由来にもなったという。また、同神社を拠点に7月上旬に開催される「あばれ祭」は、みこしを海や地面にたたきつけるなどして渡御する奇祭としても知られ、県の無形民俗文化財にも指定されている。
能登半島地震前の御旅所鳥居(左)。地震によって倒壊した(酒垂神社提供)
能登地方を代表する神社だったが、元日の能登半島地震によって周辺の風景は一変した。
あばれ祭でみこしの起点となっていた御旅所(おたびしょ)鳥居や、灯籠などの大半の石造物が崩壊。また、参道の斜面に立っていた樹齢約200年の御神木2本が、雪の重みと地震による土砂崩れによって倒れてしまったことも明らかになった。
加藤三千雄宮司の長女で、今回のCFの発起人でもある加藤藍子さんは、地震当時は帰省しており、家族とともに初詣客の対応をしていた。加藤さんは「地震直後に大津波警報が出て(神社に)避難するため、おばあちゃんをおんぶして120段の階段を上がるお孫さんの姿もあった」と当時を振り返る。
御神木を活用した返礼品「復興祈願絵馬」のイメージ(酒垂神社提供)
絵馬や飲料などに活用
加藤さんは、神社の再建と能登の復興のシンボルとして、倒れてしまった御神木を活用できないか考案。白山麓を拠点に活動していた地域共創プロジェクト「QINO」(キノ)の支援も受け、御神木を活用したCFを立ち上げた。返礼品には、酒だるを模した台形の「復興祈願絵馬」や、御神木の一部を蒸留した飲料「木のソーダ 御神木 杉」などを用意。被災しながらも事業を続けている地域への応援の気持ちを込めて、返礼品はすべて石川県内で製作するという。
CFに寄せられた寄付金は、二次災害の危険がある木々の撤去のほか、鳥居の修復、神社のゆがんだ基礎の修繕などの費用にも充てられる予定。4月23日からスタートしたCFは、5月1日午後4時時点で目標金額の100万円を上回る約170万円が既に寄せられている。CFの詳細は「CAMPFIRE プロジェクトページ」に記載されている。
CFは6月21日まで実施する予定。加藤さんは「神社や祭りは地元の方々にとって生活の一部となっている。心のよりどころとして神社の再建と、能登の文化を子供たちに繋ぐ後押しがしたい」としている。